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腐った女子が展開する妄想たっぷりブログ。リアル・漫画色々妄想しています。小説とか妄想語りもあったり。 基本腐女子です。
※本誌ネタバレ
チェインがライブラの執務室に顔を見せたのは、スティーブンの顔の腫れが引いた頃だった。
「…ほんっっっとうにすいませんでした…っっ!!!」
「いや…もういいよ。(よく判らないけど)僕が悪いんだし、ね…?」
乙女心というのは何年生きようが難しいもんは難しい。判らないものは判らない。
スティーブンは今回それが嫌って程身に沁みたので、今度もしこのような事態が起こったらもう少し扉の前で待とう。そう固く心に決めた。
『実存帰還符牒』
諜報部の不可視の人狼である彼女達にしかれた、彼女達をこの世界に繋ぎとめる絶対的な救済システムだ。
これが確実に行われなければ彼女達の存在は加速度的に失われ、この世界から「いなかった」ことになる。
なので、この「鍵」を決めるポイントは、
「絶対に帰りたい」
「帰らなければならない」
ということだ。
「鍵」を決める際、チェインが真っ先に思い浮かんだモノ…というより、人物。
(スティーブンさん…)
白い肌に走る傷痕。垂れ気味の、自分と酷似した黒目。同じ黒髪。
穏やかな物腰に柔らかい笑み。優しく、静かに魅了する声色。
仕立てのいいダークグレーの細身のスーツを身に纏う、すらっとした体躯の男性。
我らがボスの副官的存在である彼。
真っ先に思い浮かんだ、「鍵」は彼に関する事柄にしよう。そう決め、では内容はどうしようかと自宅に帰る道中考えた。
「……………。」
汚。
脱ぎ捨てた着替え。溜まった洗濯物。散らばるゴミ。そして酒瓶。酒瓶。酒瓶。酒瓶エンドレス。
自分の部屋ながら汚い。めっちゃ汚い。ごっちゃごちゃの滅茶苦茶に汚い。まるで一人暮らしの独身男のような部屋だ。
いや、スティーブンならこんな部屋ではあるまい。ハウスキーパーがいるというのは知っているから、整理整頓された綺麗な部屋なのだろう。
なのに自分の部屋の有様と来たら。
それこそこんな部屋を彼に見られたら泣く。マジ泣きする。
(生きてけないわー…)
チェインは掃除が苦手だった。
というより、整理整頓が苦手だった。
散らかっていてもそれなりに、何処に何があるかぐらいは判る。自分の家だし。かえって整理なんかしたら「あれ、どこにやったっけ」ってなりそう。
スティーブンに見られたら幻滅されるか、呆れられるか。どちらにせよ、泣く。
「あ」
これだ。
そして、
「やばいやばいやばいやばいやばい…!!」
自宅に帰ったチェインは全力で焦りながらも部屋の片付けを始めた。
己の存在を限りなくゼロにした。今、急速的に自分の存在がこの世界から消えている事だろう。
つまり、符牒がスティーブンの手に渡ったということだ。
ということは、
「つーか、酒臭い!!」
ファブ○ーズ!!
