「表現の不自由」あいちトリエンナーレが「報道検閲」
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韓国の少女像展示などをきっかけに「表現の不自由展・その後」を中止した「あいちトリエンナーレ2019」の事務局が、記事や番組の事前チェックをメディア側に求めていたことが分かった。「表現の不自由」と銘打ちつつも、事務局自らが報道を「検閲」するかのような対応に、メディア側も困惑している。(在パリ編集委員=羽生 のり子)

「あいちトリエンナーレ」のウェブサイトで「プレス向け」ページには下記の記述がある。

「企画内容によってはご要望に沿えない場合もございますので、あらかじめご了承ください」
「誌面掲載、番組放送前に原稿を確認させていただいております。必ず校正段階での原稿・映像等を事前に広報専用メールへご提出ください」

こうしたメディア側への要請は、「検閲」と取られても仕方ない。芸術家は記者・ジャーナリストと同様、国を問わず「表現の自由」を特に重視している。それなのにジャーナリスト側の「表現の自由」を一方的に縛るのは矛盾している。

しかも芸術監督はジャーナリストの津田大介氏である。ジャーナリストを芸術監督に迎えながら、報道を検閲するのはどういう感覚なのか。津田氏はトリエンナーレ事務のプレス対応を知っているのだろうか。

また、外国のメディアには日本語訳をつけて事前に見せろと言うのだろうか。事前提出を日本語メディアに対してだけ要求するなら、これも日本語メディアを差別していることになり問題だ。

8月3日、「表現の不自由展・その後」の中止についての記者会見で津田氏は「表現の自由を後退させる事例をつくってしまった」と述べたが、報道を検閲しようとした時点で、あいちトリエンナーレの表現の自由はすでに後退していたのである。

8月5日、トリエンナーレのプレス担当に説明を求めて何度も電話したが、繋がらなかった。津田氏とトリエンナーレ実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事にプレスを検閲する理由を尋ねたい。

筆者は環境問題以外に美術の分野でも、在住するフランスで展覧会や美術イベントを取材している。イギリスやドイツの展覧会に行くこともある。

これらの国で、美術館や美術イベントのプレス担当が事前に記事や映像の内容に口を出すことは絶対にない。また出た記事が辛口の批評であっても、それに対して文句が来ることはない。

芸術新潮編集部によると、「こうした要望はよくある。クレジットなど事実関係で不備があるといけないので、それは見せるが、内容に注文をつけられても応じない。事実関係の理解でこちらが間違っていれば直す」という。
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