2013.12.6 Fri :片想い
Gravity of Love
放課後…
この星奏学院に通い二年目となり、今更ながらひとつ、気づいたことがある。
この学院は、あてどもなく誰かを探すにはとても広いらしい、ということに。
月森は小さく息を吐いて、足を止めた。
空が高いな…
森の広場の木々の間から、何気なく見上げた空は青く澄んでいて。
少しだけ心が晴れたように感じた。
きらきらと零れ落ちる木漏れ日に、手をかざせば指先から暖かさが通う。
その温もりを掬い上げるように胸元に引き寄せ、月森は拳を握った。
彼女に似た、光。
彼女に似た、温もり。
素直で素朴なのに、心を引きつけて止まない。
飾らない、ありのままの姿で輝く…それが彼女の強さ。
月森は胸に灯る想いを大事に、ケースからヴァイオリンを取りだし構えた。
探しても見つからないなら、君に届くよう奏でるだけだ。
どこかで彼女が聞いていてくれることを願って、月森は弦の上で弓を滑らせた。
ありったけの願いが、想いが、艶やかな音となって運ばれていく。
君に会いたい。
君の音に触れたい。
言葉のかわりに、歌う音色が正直すぎるほど饒舌に、月森の心を語る。
そんな自分の音に僅かばかり苦笑して、月森は弓を閃かせると──…
カサっと、背後でかすかな葉擦れの音。
振り向かなくてもわかった。
でも、振り向かずにはいられなかった。
求める心の引力。
探していた君が今、そこにいる。
もしも、奏でるこの音色が君をここへと導いたのなら、ほんの少しでも伝わるといい。
愛しい、という君だけに向かうこの想いが…
--------------------
*余談*
『月森くんの演奏、もし迷惑じゃなかったら、もう少し聞いていてもいいかな。
その…すごく好きって思ったから』
『え…』
『えっ!? あ、あの変な意味じゃなくてっ』
『変な、意味?』
『えっと、あの…うっ』
蓮くんの必殺じっと見て待つ攻撃炸裂。
連載再開前のリハビリ(>_<)