もうすぐ来てしまう。
脱いだシャツやゴミを纏めて抱えあげたその時、
「ええと、こんにちはあ!!遊びに来ました…!!」
ガチャリとドアノブが回され、玄関のドアが開いた。
あまり見られない、非常に焦っている、何か大事なものを守ろうとする時の顔だった。
そんな顔が見られてラッキーとか、
「……………。」
考えられる訳も無く。
ゴミ溜めの自宅を見られた衝撃で、これ以上ないぐらいに叫んで一人掛けのソファを彼に向かって投げてしまった。
そして話は冒頭へ戻る。
汚いにも程がある、女の部屋とは思えないそれを見られたショックでパニックになり、エメリナに泣きついてしまったが。
結果。彼女によってスティーブンは「おしおき」されてしまった。
掻い摘んで言うと、ビンタである。
ああ、女ってもんはやっぱり不可解だ。
身をもって実感したスティーブンに、後日、我に返ったチェインは心の底から謝罪を繰り返した。
「本当に、本当にすいませんんん…っ!!」
「もう良いって。な?兎に角無事帰ってきたんだから、それでいいじゃないか」
「じゃ、じゃあせめて何かお詫びを…」
「お詫びって…それ寧ろこっちがすべきでは…」
しかし、チェインは「あの綺麗な白い顔に赤い手の平の痕がぁぁぁぁぁ」とビンタをかました本人であるエメリナの前で頭を抱えるぐらいだったのだ。
ちなみに言えば、エメリナもさることながら、オリガやジャネットもチェインがスティーブンに想いを寄せていることを知っている。(というか、この時点で知った)
まあもう一人はどうにもマイペースと言うかのんびり気質なので、首を傾げていたが。
お詫びを。何かお詫びをと繰り返すチェインに、スティーブンは困り果て…
「チェイン」
出来うる限り優しい声色のつもりで、彼女の柔らかな髪に触れた。
ぽふ、と頭に手を乗せ撫でる。
「ご苦労様」
こうなると、もう何も言えなかった。
頭を撫でられると子供ではないのに、何だか落ち着く。それがスティーブンだからだとチェインは思う。
伏せていた顔をあげると同時に、離れた手の、細長い指が視界の端に入った。
「僕へのお詫びは、『パーティを思いっきり楽しむこと』かな」
「……………。」
「お返事は?」
「…はいぃ」
「うん、いい子」
にっこりと微笑まれたらもうアウト。
また頭を撫でられ返事を求められ、頷くしかなかった。
ああ、でも。やっぱり。
(綺麗だなぁ…)
取り敢えず目の前で満面の笑顔を見れたから、よしとしよう。うん。
そう自分に言い聞かせチェインは、夜のパーティーを言うとおりに思いっきり楽しもうと心に決めた。
「好きなもの、たくさん作ってあげるかなー」という声にも甘えて。
実在帰還符牒。
その「鍵」は、絶対的な、自分を世界に繋ぎとめてくれるもの。
―Chain.―
鎖を、持ち続けてくれる人。
end.
(20話派生未来捏造ストーリー
「水に沈んだ砂漠の下で」・番外編同タイトルとより一部抜粋。こちらのシリーズもいずれ本館に掲載します)
「やっほーバニーちゃん!!」
「こんにちは、バーナビーさん」
「…何故折紙先輩が?」
扉を開けて開口一発である。本来は、笑顔で辛辣な言葉を浴びせるのを最早楽しみにしてるのではないかと思われる美しく育った娘と一緒に来る筈だった元相棒は、何故か元先輩のイワンと共にやって来ていた。
仲良く手を繋いで。
「やだな、バーナビーさん。もう折紙先輩だなんていうことないじゃないですか」
「すいません、癖でつい。…というか、楓さんは?」
「ああ、何か急に仕事が入って来れなくなってしまったそうなんです。それで僕が付き添いと言う形で」
「おれ一人でも来れるよ?」
「うん、そうだね。でも楓ちゃんが心配するからね。虎徹君も心配させたくないだろ?」
「うん」
即答。やはり虎徹は虎徹。娘可愛いは一向に変わらない。
イワンはイワンで最近バーナビーが唐突に虎徹を抱き上げ抱きしめ、楓の飛び蹴りを喰らい見事に吹っ飛んだ光景を見て以来、彼女には逆らってはいけないと無意識のうちに思っている。
元仕事仲間から犯罪者は生み出したくはない。
そして虎徹君は守って見せます!楓ちゃん!ブルーローズ!
