けだるい航海の中、アホみたいな平和さに飽き飽きとしていると前方に嫌なシンボルを見付けた。
自分のシンボルとはまるで正反対と言っていい、嫌な笑顔をしたシンボル。
「キラー、引き返せ」
「…どうした?」
「………」
「…ああ、解った。」
腹心であるキラーへ短い言葉を向けると、前方を見遣り理由を理解した彼が再び短い答えを返す。
「キッドの頭、問題が…」
言葉を放ったのはドレッド。
その言葉に振り返ると海底から現れたソレに顔を引き攣らせる。
「──…何なんだ一体」
それは良く知った、億越えルーキー。
前方には王下七武海、ドンキホーテ・ドフラミンゴ
後方には億越えルーキー、トラファルガー・ロー
眠い位の平和な海だったハズなのに、いきなり急変した空気。
慌ただしくなるクルー達。
既に疲れているキッド。
トラファルガーはともかくとして、前方が厄介だと頭を抱える。
そうこうしている内に双方の船が近付いてきてそれぞれの船長が姿を現した。
「よー!ユースタス!」
「偶然じゃねェか、ユースタス屋ァ…」
「…何か用かよてめェ等、喧嘩なら買うぞ。」
「…違いない。」
深いため息を漏らしながらけだるいままにドフラミンゴ、トラファルガーそれぞれに言葉を向けるキッド。
だが答えを返す前にその二人は睨み合いを開始する。
「おい、小僧、てめェ邪魔だ…消えなァ…フッフッフッ!!」
「誰かと思えば王下七武海、ドフラミンゴ屋かよ…アンタの方が邪魔だぜ?」
二人の間に火花が散る。
何故かキッドの船に乗り込んで来ていた二人はキッドを挟み睨み合う。
「…、だから、てめェ等何の用だって聞いてんだ…」
「フフ!そうだったそうだった!おいユースタス、お前暇ならちィと付き合え!」
「全力で断る。」
先に答えたドフラミンゴの言葉に一言で切り伏せるキッド。
それを聞いて反応するのは反対側のトラファルガーもだった。
「ドフラミンゴ屋ァ、抜け駆けしてんじゃねェよ。ユースタス屋はおれと行くとこがあんだよ」
「いやねェよ、何言ってんだてめェ。」
「良いじゃねェか、あるってことにしとけよ」
「良くねェし意味が解らねェよ、何なんだてめェはよ」
トラファルガーの意味が汲み取れない言葉に真顔で返すキッド。
第一、この男とは一度前に共闘しただけ、それだけしか面識はない。
後は手配書や聞いた話くらいなもんだ。
「フッフッフッ!!頂けねェなァ?キッドを誘ってイイのァおれ様だけなんだよ、死の外科医よォ…」
また意味の解らない事を言い出したピンクの怪鳥。
こいつどうしてやろうかと考えながらもキッドは疲れたとばかりに深いため息を漏らす。
「そりゃァこっちの台詞だ、ドフラミンゴ屋。おれとユースタス屋は過去にアンタにゃあ言えねェような事を…」
「何の話だこの変態外科医が、ただ共闘しただけだろうがよ!」
つらつらと紡がれて行く言葉に待てコラとキツく睨み付ければ何故かにやにやとする外科医。
「ククッ、いいねェ〜?ソソるぜ、ユースタス屋ァ…こう…ぐっちゃぐちゃに鳴かせて組み敷いてやりてェ…」
「いやいや何言ってんだガキ、そりゃおれがやるんだよ、一昨日きやがれっての」
「どっちも願い下げだこのド変態外科医に変態怪鳥が…!!」
トラファルガーはまだしも、と考えてしまった自分にほとほと呆れてしまうキッド。
何だこの変態二人と頭を抱えながら腹心キラーへ視線を向けると、キラーは無言で海を指差した。
「──…?」
指差された海を一瞥すれば巨大な影。
「…って、先に言えェエ!!野郎共とにかく何でも良いからこの場所から離れろ!!全速力だ…!!んでてめェらはさっさと失せろ───!!」
目の前には、黒雲。
前兆も何もないという、サイクロン。
とにかくこの場所から離れるべく船を走らせ始めればそれぞれの変態を船へと叩き返す。
「ってコラ、キッド?!」
「あー…こりゃマズいな、おれ達も逃げるぞー、潜水しろー。」
間延びした声と慌ててキッドを追う怪鳥の声。
何とかサイクロンをやり過ごしたキッド船。
ぐったりとしたクルー横目にキッドはとりあえずキラーにツッコむ。
「お前な、気付いてたんなら気付いた時に言えっての!!」
「違いない。」
「違いない、じゃねえっつの…まぁ…ヤツ等から離れられたからいいけどよ…ったく…」
「どちらも見事なまでに変態だったな…」
「何なんだ一体、そんなオーラでも出てんのか畜生。新手の嫌がらせか?」
とにかく船を走らせ嫌なものを振り払う様にしてはキラーと言葉を交わしつつ深いため息を漏らすキッド。
『…嫌がらせじゃなく、全力で本気なんだと思うが……まぁいいか…』
そんなキッドを見ながらキラーは一人考えた、が、口にはしなかったという。
「キッドの頭、後方からスマイルマークが来てる…」
僅かな安穏を感じていたキッドに届いた、ドレッドの言葉に再び船は慌ただしくなる。
「何が何でも逃げ切れ!!追い付かれたら殺してやる!!」
「また無茶を…」
「っせェよ!!」
とりあえず言われたまま、船長の言葉に従うクルー達。
逃げ切れたのか、追い付かれたのか……ご想像にお任せいたします。
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あいたー…相変わらず過ぎる意味不明っぷり(土下座)
ローとドフラミンゴはポジティブな変態だと信じてみたらこんなことになりました(笑)
ドレッド頭さんの名前が解らないので仮名で失礼しましたー!!