こんばんは。
性格の悪い桐谷の話が書きたくて書いた結果何を伝えたいのか分からない。はい、柑浪です。頭の中では整理できているのにいざ書こうとするとぐたぐたになる柑浪にまず国語を教えて下さい。
北一の事があり、人を信用できない影山に桐谷が助言する話です。でも後半桐谷は悪人かもしれません。とりあえずすみません。
「すげぇトス、打ってみてぇなぁ」
以前試合中にネット越しから言われた一言。
強豪校との試合、圧倒的な強さを見せる彼等。余裕なのか影山のトスを見て言う。馬鹿にしているのか?と彼を見る。単細胞と言われてる影山でも分かる、彼は馬鹿にしているわけではないと。日向が速攻をするぞと言った時と同じ瞳で影山を見ているから。
影山は人との付き合いが苦手dあ。特にコミュニケーションは壊滅的。天才で実力はあるが欠けたコミュニケーション能力で中学時代の先輩からは嫌がれ、チームメイトからは避けられていた。6人で戦うバレーが影山1人で戦う形になってしまった。
孤独が生まれ、元先輩が荒れている時に「サーブ教えて下さい」と言った瞬間殴られそうになった事も。そして幼馴染の「相手が天才1年だろうが」その一言で信頼していた先輩までも失った感覚に襲われた。所詮貴方も及川さんの味方なのですね。体育館の外で聞いた言葉に影山は涙を流した。
その日かた及川、岩泉を避けるようになった。逃げた、とことん逃げた。サーブを教わらなくても見れば大丈夫。口を開かなくても技を盗めばいい。関わらない方があの人達はいい顔をする。俺には見せなかった笑顔を国見や金田一には見せる。そう、俺は及川さんの前にいてはいけない人間なんだ。
いつの間にか先輩は卒業、残された影山とチームメイトの溝は深まるばかり。そして県大会予選での試合。コート上の王様と言われた影山。
その試合を間近で見た七瀬、桐谷、茶葉
セッターにとって上げたトスを打ってもらえない事は精神的にくる。
「俺だったらバレー辞めてるよ、あんな事されたら」
七瀬が口を開く。
残酷だね。北一は影山の才能を開花出来ない、むしろ影山からバレーの楽しさを奪った。いつからトスを上げる事が苦痛になったが、チームメイトの顔を見ると息苦しいと感じたか。あんなに楽しかったバレーが今となってはつまらない。
「勿体無いね」
影山から人との信頼を奪った。
影山を孤独にした。
ーー影山の成長を止めているのは人間関係かもしれない。
桐谷は言う。
そして1年後。
影山は鳥野に入学。
七瀬たちは強豪鴉原に入学していた。
夏の東京合宿。
鴉原も招待されていた。流石東京の強豪校、梟谷と争う鴉原を見て影山はただすげぇとしか言えなかった。以前4番の七瀬が言った、「影山のトスを打ってみたい」と。あれは嘘ではなかった。でも自分が懐いた所でまた中学の頃みたいに突き放されたら嫌だと思い鳥野以外には壁を作っていた。信用してはいけない。信用してまた後悔するには自分なのだから。
「影山は壁を作ってるね」
後ろから不意に声をかけられる。勢いよく振り向くと今梟谷と試合しているはずの鴉原のセッター5番の桐谷彰弥がいた。冷えていスポーツドリンクを影山に渡す。
そして影山の隣に座る。
「試合はいいんですか?」
「俺は休憩。だからお話しようよ。ちょっと影山と話してみたかったんだよね」
影山が憧れるセッターの一人。
肩に力が入る。そんなに緊張しないでよと笑う。
「影山はさぁ、何が怖いの?鳥野以外には壁作って自分から関わりに行こうとしないよね。そんなに俺等怖い?てか鳥野の先輩達にも遠慮してるでしょう?俺もここにいてもいいのか?って顔たまーにしてるよ?聞きたい事も俺が聞いたら迷惑とかそんな感じに見えるけど」
桐谷が言ってる事は合っていた。否定も出来ない。
もし自分が聞いたら迷惑だと思い込んでいる。中学の頃からそうだったから高校でもそうだと自分の中で決めつけている所があった。たった1日一緒の空間にいただけなのに桐谷は影山の考えている事が分かった。
