あの頃@Aの続き。
漫喫でS先輩に触れられたあの日の後も、私は何も気づかないふりをして、先輩もいつもと全く変わらず、私たちは何も変わらないまま仲良くやっていた。
だけど、全く何もなかったかというと、
そうじゃない。
ある日、サークルのみんなで飲んでいて、その中には私と先輩もいた。それなりに酔っ払って楽しくて。たしか、先輩に『コンビニ行こうぜ』と言われてふたりで外に出たんだと思う。私はなんだか楽しい気分でふらふらしてて、危ないよ、とか言ってる先輩も結構酔っ払ってた。
コンビニからの帰り道に、神社を見つけた。
なんだろー、と寄ってく私と、帰るよと呼ぶ先輩。呼ばれたけど、神社の中になんでか入ってみたくて足を進めた私の腕を、先輩がつかんだ。
『ほら、いくよ』
するり、と自然に先輩の手が私の指と指の間に滑り込んだ。
あんまり自然で、でも、驚いた。
だけど振り払って気まずくなる勇気もなくて。
友人宅までのほんの短い距離を、恋人繋ぎをしたままふたりで歩く。酔っていた頭が、驚きですーっと冷めてた。先輩はどうなんだろう、酔ってるの?酔ったふりなの?と考えながら。
手を繋いだまま乗った、友人宅のエレベーターのあの不思議な空間を、今もまだおぼえてる。
友人宅のドアを開くとき、お互い自然に手を離す。何食わぬ顔で飲み会にもどり、私は柿の種を先輩に口に放り込まれ、そしていつの間にかベットでふたりで雑魚寝してた。
朝起きて、また、そのことには触れないで。
そんなことが、あともう一度だけあった気がする。ふたりでデートスポット的なところに遊びに行った時、飲んで酔っ払って、走っていたら手を掴まれて。
でも、先輩はイケメンで、だからチャラいんだって思ってた(イケメンごめんなさいw)酔ったら人との距離が近くなる人だったし、誰にでもやるもんだと思ってた。私のこと好きなのかな?って思ったことは、何故か一度もなかった。先輩と彼女さん、当時ラブラブだったし。なにより友達っていう意識が強かったから。だから私はいつもいつも、何食わぬ顔をしていたし、私たちの仲がおかしくなることもなかった。
忘れていたんだけどね、ほとんど。
日記を読み返したら思い出したよ。
他にも、飲み会でたけのこの里や枝豆をあーんされたりしてた。こないだの花火大会と同じように。
ううん、、当時はね、本当に何でもないと思っていたの。酔ったらくっつきたくなっちゃう女の子みたいなものだと思ってた。周りからしたらあんまり理解してもらえないかもしれないんだけどねー…実際、どんなにオールしてもそれ以上は何もなかったしね。
だけど、今こうして冷静に文字におこして客観的に見ると、あの頃から少しずれていたというか…曖昧だったのかな。たしかに私は先輩に好意はもっていたのかもしれない、だって顔がめちゃくちゃかっこいい。顔は大好きだったと言い切れる。中身は、ともだちとして、好きだった。じゃあ先輩は?私のことどう思ってたんだろう。
自分を慕ってくれる後輩?
気の合う友達?
酔うとたまにくっつける女の子?
それとも、そのどれも?
わからない。昔を遡って思い返すほどわからない。だから今、聞いてみたい。
言わせてみたいんだとおもう。
すきだ、って。
何年越しの種明かしをしてほしい。
話題:嬉しかったこと