薔薇→虎要素も含みます。
あたしは、今から大きな壁を乗り越えようと思う。
あいつを…タイガーを振り向かせる日が来たから。
あたしの手で。
あたしはトレーニングが終わった後、少し休憩しようと思いベンチに座る。そして帰ろうとした時偶然タイガーを見つけたのでタイガーに声をかけることにした。
あのことを…ずっとタイガーに伝えようと思ったことを言いたかったから。
だけども言うには本当に勇気がいった。
それだけじゃない、あいつはかなり鈍感であたしが言うことを本当に聞いてくれるのか、そしてタイガーには娘である楓ちゃんや亡くなった奥さんもいるって話も聞いてたからあたしが告白していいのかという不安や躊躇いもあった。
いや…でもダメだ。ここで言わなきゃ。
今言わないと今後スッキリしないと思うし。
あたしは勇気を持ってタイガーに声をかける。
「タイガー、あのね…聞いて欲しいことがあるの。ちょっと来て。」
「ちょっと、おい!ブルーローズ!?」
そしてあたしは戸惑い気味なタイガーの腕を引っ張って人気のない場所まで行った。
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タイガーはいつものあたしらしくないと思ったのか少しばつの悪そうな表情をした。
「ブルーローズ?聞いて欲しいことってなんなんだ?いきなり腕握って引っ張って…」
なんかちょっと悪いことしちゃったかな、タイガーに…謝ろう。
「ごめん…強引過ぎたよね」
するとタイガーは何も文句は言わず、ただあたしの頭を撫でてこう言う。
「そんな謝るなって、逆に珍しくオマエから声かけてくれたの、嬉しかったぜ」
「……」
ホント…鈍感な癖に決めるとこは決めるんだよねタイガーって。けどそこがかっこいいし…惚れる。
でもあたしの頭撫でるのホントやめて。あたしそんな年じゃないから…恥ずかしいよ。
まぁ嬉しいから良いけど…。
「ん?どしたブルーローズ?俺なんか変なこと言った?」
「別にそんなんじゃないよ…タイガーが言ってくれたことは嬉しいけどただ頭撫でるのやめて欲しいと思っただけ」
「いいじゃねえか、減るもんじゃないし」
「そう…」
またこういうこと言うんだからもう…タイガーのばか…。
ってこんなこと言ってる場合じゃなかった。
話さなきゃ。
「ねえ、タイガー。聞いて欲しいことなんだけどさ」
「ああ、そうだ、本題はそうだったな。なんなんだ?」
告白しなきゃ。
「うん、あのね…タイガー、あたし……タイガーのこと…」
「?」
緊張する。脈拍が走る。でもここで言わなきゃ後がない。
あたしは、覚悟を決めてタイガーに言う。
「ずっと気になってた…好き…なの」
出来た。告白出来た。覚悟も決められた。
でも、静けさは止まらなかった。
あたしが告白した後、タイガーは嬉しい表情になるかと思いきや、険しい表情になった。
「……」
あたし…やっぱり…
するとタイガーがあたしに優しくこう言ってくれた
「お前の気持ちは良く分かったよ。ブルーローズ。」
「!?」
あたしの「タイガーが好き」という気持ちが伝わった。
嬉しかった。もうこの言葉を聞くだけでも十分だとあたしは思った。
だけど…タイガーはその後あたしにこう諭した。険しい表情をしながら。
「でもよ、俺には妻と娘がいるから…お前の気持ちを受け入れると俺はあの二人を裏切ることになっちまう…だからごめん、お前の気持ちは受け入れられねえ」
気持ちは伝わった。好きだと伝えた気持ちを認めて貰えた。
でもやっぱり受け入れてくれなかった。
当然だよね。タイガーは亡くなった奥さんとも何か約束してるだろうし娘の楓ちゃんもいるし。
タイガーがあたしみたいな女のところに来たらダメだよね。
なんか最悪なことしちゃったなー…あたし。
「……そう、だよね。ごめんね、タイガー。あたしがこんな感情になるから…。今の話、なかったことにして…それじゃ」
何も言い返せなかったあたしは、タイガーに謝罪をして、涙を呑んでその場を後にした。
「ブルーローズ…」
その後タイガーが何やら心配そうな、複雑そうな顔をしていたことは、あたしは知る由もなかった。
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タイガーに振られたあたしは、一人うずくまっていた。
もう分からなくなって頭の中が真っ白になって色々と嫌になって涙が溢れそうになった。
「……何やってるんだろ、あたし」
本当にバカだよね。大体既婚者を落とすなんてそう簡単に出来る訳がないし。
特にあいつはかなり純粋そうなタイプだからそういうタイプは一途だしそういう人を落とすなんて他人から見たら馬鹿げていると思われるんだろうな。
あたし本当に暗すぎ。なんか折紙みたい。
まぁでも今なら嫌なことがあればすぐに暗い方向に持ってきがちな折紙の気持ち分からなくもないかな。
するとあたしの背後から足音が聞こえる。
…?あれ、誰かいるのかな。
あたしが誰だろうと思い後ろを振り向いたらそこにはタイガーの相棒のバーナビーがいた。
しかもなんかあたしのことをずっと見ている。何?またあたしのことを馬鹿にしにきたの?
