翌日、昼休み。

屋上で鏡と昼食。僕はいつも購買でパンを買う。チョコレート系が好きだから、いつも甘いパンばかりになってしまう。

この甘さが昼にはすごく心地良い。

鏡はというと、いつも自作の弁当。女子らくし可愛い弁当になっていた。


「お前、可愛いお弁当なんだからクラスの女子と一緒に食べればいいのに。」


「うるさいわね。私、食事は静かにしたい派なの。」

「へぇ。本当は友達いねぇとか?」

「うるさいわね。ところで、昨日の話、どういうことなのよ?」

「親父が再婚して、義理の妹ができる。」

「そうなの。」

もぐもぐと静かに弁当を食べる鏡。

「義理の妹さんって何歳なの?」

「歳は知らない。妹って言うくらいだから僕よりは下なんじゃないか?」

「あんた、適当ね。」

ほっとけ。

「次の休みはご対面というわけ?」

「そんなところ。」

「義理の妹もそうだけど、義理の母親もできるっていうことだけれど?」

「・・・。」

会ったこともない他人に「母さん」と呼ぶ。これには強烈な違和感があった。

「ごめん。無神経すぎた。」

僕の反応を見た鏡が真剣な顔で謝罪する。

「よしてくれ、気にしてないから。」

鏡は弁当を地面に置くと、僕の頭を抱き寄せ、膝へといざなう。

「お、おい!学校だぞ!」


「誰もいないからいいじゃない。」

膝枕。鏡はいつもこうやって何も言わずに慰めてくれる。別に恋心があるわけじゃない。幼馴染みだからこその友情。きっと鏡だって同じだと思っている。


「お前の膝、すごく落ち着くから好きだ。」

「それはどうも。」

鏡を見上げつつ、胸のふくらみの間から見せる顔をそっと覗く。

でも、この時いつも鏡は空を見上げているから表情までは見えない。

「なあ、僕、うまくやっていけるかな?」

「それは会ってから考えればいい。」

「そうか。」

「うん。」

体制を変えようと鏡のお腹のほうに顔を向ける。

「ちょっと!!」

恥ずかしそうに鏡が僕の頭を押さえ、顔を元の位置に戻す。

「なんだよ。横を向きたいんだよ僕は。」

「や、やめてよ横は!恥ずかしいでしょ!その・・・いろいろと!」

「いろいろってなんだよ?」

「あんた、ほんとデリカシーないわね!スカートに顔をうずめる意味を分かってないわね!?」

「あ。」

そういうことか。

「まだシャワーしてないもんな。」

そう言った瞬間、僕は激痛で一瞬意識を失いかけた。

「痛ったぁ!」

バッと起き上がる。

「弁当箱で叩くなよ!」


「うるさいわね!もう終わり終わり!教室に戻りましょ!」


強制的に起き上がるはめになり、鏡はそのまま立ち上がるとパンパンとスカートの汚れをはらう。


「(・・・ピンクか。)」


あえて口にしない。今度は踏まれかねない。


そんなどうでもいい事が展開されつつ、午後の授業は始まったのだった。