(ありがちぱたーんですが『自分の中の何かを明確にしようキャンペーン』続行中★)
XS小咄。
例えそれが詮無い事だとしても…
目の前に横たわる現実が現実なのだとして。
ただ思わずにはいられない。
この銀色との邂逅を。
一番最初の出会いなんて俺は覚えていなかった。
気がつけば。ちらちらと視界に映るようになった銀色が、人工的に落としたものではない本物の希有な色だと認識して興味がわいた。
だが、すぐにその煩さに辟易して蹴り飛ばしたのは言うまでもなく。殴られても蹴られてもそれは俺に付きまとう。
だから。
散々痛めつけた後に「弱いヤツに興味はねぇ ここで野垂れ死ね」そう吐き捨てて路地に捨ててきた。
数日姿が見えなくようやく諦めたかと息を付けば再び視界の端にちらつく銀色。
「なぁ。強かったらアンタの側にいられるのか」
包帯だらけの細いからだ。痛々しく見えるはずのそれに目を引かれたのは何故か。
「そうかもな」
なんの感慨もなくそう呟けば、その銀は何もいわずに視界から消えた。
清々したと思ったのは数日だけだったが。
組織の長の勅命は絶対だ。煩わしさはあれど、自らも既に組織に属しているのだからと諦め、呼び出された白い病室。
そこに銀色があった。
組織に属する医者は銀色の状態を淡々と説明していく。
そして知らされる事実。
「…剣帝が敗れた、だと…?」
声に反応して、瞼がぴくりと動く。髪と同じ色の睫毛が震えるように持ち上がった。
「よぉ…ザンザスぅ」
聞き慣れてしまった、あのうるさいくらいの声は、今は細く掠れていた。
そして…持ち上げようとした利き手には。
医師が淡々と言い綴った事実と同じ、その手首からあるはずの先が欠損していた。
あれから、一週間が経っていた。
白い病室、白い包帯、白い貌。
まるであの時のデジャヴュのようだ。
包帯とギプスで固定され、点滴と管、様々な機械で生を繋いでいるその姿。
指輪争奪戦終了後、別々に収監され傷ついた体を治療されていた。
あの時、動かす事さえも命にかかわると言われていたのだと、跳ね馬は言った。
ほぼ意識もなく、ろくに動かない体で点滴を引き抜いたのだという。
「お前のところにいかなきゃいけないんだって。相変わらず、人の言う事なんて聞きゃしないんだから」
苦い表情でそういった跳ね馬は簡潔に今の状況を伝えた。
俺自身、三日ほど意識が戻らなかったらしい。
更に酷い怪我を負っていたスクアーロは、あのあと意識を失い、無理をした代償のような高熱が続いたのだという。そして一週間経った今も意識は戻っていない。
病室の中程で立ち止まった俺を跳ね馬が入り口からみている。
監視の為なのだろう。申し訳なさそうに眉を下げた金髪を一瞥して息をはく。
近付きたくない。
あのときのデジャヴュなんかではない。解っている。
重い足取りで簡素なパイプベッドに近付いても、かたく閉ざされた瞼が開く事はなかった。
俺が目覚めてから、銀色は常に緊張を孕んでそこにいた。
『敗北者には死を』
ヴァリアーの不文律だ。
俺が唯一言告げたのならば、この銀色は何も言わずに自死するのだろう。