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ピーチパイ(アルヴィン)

アル主






開けた窓から覚えのある香がする。

甘い香のなかに、どこか香ばしい香。

「…ピーチ、パイ…?」

匂いに誘われるがままに部屋を飛び出した。




たどり着いたのは宿屋にある厨房。
宿屋の従業員に断りを入れて入ろうとした。


『焦げたァアァァ!!!!!』
「!?」

思わずビクッとしてしまった。

先程とは違い、香ばしいのではなく、焦げの匂い。そして、叫び声をあげた声の主。
カチャリ、とドアを開けた。
そこには真っ黒に近い物体と、それを持った一人の男が体育座りでうなだれていた。


「…どうした?」
『ぴっ!?』

声をかけると擬音を発しながらこちらを見た。


『いっいや、その…』
「…?」


咄嗟に黒い物体を背後に隠す。…バレバレだけどな。


「それ、何?」
『………笑わない?』
「ん、笑わない」


そっと背後から出した黒い物体。
形的にパイで間違いないと思う。


『ぴーちぱいを作ろうとして…』
「ぴーちぱい、ね」

柔らかい言い方にクスっと笑ってしまった。


『あーっ!笑わないって言ったのに…』
「あー…ワリィ、そういんじゃなくて、さ」


じとーっと見てくるアイツに、ぎゅっと抱き着いてみる。


『ん、アルヴィン?』
「それ、ちょーだい?」
『は!?だっダメだっつの!』


ひょいと皿ごと取り上げる。
そして一口パクリと食べてみた。


「っっ…ぐぇ…にげっ!」
『だから言ったろーが!っん、…んーっ!?』
「ん…んぅ…」


キス、してみた。


『っぷはっ!にっげぇーっ!!!!!』
「は…んぅ、…あっはは!確かに苦いな!」
『当たり前、だっろぉーが!///』


キスしたことに特には反応無かったけど
顔も耳も真っ赤で
可愛いな
そう思った。





初めてのキスは苦かった


(今はこれでもまだ良いか)

きみのぬくもり(アルヴィン)

声にならないこの叫びは


もちろん誰にも届く筈無くて


悲しみに追われては


また涙を流す








「…っ…」


"うそつき"と拒否されここまで傷付くと思わなかった。

「っ、ぅ…ぅ…っ」


それが、アイツに言われたのだとしたら。


「俺、は…っただ…っ」


眩しいくらいに輝いて見えた"仲間"に手を伸ばして触れたくて

だけど触れることが出来なくて。


「ぅ…っごめ、な、さ……っ」


罪を償えと、
冷たい瞳が睨みつける。



『アルヴィン?』
「っ!?」


頭の中で警鐘が鳴り響く


(嫌だ嫌だ嫌だ!!助けて!!)


『?…泣いてるのか?』
「っ、…ゃ…」
『あ…え、と…悪い…』


逃げ出したいのに身体が震える。
力が入らず立ち上がることも出来ない。


『その…昼間は、ごめんな?…もう少し、言い方があったと思う。反省、してる』
「………」


震えが止まった。


『あんなこと、言うつもり無かった。ただ、悔しかった。悩んでたおまえの事、気づいてやること出来なくて。何で、何も言ってくれなかったんだろうって…ごめん』
「…嫌いなんじゃ、ないの…?」
『え…?』

嫌われていると、
だから"うそつき"と、
罪を償えと、
言ったんじゃないのか?


『嫌いじゃないよってか…寧ろ、』
「…っ」
『好き、だ』
「っ、…っ…」


頬に、温かさを感じた。
流れる感触と
柔らかく何かが触れる感触


『…好きだよ、アルヴィン』


(…俺、は…)


『アルヴィンは…?』
「俺、は…っ」


(あぁ…きっと)


「…す、き…」


届いてたんだ。







声にならないこの叫びは


もちろん誰にも届く筈無くて


悲しみに追われては


また涙を流す




でもそれは過去の事。


今は、



届いたみたいだ。



流れた涙は

優しい温もりで

消し去って

僕を抱きしめて

笑いあって

共に歩んでいこうか。






きみのぬくもり
(今、すごく幸せなんだよ)

試し2

??

試し

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