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軍師と旦那と前田と光世とお祭りと。



2月。如月。
とあるアスク王国ではお祭りが行われる月だ。
1ヶ月の間中はアスク王国の全域でお祭りが開かれている。

この月ばかりは、日頃忙しい国王も朗らかな王妃に促されるまま城下での催し物に参加する。

気が抜けないのは国王夫妻の息子…この国の王子であるアルフォンスが所属している特務機関・ヴァイスブレイブである。

このひと月ばかりはアスク王国中でお祭りが行われているため、いつも以上に警戒しなければならなかった。


今年は特務機関の救世主とも言われている召喚士が副業として【審神者】と言う仕事を始めたおかげで、人材が増えた。

審神者とは、とある国の歴史を守るため、刀の付喪神に力を借りて戦うのだという。


審神者召喚士の元にいる刀の付喪神達…刀剣男士は50振り以上おり、見た目は幼い子供もいるし、月のように美しすぎる美丈夫もいるし、筋骨隆々の逞しい者もいる。
見た目は若くとも『神』だから凡人よりも年上。
竜人族(マムクート)達のように若く見えるだけなのだ。

三日月のような美しい見た目の青年も中身はじじいだし、
見た目は儚い真っ白い着物の青年も中身は驚きが大好きなサプライズじじいなのである。

子供らしい口調で一本下駄を履いた少年も見た目は幼いが中身は……これ以上は言うまい。



そして、城下町でひとり立ちすくむ髪型ぱっつんボブの少年…彼も刀の付喪神こと刀剣男士である。


彼の主である審神者兼召喚士からの指示できょうだいたちともども祭りの警備の手伝いを行っているのである。

前田藤四郎のきょうだいは大半が短刀だ。
見た目が幼く偵察任務も得意な短刀ならば、遊びながらでも祭り警備ができると考えたのだ。


ぱっつんボブの短刀…前田藤四郎は、きょうだい刀とではなく、仲のいい太刀の刀剣男士とともに城下町の警備をしながら祭りを楽しんでいたのだが………



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【前田くんの独白】


お祭りで多くの人が行き交う中、僕は呆然と立ちすくんでいました。

主君に命じられた祭りの警備をかつて同じ殿様に仕えていたことのある太刀の方を誘って、見回っていたのですが…。

「やはり…人混みに無理に連れてきてはいけなかったのですね…。」


大典太光世様
天下五剣の一振。
主君が審神者を志すきっかけとなった方であり、病を治す霊刀と呼ばれる方です。

しかし、とても強い霊力をお持ちの方で人目につかない生活を続けて来られたからなのか…時の政府からは【蔵入息子】と呼ばれておりました。
ご本人も内向的な方で、一緒に見回っている際、少々怯えていたように思います。

大典太光世様の霊力はとても強く、仕舞われている蔵に雀が寄り付かない、もしくは鳥を撃ち落とす程の力があるとされていて、ご本人は『自分が近づいたら動物が死ぬ』と思っているのです。

そして
「やはりこのような場所は俺には合わない…!」と言い、走り去ってしまったのです。


「困りましたね…。
一応連絡用の端末で現状をいち兄や乱兄さん、や主君、アルフォンス王子らにお伝えしましたが…。」

出陣以外でも現世には楽しいことがあることを光世さんにも教えてあげたい。
そう主君は仰っていたから…大典太光世様と組んで見回ることに立候補したのですが…


「やはり…無理に連れてきてしまったのが行けなかったのでしょうか…。」


そう落ち込む僕の元に、聞き覚えのある声がしたのです。


「あら…?前田くんじゃない?」

「!貴女様は…」


お日様の光のような暖かな髪色の女性。
この場にきょうだいであり、主君の初鍛刀の包丁藤四郎がいなくて良かったと内心で思ってしまったのは、内緒にしておこうとおもいました。


