練兵場が活気に満ちていた。
入隊したばかりの血の気の溢れた若い隊員たちが互の腕を競うように剣技をぶつけ合い、または先輩隊員に教えを請う者、日課の鍛練で己を磨く者と様々だ。
「次っ!」
型通りの剣筋をいなして払い退けると、鋭く声を上げる。
弾かれたように次に控えていた隊員が剣を振り上げて飛び掛ってきた初撃を弾き、切り返しで数度刃の衝突音を繰り返すと手首を返して相手の剣を弾き飛ばした。
「もっと相手の動きを見て!相手が次にどう動くか考えるんだ。次!」
一人一人に声をかけながら、フレンは自分の鍛練も兼ねて運動量を少しずつ上げていく。
(…ここでこう返したら、次は…、あいつなら、こう…)
「違う、こうされたら、こっちに捻って…。そう!…次っ!」
まだまだ拙い技術を指南してやりながら、フレンは頭の中で相手を置き換えてシュミレーションする。
しかし、実際の相手は新人隊員ばかりでフレンの力量には到底見合うはずも無く、次々と脱落して座り込んでいく。
遂には全員が息も絶え絶えになってしまった。
周りから軽い笑い声が起こる。
「…休憩しようか。鍛練で無理をしてもいけないからね」
すいません、と詫びる新人隊員達に笑って剣を収めれば、彼らはきちんと礼を取ってくれた。
(…いい子達だな)
たいして掻いていない汗を拭いながら、練兵場を眺めて壁に寄りかかる。
(…よく、礼儀を欠いて注意されてたっけ…)
無意識に記憶が呼び起こされる。
記憶の中で、長い黒髪が仏頂面で生返事していた。
練兵場で切り結んでいる隊員の姿が、自分とまだ在籍していた頃の幼馴染の姿と重なっていく。
(上段から切り結んで、返して…、)
何度も何度も、いつも喧嘩しながら、交えた刃。
(弾いて、下段から切り上げたのを躱して…)
理由はその時様々だったが、噛み合う剣の手応えすら思い出せるほど、繰り返し手合わせした。
(…この体勢から、身体を反転させて…こう来る)
口を開けば口論になった思い出ばかりが蘇ってきて、その時の腹立たしさも思い出していらつくのに、身体は染み込んだ彼との鍛練の動きを懐かしんで疼く。
彼が身近にいたあの頃、悩みも色々あったが、充実していたのかもしれない。
今が、何か物足りないと感じた。
「…。」
フレンはいつの間にか練兵場を出ていた。
どちらに、とそこで出会った部下に問われて、一瞬考え、答えた。
「友人に会いに行ってくる。」
もう彼がここを去って久しい。
きっと、また喧嘩になるけれど。
それもまた、たまにはしておかないと調子が狂う気がする。
彼も、そうだといい。
石造りの回廊を行く足取りが心なしか早った。
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ユリフレ擬き(笑)
Twitterで急に降ってきたネタを呟いたら、反響頂いたので。
どうにも、ヴェスペリアは特に、カップリングしてくれない(´ε`;)
独白になっちゃうんですよね…なんでだろ。