虎徹を兎の手から守ろう同盟を組んだ女性二人にイワンは固く誓い、部屋に入れてもらった今でも虎徹の手は放してはいない。
「いつまで手を繋いでるんですか。もう室内ですよ」
「はっ!す、すいませんつい…」
「ついって…」
「でもイワンおにいちゃんの手、あったかかったよ」
「じゃあ今度は僕と手を繋ぐ?」
「バニーちゃんの手冷たいから、や!」
ばっさりと切られた。
「と、とにかく豆まきをしましょうか!!」
天然って怖い。元仕事仲間であるキースもかなりの天然だったが、虎徹も大概天然である。天性の天然の無差別たらしだ。(自分もソレに掛かった口だが…)
そして今バーナビーが喰らったのは「必殺・天然ナイフ」である。命名:楓
やはり些かメンタルがガラス製である兎は床に「の」の字を書き始めた。これ自分がいなくても虎徹は自分の身は自分で守れるのではなかろうか。
そんなことを思ったが、何十回と怪しい&危ないおじさん、もしくはお兄さんに声を掛けられ果ては誘拐されかけているのだから、やはり一人にさせては拙いかとイワンは考え直し、持参した豆を枡にざらざらと入れる。
「これ、バーナビーさんの分です。落花生の方が回収しやすいと思ってこっちにしたんですが…」
「…有難う御座います」
日本の地方では落花生を撒く習慣があると事前に調査したのでイワンはこれを発注した。勿論自宅にも自分が食べるように取っておいてある。そして自分が撒くのは落花生ではなく大豆だ。(あれ?回収しやすいという心遣いはどこへ?)
「おれとイワンおにいちゃん一緒のだもんねー」
「ね」
「なんですと!?」
虎徹とイワンが持っている枡に入っているのは紛れもない大豆。
それはオリエンタルタウンの神社で御祓いを受けた炒り豆だ。元々鏑木家では毎年そうしていたらしく、楓もこの習慣を続けている。そして今年はイワンが是非とも!と懇願したので。
「神様にいっぱいお祓いしてもらったからね、ごりやくがあるんだよ!これで悪いの全部はらっちゃおうねっ」
「豆を撒いて祓うんですか…変わってますね」
「豆は、『魔滅』に通じるんですよ。魔を滅するということ、つまり鬼に豆をぶつけることで邪気を追い祓い、一年の無病息災を願うという意味合いが込められているんです」
「あ、そだ。豆をまくときは、『鬼は外、福は内』って言うんだよ?」
「成程。邪気を祓って幸運を招くんですね」
「じゃあやりましょうか」
和気藹々と、なる筈だった。
元気よく一握りの豆を掴んだ虎徹は、勢い良く、
「鬼はー外ー!!」
「いだだっ!!」
投げた。
何故に悲鳴?とイワンは首を傾げ、悲鳴の方向へ向くと、
「虎徹君!?何でバーナビーさんに向かって投げてるの!?」
「え?だって悪いの追い払うんでしょ?」
「いや、うん!そうだよ!?そうだけど、え、確かにちょっと邪な想い抱いてるけどこの人!」
子供と侮ってはいけない。虎徹の身体能力は生前とほぼ変わらないのだ。ただ体の大きさと体力が付いていかない時もあるが。
全力で投げたのだろう。かなりの痛がりようだ。
「だってね、バーナビーはこれまでいっぱい大変なことあったからよくないのがいっぱいついてるの。だからそれを全部追い払わないといけないんだよ」
「虎徹さん…」
ああ、僕の為にやってくれたことだったのか。
子供の力とは思えないパワーで投げられた大豆はやはり声を上げるぐらいには痛かったけど、それもこれも自分のためだった。
そう思うとバーナビーは目頭が熱くなるのを感じた。年を取ると涙脆くなりやすいとは聞いたことあるが、これしきのことで泣きそうになるとは、
(情けないなぁ…)
一生懸命に説明されたイワンも、「タイガーさん…」と呟いた。本当に変わらないのだ、虎徹と言う人間その心、そのものは。
他人の為に一生懸命になり、無償の優しさとぬくもりを与えるのだ。自分達は彼に償い切れない程の過ちをしてしまったというのに。
ああ、どうしよう。今此処に天使がいる。
「………って、楓が言ってたよ」
((はっきりと悪意が見えたぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!))
:すまん。兎いじめるのが大変好きなのだ。愛だよ!愛!!
性 別 | 女性 |
誕生日 | 10月4日 |
系 統 | おとなしめ系 |