すると何故かバーナビーがあたしに声をかけてきた。
「…どうしたんですか?ブルーローズさん」
どうやらあたしを馬鹿にしに声をかけてきた訳じゃなさそうだった。
なんだか表情を見る限り凄く心配してそうな表情だった。
別に…あたしに構わなくても良いのに。
ジェイク事件以降バーナビーは段々丸くなってきてる。タイガーのこと「虎徹さん」とも呼ぶようになったし。
でもこんなに優しくなるとは思わなかった。前まではこんなお節介するの嫌いだったはずなのに。あたしを馬鹿にしたくせに。
…そういうお節介なとこタイガーとかスカイハイにでも似たのかしら。
「人って変わるよね」って話、前にジェーンとエミリーとしたことあったけど…本当だったんだね。
私は黙って俯く。
「…」
「黙ってると分からないですよ」
そんなこと分かってるわよ…。
でも…あんまりバーナビーを心配させても仕方ないから話そうかな…。
「ねえ、バーナビー」
「何ですか?」
「バーナビーにとって、タイガーってどういう存在なの?」
「虎徹さん…ですか?勿論僕の信頼出来る相棒、そして先輩ですよ。まぁ最初の関係は最悪でしたけど。僕が番組でどう目立てるか色々提案を出したりしてもあの人は「ポイントなんかより市民の命を助けることを最優先しろ」の一点張りで…そのことに関してよくそれで喧嘩してました。市民を助けるとはいえ物を壊してまで助けるんですから…僕はただ呆れるしかありませんでした。毎回意見が噛み合わないだけでなくあの人仕事もちゃんとしないので大量にある賠償金の請求書とか僕がほぼ書く羽目になって僕自身イライラしてましたね。しかし虎徹さんはやる時はちゃんとやってくれる人です。ジェイク事件の時やマーベリック事件の時は本当にあの人に助けられました。一緒に犯人探しをしたり僕の調べ物を探すのを手伝ってくれたり。僕が追い詰められた時もあの人は救いあげてくれましたね。本当にこの恩は一生忘れないと、この人の相棒で良かったと思いましたね。…でも何でこんなことを僕に聞くんですか?」
…話長すぎ。って言ってもバーナビーがこんなにタイガーのことを語るのも当然か。
お互い信頼し合ってるんだね。良いなぁ…。
あたしが何でタイガーのことを聞くかって?それは…
「タイガーは…あたしにとっては大き過ぎる存在だったんじゃないかなって…実はあたし…タイガーに好きって想いを正直に伝えてみたの。言うなれば告白ってやつ」
「!?」
なんかバーナビー凄く驚いてる…。
やっぱりびっくりしちゃうよね。
私はさっきまであったことを淡々と話す。
「でも…やっぱりダメだった。あたしが今までタイガーに想った気持ちが全部無駄になるんじゃないかって思うと辛くなって…。あたし…本当に何してるんだろうって思っちゃって。馬鹿みたいだなって。バーナビーも…あたしのやってること馬鹿みたいだって思うよね…」
こんなこと言ってあたし…バーナビーに冷たく返されるんだろうな…。
まぁ当然よね…。
と、思っていたら
バーナビーから意外な答えが返ってきた。
「僕は…ブルーローズさんが虎徹さんに伝えた気持ちは無駄じゃないと思いますよ。馬鹿みたいなことだとも思いません。」
「バーナビー…?」
一瞬、何か夢でも見てるんじゃないかとあたしは思った。
バーナビーからそんな答えが返ってくるなんて。
続いてバーナビーはこう言う。
「それに第一、虎徹さんは、人の気持ちを蔑ろにするような人じゃないですよ。虎徹さんがブルーローズさんに言ってくれた言葉とは何だったんですか?」
