ポケットの中身

2015/02/15 17:44 :BSR
想いと恋を重ねて(三政/BSR)

和平を結んですんなりと事が進むなら、乱世など無かっただろうな。
だが俺には夢があり、あいつにも夢がある。
男として生まれ、高みを目指す以上は争いは避けられない。
知ってたことだ。
「そんな世の中で恋するたぁ、酔狂だよな。」
「笑うな。わかりきったことを。」
月見酒を嗜むほどには仲が良好と取るか、政策の探り合いと取るか。
端から見ればどうとでも取れるかもしれねぇが、この組合せはどう見えるか。
「石田、もう一口飲むか?」
「いらん。」
「つれねぇな。」
「酒より貴様だ。」
差し出した徳利を持つ腕を取られて引き寄せられた。
いつも血の気の薄い顔は酒の所為か朱が差し、鋭い瞳は僅かながら垂れている。
可愛い奴だな。
「三成、あんた詠めるか?」
「…和歌か…詠めん。」
「だろうな。あんた自身が今詠まなくていい。知ってるもんもあるだろ。」
「何故急に。」
明らかにムッとした表情だ。
そりゃ今の雰囲気からいけば俺は素直に押し倒されるべきだからな。
ただそのまま流されるのは負けず嫌いな俺としてはなんだかな。
「お前の声で恋の和歌なんか聞いてみたくてな。」
「…“つくばねの みねよりおつる みなのかわ こいぞつもりて ふちとなりぬる”…。」
峰の間に流れる深い川のように、気が付けば自分の恋も積もって深い淵になるほど貴方を愛している。
「あんたらしいな。」
「黙れ、気が済んだなら床に倒されろ。」
「Wait、詠まれたら返さなきゃな。」
今考えて返してもいいが、どうせなら同じ和歌集から詠んでやろうか。
「“しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで”」
「知られたのか!?」
小十郎を始め、真田主従や元親、家康に三代目、隠し巫女。
会えば察しの度は違っても何かあったのかと聞かれて、その度に三成の顔が頭の中を過って。
「やっぱりあんた好きだ。」
「それより言ったのか!私と貴様がっ…!!」
「言わねぇよ。」
豊臣の左腕、石田三成と俺の恋なんか知られれば、すぐに戦になるだろうな。
そんな先は確実に存在する。
でもそれは今じゃねぇから。
「今は、あんたの腕の中に収まっていたいからな。」
「…ならば大人しくしていろ。」
「Ha!俺は竜だぞ。大人しくさせたきゃ…。」
「減らず口が。」
塞がれた唇安堵して、ようやく背中を床に着ける。
こんな世だから恋うたに想いを重ね、浸り、酔うことができた。
束の間の秘め事。
やっぱり酔狂だ。




――――
改めて「うた恋。」を観たら書きたくなった三政
おおっぴらに付き合う二人もいいけど、秘密に付き合う二人も素晴らしい(´∀`)


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