八高生の俺最後の日。
学校の奴らが、帰り際に「またな」と言ってくれるのが嬉しかった。
この日記書くのも久々だ。毎日楽しくて、人に会ったり話したりするのが本当に楽しくて、書いてる隙がなかった感じだ。
本当に毎日一杯だった。
明後日にはここを離れるなんてまだピンと来ない。
みんなと話し足りない。
ゆっくりできるのは明日が最後だから、なるべく沢山の人と会いたい。
帰りたくねー
なー
ー
ちゃんと早起きして、っていうかあまりよく寝られないまま、予定どおり町中を回った。
沢山人と会えた。
ありがとう、とか、好き、とか、沢山言ってもらった。
俺も沢山言った。思ってる分を全部言葉にはできなかったので、うまく伝わってるか?
でも言われた分は伝わったので、同じだと思いたい。
「いってらっしゃい」って言われたのが一番嬉しかった。
「帰ってこい」とか。
「いつでも一緒だ」とか。
「離れてても関係ない」とか。
やっぱり今日も、誰もバイバイとは言わなかった。
俺んちはここだなって何回も思った。
ちゃんと笑ってた俺を誰か褒めろ。
でも、どうしてだろう、思いつく限りの人に会ったはずなのに、何だか…
ジュネスのフードコートに来てしまった。
ずっと会えないわけじゃないし、帰ってこられないわけじゃないって、しっかり自分に言い聞かせたはずなのに、まだ菜々子と叔父さんの家に戻る気が起きない。荷造りもあともうひと息なのに。
未練かなー
もう少しだけここで色々考えて、落ち着いたら帰るか。
しかし良い天気だな。
桜散ってる。
みんな来たびっくりした。
*まよてれが全部の始まり?
*俺も陽介も里中に聞いた
*里中は風の噂で聞いた(すでに女子の間では広まっていた)
*テレビの中の霧は晴れないまま
*ペルソナを得た人に向こうに行ける力を与えた
*でも俺と足立さんと生田目さんは例外
*足立さん字うめえな!!
*足立さんと生田目さんも町に来てすぐ噂を聞いた
*誰に聞いたかは覚えてない
*俺も覚えてない
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2011-4-11 22:07
到着(曇りのち雨)
やっと着いた。
さすがに遠かった。長時間電車は疲れる。
明日から学校だし、今日はもう休むことにする。
以下覚え書き
*母さんは「熊のようだ」と言っていたけど、叔父さんはそんなでもなかった。
*菜々子は恥ずかしがってた。俺も恥ずかしかった。
*田舎の人はなつっこい。ガソスタの人とか…バイトはいいかも。
*ベッドないのか。
ここでの暮らしが、いい一年になりますように。
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あの日の日記。
まさかここに来て記録が役に立つとは…と思ったけど読み返しても役に立たねー!
俺ガッカリ転校生だな。
陽介曰く→まよてれ・テレビに入ること・殺人事件が起こること・それを追う俺らが現れたこと
がうまく繋がらない。間が欠けてる?
そう思う。
そうかこれが俺の未練だ。だからフードコートに足が向いてしまったんだな。多分みんなも。
*噂を流した人=すべての元締め=「役者(俺やみんな、足立生田目)」を動かした「指揮者」
もし俺たちを傍観したり、こうなるように仕向けた奴がいるなら、文句の1つくらい言ってやりたい気もする。
稲羽に来た日のことを思い出しながら、もう一度町を回ってみる。
最後までこれか、と思いつつ、ちょっと嬉しい。
何か懐かしい。
ちょっとだけな。
疲れたわー!
ジュネスから帰ってうちで打ち上げやった。みんな疲れててグダグダだったけど楽しかった。
最後は家族だけで過ごしたかったかな?とも思ったけど、菜々子も叔父さんも楽しそうだったので、こういう感じでよかった。
いつもみたいに、帰るみんなを見送った。普通に。
色々考えてみたけど、結局、『変わらない』ということなんだと思う。
楽な方がいいし、辛いことや悲しいことはない方がいいし、穏やかな日が続く方が嬉しい。
でも嘘は嫌だ。
大事な人たちに本当の気持ちを教えてもらえないことと、自分がそうできないこと以上に辛いことって、ないと思う。
この世に生まれた瞬間それがわかってるわけじゃないんだから、まだ知らない人たちがいても、もう少し気長に見ててほしい。
倒れそうになった時、みんなが俺を庇って消えてくのが、本当に怖かった。
今までで一番怖かったし辛かったし、何でだよって思った。一人じゃ戦えねえよ。
俺が特別な力っていうのを持っていたとしても、そんなの、みんながいてくれなきゃ何の意味もない。
初めて「このまま死ぬのかも」って感じたけど、みんなの声が聞こえたから、「大丈夫だ」と思った。
大丈夫だった。
大丈夫なんだよ。ちゃんとみんなわかってるから。わからない人がいても、そのうち絶対わかるから。
俺だって稲羽に来てわかった。
あっちの世界とこっちの世界を救うために戦ったとか、そんな大層なもんじゃなかったと思うから、起きたことや言われたことはいちいち書かない。
今までと変わらずに、俺はみんなのためなら何でもするし、みんなもそうだと信じて、頑張るし無茶しない。
明日ここ出てくのが寂しいと思ってたけど、全然だ。この先も、一生みんなと付き合うんだから、寂しがってる時間があったら出来ること増やさないと、全然追いつかない。
この布団に転がってポチポチ携帯弄るのも今日で終わりか、と思うとそれでもやっぱり感慨深い。
俺の奥さん怖かった。
そろそろ下に行って、メシ食って支度。菜々子も叔父さんももう起きてる音がする。
ちょっとだけ寝た。
日記書くの、もうこれで本当に最後だ。
稲羽に早く慣れるために覚え書きをしておいた方がいいだろうと、何となくそう思って始めた記録だった。
書き始めはそれほど確固たる意思を持ってたわけじゃなかったけど、今となっては、書いていてよかったと思う。
読み返してみると全部懐かしくて、全部大事だ。
でも、稲羽を出た後は、読み返すことはないだろう。
何度も未練がましく振り返るようなものでもない。陽介とも、里中とも、天城とも、完二とも、りせとも、直斗とも、クマとも、一条とも、長瀬とも、海老原とも、松永とも、尚紀とも、クラスのやつらとか、廊下で擦れ違ったり話をしたやつら、先生方、商店街や近所で会った人たち、バイトで会った人たち、叔父さんとも、菜々子とも、会おうと思えばいつでも会える。
会えなくなってしまった人もいるけど。会えてよかった。会わない方がよかったとはどうしても思えない。誰のことも。
ここにいられてよかった。
ありがとう。
今日もいい天気だな。
いってきます。