Twitterで盛り上がったネタを発掘したので手直ししてアップ。
未完成です。
土手の桜並木でいつも見かける。
赤みの強い髪を風にくすぐられながら、常にカメラを構えている彼。
「…………」
何を撮っているのかはわからない。
けれど、真剣にレンズを覗き込む姿が格好よくてついつい目で追ってしまう。
話しかける勇気は、ないけれど。
そんなある日、
「やっぱり、気が進まないなぁ…」
以前から母にしつこく薦められていたお見合いのために、お見合い写真を撮ることになった私は1人スタジオを訪れて一枚、また一枚と写真を撮られていた。
さっき呟いた通り。
本当は撮りたくないけど、断る前に振り袖一式が問答無用で私の部屋に掛けられ用意されていた辺りに母の本気を垣間見てどうにも断りきれなかった。
まぁ写真だけなら…とやってきたものの、やっぱり写真を撮ったら最後な気がする。
このあと何を言っても勝手にお見合いの日を段取りされたりするんだろう。
「どうした?浮かばぬ顔じゃのう…」
「えっ、そうですか?少し緊張しちゃって…あはは」
「じゃあ少し休憩にするか、楽にして良いぞ」
自分でもひきつった笑顔をしているのに気付いていたけれど、さすがベテランカメラマンのお爺さんはそれを良しとしない。
思えば七五三も成人式も、このお爺さんに写真を撮ってもらったっけ。
お爺さんも随分腰が曲がっちゃったなぁ。
「そうじゃ、おい風魔!おらんのか!」
「…………」
「えっ!?」
何か思い出したように外に向かって誰かを呼んだと同時に、そのお爺さんの背後に誰かが立っていた。
「風魔っ…ひっ、ひいぃぃぃ!」
それに驚いて腰を抜かせたお爺さんにその人は手を伸ばして…
あれ?この人って、
「お、驚かせるでないわい!わしゃご先祖様が来たのかと…いるならいると返事くらいせんか!」
「…………」
必死に怒鳴るお爺さんを立たせながら、その人はぺこりと頭を下げてみせた。
その時、見覚えのある赤みの強い髪がさらりと揺れる。
「あっ、」
「…………?」
今度はそれに気付いてつい声を出した私に彼の顔が向けられた。
目元を隠すような長い前髪、首を傾げた仕草が少し幼い。
「ほれボケッとしている暇はないぞ、手伝え風魔」
「……………」
そう言われてすぐに私から視線をそらした彼は、お爺さんと何か話してこちらに近寄ってくる。
そしてぺこりと礼をしてから腰に下げられた道具類から櫛を取り出して私の前髪を梳かす。
背が高そうとは思っていたけれど、間近で見ると予想以上に大きい。けれど、土手で見かけていた時の印象よりも若い気がする。
年下、なのかな。
みたいな感じで始まって。
雨の日に小太の部屋で雨宿りしてなんかあったりとかそんなお話です。珍しく年上夢主。
お見合いや結婚式ぶち壊したりはないです。
けどラストはお約束です。