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時は前田藤四郎が大典太光世とはぐれた頃に遡る。

【軍師夫婦 in アスク王国】


「やっぱり盛り上がっているわね!」

「ここがアスク王国か…。
国を挙げた祝祭とは胸が踊るな。」

「神竜アスクを奉るお祭りなんですって。
あちこちの屋台が楽しそうね!」


イーリス王国からゲートを潜り、アスク王国へ
夫のパリスを連れてやってきた。

久しぶりのデートよね?
ワクワクしちゃうわね!
正直ここまで浮かれてる所を息子や仲間たちに見られるのはさすがに恥ずかしい。

まぁ、何か言われたら炎魔法のボルガノンを食らわせるからいいんだけど…。


今回アスク王国に来た目的は3つ!

1つめははお祭りを楽しむこと!
2つめは夫パリスと見た目が似ている内番着の大典太光世を見ること。(これはパリス本人に言ってない)
3つめは特務機関本丸の英雄会議に出ること。
ここのクロムの嫁もスミアらしく、ようやくスミアに会うことが出来てクロムは喜んでいるけど、英雄会議を行うきっかけとなったシグルドの妻ディアドラは未だに邂逅できずにいる。

封印の剣の英雄の追加召喚も近づいているから、確実に英雄会議が行われると思う。

そんなことより今はお祭りを楽しまないと!

国王夫妻が参加するイベントが行われているステージ付近でお祭りの屋台の目録を読みながら思考に没頭していた時にふと気づいた。


「…………え……、パリス…は…どこ?」


いつの間にか夫とはぐれてしまっていた…。

昔から気がつくと行き倒れていたり道に迷っていたりする悪癖がある。

(友人と映画を見に行った紅火がその友人を【決断力のある無意識の方向音痴】と言ったが、それはあたし自身に当てはまることに気がついたことからは目を背けたい)


小隊を率いながら道に迷ったこともあるし、特務機関の本部や本丸内部でも時々やらかす。


「ちゃんと手を繋げば良かった…。
そうすればはぐれなかったし迷わないし、何より恋人らしかったのに…
あたしの馬鹿……。」


国王夫妻のステージには警護の刀剣男士の姿も見える。

水色の髪のロイヤルな雰囲気の一振が落ち着きがなくなり、面具をつけ狐を連れた一振に舞台袖に連れていかれる姿が遠目に見えた。

大衆は国王夫妻とその警護役の青い狩衣を着た刀剣男士や白髪で天狐のような見た目の刀剣男士や白い着物を着た儚い見た目の刀剣男士を見ていたから、ロイヤル一振と喋る狐を連れた2振りがいなくなったことに気づかなかったみたい。


いつも落ち着いているあの一振が慌てるなんて…彼の数多く居る弟達の誰かに何かあったのかしら…?

そう思いながら歩いていたら、確実に原因だろうと思われる一振がいた。

前髪ぱっつんのボブヘア、マントを付けた幼い少年のような見た目の刀剣男士。
何やら落ち込んでいるようで、声をかけないなんて選択肢はない。


「あら…?前田くんじゃない?」

「!貴女様は…軍師ミコト様…!」

「どうしたの?さっき国王夫妻のイベントステージで警護役の一期一振と鳴狐が慌てていたみたいだけど…何かあったの?」

「……実は…大典太光世様とはぐれてしまったのです…。」


前田くんが言うには、本丸に引きこもりがちな蔵入息子の大典太光世を連れ出し、見回りをしながらお祭りを楽しんで貰いたかったようなのだが…、人混みに慣れていない大典太光世が耐えきれなくなり、彼とはぐれてしまったのである。

無理矢理連れてきた自分が悪いと前田くんは哀しそうな眼差しで言ってきた。
だからあたしは


「そんなことないわよ。
きっと今頃大典太光世も『言わなくていいことを前田くんに言ってしまった…(´・ω・`)』とか言ってどこかの路地裏で凹んでいるわよ!
あたしもうっかり旦那とはぐれちゃったし、せっかくだから一緒にお互いの連れをさがしましょ!」

「…そう…ですね。
ありがとうございます。」


こうして前田くんと一緒にパリスと大典太光世を探すことにしたの。

こういう時のあたしの強運は凄いんだから!

