「本当の空の色って何色なんだろうか?」
わたしたちの見ている世界は実は本当の世界じゃないの、
世界なんて所詮は跳ね返った色を拾うだけの世界で、
網膜がひたすらに二次元を三次元に構築しているだけ、
わたしが見ているこの色のついた世界は、
近所のわんちゃんにとっては白黒の世界だし、(所説はあるけど、)
だからひょっとしたらわたしとあなたが見ている世界なんていうのも、
本当は全く違う世界なのかもしれないわよ、
振り返った彼女が笑う、いつも静かな彼女がいやに饒舌な今日は晴天、天を仰いだ僕の瞳に飛び込んでくるのは雲1つない真っ青な世界だった、
ねえ、それじゃあ君と僕の見ている世界は違うってこと?
僕の世界では、時計は11時59分を指しているよ、あ、もしかしたら、多少、ずれているかもしれないけれど、
お昼には何を食べようかなあ、おいしいサンドウィッチのお店があるんだ、そこのサンドウィッチでも持って、一緒に丘に登ろうか、いや、お母さんの作ったお弁当でも、
緑は揺れている、きっと、何一つとして変わりなく、秋になったら、緑は赤に代わるだろう、そうして僕の世界は廻ってゆく、きっと、誰も、疑問さえも抱かずに、
違うかもしれないわね、
誰もが信じて疑わない真実と言う名の常識は人間が作った幻に過ぎないのよ、
都合良く夢を見た人間の驕り、
言語を生みだし、定義を起こして、
そうやって毎日、自分が生き残っていける世界だけを愛して、
ねえいつまでそうやって、目隠ししたままでいるつもりなの、
本当は気付いていることに、気づいていないって蓋をして、
みんなと同じって、
「僕には理解できないよ、」
君の見ている世界が赤なら、僕の見ている世界も赤だ、
その世界に異論なんてないだろう、
だってそれは遥か昔から、変わることなく受け継がれてきたんだもの、
常識常識、常識は常識だから、変わることなんてないんだよ、
「わたしが見ている世界と、あなたが見ている世界は違うかもしれないのよ、」
あの緑が緑だって、そんなこと誰が決めたの、あの赤が赤だって、そんなこと誰が決めたの、あの黄色が黄色だって、そんなこと、誰が決めたの、
世の中に溢れる言語は、誰が何のために作ったの、
どんな思いを伝えるために、どんな祈りを込めて作ったの、
それはご立派な権力者のありがたいお言葉だったのか、それとも、飢えに苦しむ住民が無意識に呟いた言葉だったのか、
あなたが発するその言葉の意味と、わたしが発するこの言葉の意味が同じだってどうして言えるの?
あなたが見ているこの赤が、わたしの見ているこの赤と同じだってどうして言えるの?
あなたはわたしの口になって、この言葉を吐き出していないじゃない、
あなたはわたしの目になって、この赤を見ていないじゃない、
この世界は何一つとしてわからないのよ、いくら素晴らしい研究を繰り返したって、何一つとしてわからないの、
常識なんて、言うから、
「君は、」
「同じ世界で違う世界を生きているわたしたちが、交わることなんてあるのかしら、」
2011.12.11