ジョンとお花摘

若いうちは「変わったね」と褒め
お年を召せば「変わらないわ」と笑い合える
久しぶりに会ったときは
「変わらない」と言われても
笑って過ごせばいいでしょう

狭い路地を風と共に自転車でくぐり抜ける午後六時
どこからともなく空きっ腹には悪い匂いが漂ってくる
帰る場所に向かって冷たい空気を裂きながら突っ走る
紺色の深い空に薄く矧いだ月がそっと佇んでいる
薄い灰色の雲が放浪を繰り返す最中に白い粉雪が舞い降りた
ペットのジョンが吠えるのが聞こえたからあと少し

早急な毒を要求する
抱きしめた秘密は私には大きすぎる
狙う黒い影が迫りくる
足の遅い私には速すぎる
だから背後のヤツを殺さなきゃ
嗚呼息の根を止めなくちゃ

始まりから勘繰るのが癖なんです
知らないときと安心したときが危険
普通の接し方なんての分からない
分からないのか忘れたのか

裏切りの痛みは私を大人にした
ずるいというなら彼女を引っ張り出してよ
強烈な色と臭いが染み付いたから
洗剤で擦っても落ちないんだから

べたつく手のひらと空
なめ取ればまた汚い
水は冷たいけど
湯なんてない場所だから
汚らわしい灰色