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【はぐれた蔵入息子の独白】


前田に酷いことを言ってしまった…。

かつて同じ主に仕えていた事のある短刀は、普段から本丸にこもりがちな俺をせっかくの機会だからと、現在の主の仲間たちの国で行われている祭りに誘ってくれた。

そんな彼に対し、俺は人混みに慣れないと突き放し雑踏に紛れて逃げ出してしまった。

短刀だから直ぐに見つけ出すだろうと思ったが、中々追ってこないため、俺の言葉で傷ついていて落ち込んでいるのだと気づいた。

やはり俺などは本丸から出るべきではなかったのだ…。

路地裏でしゃがみこんでいた時、誰かが近づいてくる気配がした。


「おい、あんた。
こんなとこでどうした?気分が悪いのか?」


顔を見上げると、自分に似た雰囲気の男が立っていた。

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【妻とはぐれた末裔side】


妻に連れられ、アスク王国の祭りにやってきた。

国王夫妻が参加するイベントの様子を眺めつつ、人並みを歩いていく内に妻とはぐれたことに気づいた。


(手を繋ぐのを忘れていたな…。)


自分で言うのもなんだが…、妻は美しいだけでなく、明るく社交的で人を惹きつける魅力を持っている。
変な虫がつかないか心配だ。

来た道を戻ろうかと思ったその時、近くの路地裏から不思議な気配を感じた。

その路地裏へ進み、奥まで行くと1人の男がしゃがみこんでいた。

気分が悪いのかと問いかけると、男は

「連れとはぐれてしまった…。
俺がアイツを傷つけるようなことを言ったばかりに…。」


清廉な神気の気配を持つ男だが、ネガティブ思考が強いのか周りが暗く感じる。


「連れとはぐれた理由も、自分が悪いということにも気づいたのなら謝らなくてはならないぞ。」

「それもそうなのだが…人混みは苦手だから、この路地裏からは出られない。」

「何を言っているんだ。
いつまでもここにいる訳にはいかないだろ。
大事な人を傷付けたと自覚してるなら、早めに謝らないと取り返しのつかないことになるぞ。」


項垂れる男を無理矢理立たせる。

相手は自分と似た風貌をしている気がしたが、とりあえずスルーだ。
相手も俺と自分が似ていると気がついたような気がする。


「俺もちょうど妻とはぐれてしまったところだ。
せっかくの機会だし、お互いの相手を探しに行くか。

近くで国王夫妻のでるイベントがやっていたから、そこにいる警備の奴らに声を掛けて、連れが来るのを待つか。」

「あのイベントには連れの兄がいるな…
また叱られてしまうな…。」

「連れとは女か?」

「いや、男だ。」

「名乗るのが遅れたな。俺はパリスだ。あんたは?」

「……光世だ。
仲間たちからはおでんとも呼ばれることがある。」


そんな会話をしていると特務機関隊長の用意したであろうスピーカーから声がした。

『蒼炎の勇者の末裔のパリスさん、天下五剣が一振大典太光世さん、国王夫妻の参加するイベントステージ付近で奥様と連れの方がお待ちです。』
「パリスー!どこー?」

スピーカーから妻が自分を探す声がして、路地裏から一歩出た途端、道の向こうに陽射しのような髪色が見えた。


「パリス発見ー!」

「大典太光世様もご一緒です!」


妻とともに走ってくる少年がいる。

ん?大典太光世…先程のアナウンスで呼び出されていたような…。

光世といえば、自分の隣にいた男を見ると
「前田…!」とおそらく妻とともに掛けてくる少年のことを見ていた。



追記へ続く




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