どんなに優しい先輩がいても、いつ自分を否定するか分からない。
チームメイトもいつかはトスを拒絶されるかもしれない。
影山は常に恐怖心と戦っていた。
「ねぇ知ってる?」
影山の顔を覗き込むように見る。
「蒼空のヒーローは影山なんだよ?」
「え?」
「俺達はね全中の試合見てたの。あそこまで否定されてもお前はバレーを続けた。本当にバレーが好きじゃなかったら絶対に心折れてた、でもお前はバレーを続けたよね。蒼空はね、影山すげぇってずっと言ってた。本当はね、鴉原に来て欲しかったんだよ、中学の頃影山を孤独にした分高校では愛してやるとか言ってた。まぁ影山は鳥野に行っちゃったけど。凄く悔しがってた。でもあいつ諦めてないよ、高校が駄目なら大学であいつを可愛がるって言ってるぐらいだから」
桐谷が何を言ってるのか分からなかった。
頭の上に?を浮かべる影山を見てまた笑う。
「まぁ、俺口下手だから上手に言えないけど、簡単に言うと影山が思ってるほどみんなは影山の事嫌いじゃないよ。むしろ大好きだよ。俺達も、俺達以上に鳥野はもっとね」
だからさぁ、甘えてもいいんだよ。
頼ってもいいんだよ。
「先輩はね、後輩に頼って欲しいの。それは敵チームの俺達だってそうだよ?トス教えて下さいって言われるとね嬉しい、俺のトスを認めてくれるんだって。俺は高校からセッターを始めたからむしろ教わる側なのに、影山は俺のトスを見て無意識にすげぇって言っの。嬉しかった。影山の方が凄いのに影山に凄いって言われたんだよ?思わず蒼空達に自慢しちゃった」
影山の頭をなでながら言葉を続ける。
目頭が熱くなってくるのが分かる。
否定され孤独になって人を信用できなくてコート上の王様とまで言われた。しかし自分を分かってくれる人がいる事を桐谷の言葉で気付いた。自分が遠慮していた事で先輩達を傷つけていた事も。先輩は頼って欲しかった。
影山は及川と会うと固まってしまい、弱気になってしまう。しかし先輩達の前では弱音を吐かず強気でいた。迷惑をかけたくないから。及川は元先輩だから気にしなければいい。しかし、国見、金田一に向ける笑顔を見て心が痛くなった。それでもきのせいだ。俺は及川さんに嫌われているからと自分の中で解決していた。
「影山は1人じゃないよ。今は相棒もいて、頼れる先輩だっている。ちょっとひねくれてる同級生もいる。みんな影山が一人で抱え込んでいつか潰れてしまうかもしれないって心配している。だから吐き出しておいで。鳥野のメンバーに言いづらいなら鴉原においで。特に蒼空と茶葉は心配してるから」
「ウッス」
「ほらほら泣かないの。」
「なーに影山泣かしてんの?」
いつの間にか試合を終えた鴉原の七瀬と茶葉が近寄る。鳥野のメンバーも心配そうにこちらを見る。影山の視線に合わせるようにしゃがむ2人。ポンポンと頭を撫でる。
「何言われたか知らねぇけどあんまため込むなよー?鳥野には爽やかお母さんがいるんだからいつでも頼れって。全く不器用なんだから」
「そうだぞー。もうさ、敵とか関係なしに俺達に頼れって。ため込むとはげるってじっちゃんが言ってたから。ほら立って今思ってる事鳥野に言って来いよ」
茶葉は影山の腕を掴み、立たせる。
そして背中を叩いて、行って来いよと言う。
「もう我慢しなくてもいいんだよ。誰もお前の事拒絶なんてしないし、ここで立ち止まってもダメ、先に進めないまま高校終わっちゃうから。」
「すみません」
「すみませんじゃないだろ?」
「ありがとうございます」
頭を下げて鳥野に所に戻る影山。その背中を見送った後、どうしちゃったわけよ?とニヤニヤしながら桐谷に問い詰める。普段の桐谷なら絶対にしない事をしていたから。
「あそこまで及川さんに否定され、同級生たちにも見捨てられた影山が可哀想だと思って声かけたわけ?」
それはねぇよ?とニヤニヤから真顔に変わる。同情したのか?