そう質問されたあたしはタイガーと会話したことを思い出し、そこから心当たりのあるタイガーの台詞を抜き取り、それを言葉にして出す。
「お前の気持ちは良く分かった。とか俺は妻と娘がいるから…オマエの気持ちを受け入れると二人を裏切ることになるって…」
すると理解してくれたのかバーナビーは頷いて、またあたしに質問する。
「なるほど。虎徹さんらしいですね。ブルーローズさんはその虎徹さんの言葉を聞いたとき、自分の気持ちは蔑ろにされたと思ったんですか?」
「!」
それを聞いた瞬間、何故か目から涙がこぼれ落ちた。
どうして…あたし…バーナビーの前で涙なんて……みっともないわ。
「思うわけないじゃない…。タイガーは…優しいから…。あたしだってそれくらい分かるわよ…。」
当然じゃない…。タイガーがそんな酷い奴な訳ないじゃない…。
馬鹿みたいに鈍感だけど、馬鹿みたいに優しくて、馬鹿みたいにカッコ悪いけどカッコ良くて
「そう思うなら、もうそれで十分だと思いますよ。それに…無理しなくてもいいんですよブルーローズさん。貴方さっきから泣いてないですか?」
気のせいだから…汗かいてるだけなんだから…。
とか誤魔化してみても無駄だった。
「やだ…あたし…なんで……泣いてる訳なんか……あ」
するとあたしの涙が頬を蔦って段々零れ落ちてくる。
タイガーにフラれて悔しいのか、バーナビーに宥められて嬉しいのか、よく分からず、ただ色んな気持ちが混ざって流れた涙が自然に流れてきた。
するとバーナビーはそんなあたしを介抱したいのか、あたしの体をそのまま抱きしめた。
そういえばあたしバーナビーに姫だっこされて助けられたことならあるけど、抱きしめて貰えるのって初めて。
バーナビーの体…こんなに大きくて暖かいんだ…。
嫌な男だと最初は思ってたはずなのに、なんだか嫌な男だとは思わなくなってきた。
「泣きたい時は泣いたって構わないんですよ。僕も…貴女と同じように意地を張ってそういう無理した時ありますから、気持ち分かります。」
バーナビーも…あたしと同じ悩み持ってたんだ。
あたしはバーナビーの抱擁と言葉で緊張が溶け、タイガーの告白で悩んでたことに関してはもう吹っ切れてしまった。
「バーナビー…ありがとうっ…ぐすっ」
あたしは嗚咽混じりで涙を流しながら口から自然と感謝の言葉を述べた。
するとバーナビーは今までにない優しい表情であたしを見て、優しい声であたしにこう言って、あたしを強く抱きしめた。
「ブルーローズさんは良く頑張りましたよ」
そして、あたしの泣く声が響きわたり、気がついたらあたしはバーナビーに体を預けていた。
バーナビー…ありがとう…本当にありがとう。
もう…これだけしか言えない…。
これがきっかけであたしは、バーナビーを段々好きになっていった。
END
>久々の小説です…。いやもう文章乱れてないか心配…。
兎薔薇ちゃんのキャラソンが明日発売するので記念に書いた小説です。
と言っても虎徹さんに告白してフラれてしまう話なので少し後味は悪いとは思いますが…。
タイトルのreveal mindのrevealは示す、明らかにする、mindは心や想いという意味で即ちタイトルは「示す想い」という意味なので、青薔薇ちゃんの虎徹さんに告白するという覚悟を決めた心情と「バーナビーをもう少し頼ってもいいかな」とか「バーナビーがだんだん好きになってきた」という心情をタイトルでストレートに表してみました。
ちなみにこの話はタイバニ本編のその後の話です。
いつかカリーナちゃんも虎徹さんに想いを伝える時が来る…かな?