話題:幸せを、ありがとう。

ああ、明日。

明日、あなたはいなくなってしまう。

行かないで、と願っても。

夢であって、と願っても。

あなたはほんとに行ってしまう。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。

もう会えなくなるなんて嫌だよ。

あの日。

最後の日ね。

彼と別れたあたしは、重いと思ったけど、最後に気持ちをちゃんと伝えたくて、独りよがりの手紙を書いた。

ありがとう、と大好きな気持ちを込めて。

そして、用意したプレゼントを持って家を出た。

彼に用意したのはネクタイ。

新しいとこに行く彼に。

あたしを、あたしの思いを少しでも連れてって欲しかったから。

彼が大事な時、あなたのそばにいたい。

せめて気持ちだけでも。

そんな気持ちだった。

あなたの家に向かう途中、あたし何度も涙が出そうになったよ。

あなたの家について。

あなたの家のポストへそれらを入れて。

あたしは立ち去ろうとした。

彼に、LINEだけ入れて。

彼はすぐ見るねって言ってくれて。

あたしは、最後、遠くからでもあなたの姿を見たくて。

こっそり覗いた。

あなたを最後一目見て、あなたの部屋を遠くから見つめて、あたしは泣いた。

ああ、もうあたしはここを見てもあなたを感じられないんだって。

もうきっとあの場所に行くことはない。

もう辛すぎて。

あなたのことを思い出して苦しくなるから。

あたしはそこには近寄れない。

しばらくするとあなたからLINE。

お礼が言いたいんだけど、まだ近くにいる?と。

あたしは、それを断ったのに。

あなたはあたしを探しに来てくれて。

反対方向に向かっていたのに、走って向かってきてくれて。

でも、あたしは会わせる顔がなくて逃げた。

逃げ回った。

そんなあたしを彼は探してくれて。


だいぶ経った頃、遠くから走ってくる音が聞こえた。

ドラマじゃない。漫画でもない。

でもあなたがそこにいた。

あたしはね、それでも逃げた。

走った。

信号も無視した。

でも、あなたは追いついて、あたしの腕を掴んだんだ。