人間の優越感と言うものの残酷さについて考えている。
わたしはあの女(おんなという性別であるというだけでその他になんという呼称で呼べばいいのか皆目見当もつかないので便宜上、こう言うだけであって、わたしはアレをわたしの大好きな“おんな”として扱いたくはないのだ。なぜなら、“おんな”は美しくあろうとするイキモノでなければならないにもかかわらず、アレはそれを放棄していた、あまつさえその外見でわたしと張り合おうなんて万死に価する)に劣等感を抱かせていたのであろう。知人として数年間、関係を続けていたその間、恐らく常に劣等感を植え続けてきたのであろう。それはわたしの残虐さであると自覚はしている。
そう、わたしは嫌な女であった。だからこそ、その劣等感を覆す程の優越感を得られる手段をアレは取ったのだろうし、その皮膚を裏返して内臓を剥き出しにするような大袈裟で派手なその感情の高ぶりの高低さは、アレの無駄に高い自尊心を充分過ぎるほどに満たしたはずだ。わたしはアレの尊厳を傷付け続けていたのだろう。
なるほど、なるほど。それはいい。そこについてはわたしもいたく反省をする。つまらぬ自慢やひけらかしをするべきではなかった。そういう類いの下らない手段によって一時的に得られるとてもちっぽけな快感や快楽は、得てしてその先の人生において間違いなく正視に堪えない醜くゆがんだ影を落とす。
その意味で言えば、それ故に今回わたしの愛した彼女とわたしとアレの間にこんな風にややこしく醜い問題が起きたのであり、わたしはそれによって反吐の出る思いを味わったのである。
それは、まあ、それとして。わたしが寒々しい思いに囚われるのは、アレの覚えていた快感の醜さについて考え及んだときである。あの快感は女という性に纏わるありとあらゆる汚点、意地の悪さ、浅はかさ、汚ならしさ、矮小さ、そう言った目を逸らしたくなるような汚物めいたものを孕んだものであったろうと推察される。
よくもまあ本当に、あのようなどうしようもない人間も存在したものだなあと薄ら寒い思いに駆られる。
あの薄気味の悪い汚ならしさは人間の本質に通じるところがあるように思えて、わたしは大層興味深いのであった。この一連の行動からわたしは人間が人間である限り、逃れられぬ業のようなものを感じた。そして、その業をわたしが引きずり出したのであろうと思うと、とても遣る瀬なく、気が滅入る。人間の醜さにわたしは心から怯えている。

怖い