「可哀想だと思ったから声かけたって言うならそれは中学の時にやってた。影山をこんなにも悩ませる北一の存在に嫉妬しただけ」
「お前も影山の事好きだよなぁ」
「お前に言われたくない。でも少し影山の眉間の皺が減ったらそれでいいのかもね。あとは鳥野に任せるよ、俺達が出る番じゃないから」
桐谷の言葉に今まで黙っていた茶葉が口を開く。
「違いますよね」と。今にも歩き出そうとしていた桐谷が足を止める。桐谷の頭の中で警報が鳴る。茶葉にこれ以上言わせてはいけない。口を開こうとする口を手で塞ぐ。これ以上何も言わないでと。
「分かってるから、自分でも分かってるから言わないで」
口を塞ぐ力が強くなる。
七瀬は桐谷の腕を掴み、茶葉の口から腕を離す。次審判だから行こうと。茶葉は舌打ちをし、2人の後をついていく。
茶葉は知っている。1個上には天才ではないが絶対的信頼と安定感のセッターの及川。1個下には天才の影山がいる。その間に挟まれた桐谷彰弥は潰れそうになった。いや、一度潰れた。桐谷彰弥は天才ではない。才能の塊でもない。
強豪校のセッターとしてプレッシャーはあった。身長もそこまで大きくない、パワーだってない。高校から始めたセッター。誰もが高校から始めたとは思えない程桐谷のトス裁きは同じチームでも尊敬する。コミュニケーションが苦手な桐谷が2人には負けたくないと必死にスパイカーに助言をもらいにいった。しかし壁は大きい。180超えの2人には敵わない。心の隅で感じていたのだろう。青葉城西との試合で1度ボロボロにされた。
読まれたトス、決まらない。
ネット越しの及川を見て絶望した。貴方は凄い、俺にはないものしか持っていない。貴方は俺を敵として見てない。
貴方の視線の先には影山がいる。
それが分かった瞬間、桐谷はトスを上げれなくなった。まずいと思った大久保がすぐにフォローに入り、桐谷はベンチ。手が震える、ボールに触れない。上げたい場所にあげられない。あぁ、俺は天才には勝てないのか。
影山に今日助言している姿を見て苛立った。
貴方は一度諦めたのに。本当は及川同様天才が嫌いなのに。どうして影山に優しくするんですか?流石に本人の前では言えないが、拳を強く握る。
どうして我慢するんですか?
どうして貴方が我慢しなくてはいけないのですか?
「茶葉」
立ち止まっている他茶葉に声をかけたのは篠久保。
「桐谷が感情表現が苦手な事知ってるだろ。絶望を味わってトラウマでボールに触れなかった時期を俺達は間近で見てた。荒れ狂った桐谷を見てられなかった。」
「あの時はオーバーワークでしたからね」
「影山の悩みは多分桐谷にとってはどうでも良かったんだ。言い方悪いかもしれぇけど。だって影山は天才だろう。桐谷は天才じゃねぇし、及川さんみたいに才能があるわけでもねぇ。天才が開花したらそりゃ俺達にとってはやべぇ事かもしれない。でもあえて桐谷は影山に言った」
どういう事か分かる?
茶葉には分からなかった。
「桐谷は自分みたいになって欲しくないと思ったから。だから今のうちに影山の中で引っかかる靄を晴らしてもらおうと思ったんじゃね?そうじゃなきゃ他人に興味を示さない奴が自ら行くとは考えられねぇ」
「優しすぎませんか?」
「そうだなぁ、あいつ馬鹿だからしゃーねぇよ。バレー馬鹿からバレーを奪ったら何も残らねぇから。ボールに触れない悔しさを知ってるからこそ影山に言った」
「蒼空さんと彰弥さんが影山を気に入る理由ってそこですか?」
「桐谷は知らねぇけど、蒼空の場合は純粋に影山を気にってる。トスを否定されてもバレーを続ける影山を見てすげぇって思ったんだろう。あいつ裏表ねぇから。普通だったらあそこまでやられたらバレー辞めるだろう。でも影山は残った。それだけでも蒼空は影山を尊敬するだろうし。」
まぁ、難しい話になっちまったけど
「俺達はバレー大好き野郎だからしぶとくバレーしてるんじゃね?」
「まぁ、そうですね」
及川さんが影山を見てて
俺を見ていない事は知っていた。
悔しい事も知った。
桐谷じゃ影山を超えられないと言われた。
心が折れる寸前だった。
あぁ、本当どうして俺はセッターに選ばれてしまったのだろうか?と何回も問いかけた事もある。リベロが良かった。それでもバレーを辞めなかったのは心のどこかで及川に認めてほしかったからかもしれない。それは影山でも言えること。
影山も及川に認めてほしかった。しかしそれは叶わず悪態しかとられない。それがトラウマになってしまったのだろう。でも影山。
「お前は及川さんに見てもらってるだろう。敵として」
鳥野に囲まれた影山を見て呟く。
俺は蚊帳の外なんだ。
だから嫌いなんだ。天才も秀才も。
及川も影山も嫌いだ。
冷めた視線で鳥野を見てすぐに歩き出す。
君たちは俺達に勝てない。
どんな手を使っても俺達は宮城で一番最強だということを忘れるな。