久しぶりの休み。


昨日の夜、
来週の予定を確認するために手帳を見ていると
スケジュールの隅に
ある本のタイトルの殴り書きを見つけた。

その本は、
ずっと前に読みたいと思っていた本。

仕事が忙しくて、
読書の時間なんて作れなかったから
すっかり忘れていた。

しばらく前の書籍だから、
もう在庫は残っていないかもしれないけど、うちの近くの書店は
古い本もいっぱいあるから、
明日買いに行ってみようと思っていた。


せっかくの休みなのに、
なんだか天気もぱっとしない。

そして、朝のニュースでやっている占いが
まさかの最下位…。

しかも
「予想外なアクシデントに見舞われるかも!」だって。


よりによって、休みの日に
アクシデントに見舞われなくても…

なんて落ち込みながら、身支度をして書店へ向かった。


久しぶりに来た書店は、
相変わらずの品ぞろえで
うろうろするだけでも胸がワクワクした。

新作の棚を過ぎ、
欲しい本を探す。

えーっと…


あ、あった!

本を見つけた瞬間

「あ…」


身長が異様に高い男性が、
わたしの本に手を伸ばしていた。
思わず声が出てしまう。
だって、
見る限り一冊しかないんだもん。


男性を見ると、
深めにかぶった帽子の奥から
キョロキョロした瞳が見えた。


「その本…買われますか…?」


「あ…え…と…」


なに、この人。
ちょっと…変…?


「その本…」


男性があまりにも、挙動不審だったから
指をさしてしまった。


「あ…これ…。 …買います。」


買うんだ…。
買っちゃうんだ…。
最後の一冊…。


「そうですか…。」


もうその一言しか出なかった。


はぁ…。
あ…予想外なアクシデントって、これか…。


そう肩を落としながら、
書店から出た。