2013年1月7日
クリスマス、正月と2大イベントを終え、天津照[あまつてる]は高校2年目の3学期を迎えた。
天津照はサッカー部のエースを務め、春の大会に向け励んでおり、勉強面では平均点くらいの凡人だ。
照はいつものように教室へ入り、自分の席に座る。
「ちゃんとテストの勉強してきたか?」
照が座るや否や前の席の田部大輝[たべだいき]が話しかけてくる。
「まぁぼちぼちね。」
彼らは今日、新学期早々宿題テストとか言うテストを受けなきゃいけないのだ。
「宿題テストってよ、結局宿題やっても点取れねぇよな……」
「確かに勉強しないと低くなるよな…」
大輝の言葉に返事をする照。
「ずるいぜ、宿題なんて名前付けといてほとんど実力テストじゃねぇか!」
そんな大輝の嘆きなど学校が聞いてくれるわけもなく今年も宿題テストが催されるのだ。
そしてチャイムが鳴り、テストが始まる。
教室の中は静寂に包まれ、皆が答案と睨みあいを始めた。
「迎えに参りましたぞ、テル様。」
照は突然の声にびくっとなり、視線を横へと向ける。
すると隣には黒いローブを身に纏い、なにやら怪しげな装飾を取り付けた人が立っている。
照は声が出そうになるのを堪え、順に目線を上に持っていった。
「うわぁぁぁ!」
不気味な仮面が目に入るとついに耐え切れず、照は声を出しながら反対方向へと椅子から転げ落ちた。
身に着けていた鍵のネックレスが床に当り、カランカランと乾いた音がなる。
照の言動に仮面の男は一切動じず、まっすぐに照を見下ろしている。
逆に先生やテストを受けている生徒たちは何事かと照の方を眺めていた。
「どうしました、天津くん?」
試験監督をしていた先生が急いで照のもとへと駆け寄る。
(な、何なんだ!?)
先生は仮面の男に気がつかないだけではなく、体をすり抜け何も無かったかのように照の顔を覗く。
「うわあああ!」
照が再び叫び、仮面の男の方に目をやると男の姿は消え去っていた。
「え? いや、あの……」
照の顔が青ざめていたため、先生はすぐに照を抱え、保健室へと連れて行った。
そして保健室のベッドに横になった照は何かに誘われるように眠気が襲い始める。
(…何なんだ…幻覚か?…よっぽど熱があるんだろうか…眠い…)
照はそれに逆らうことも出来ずに瞼を閉じ、眠りの世界へと入り込んでいった。
「迎えに参りましたよ、Sogno[ソグノ]へ…」
眠りに入った照の傍らには先ほどの仮面の男が立っていた。