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●薄い告白●大我×テツヤ


世の中には物好きもいるもんだ。

『好きです…』

何で俺なんだろうか?
まぁ悪い気はしないけど。

「悪い。他にいるから」

そう言うと、そいつは泣いて走り去った。
俺はガシガシと頭を掻く。

「火神君モテますね」
「!?」

慣れたと思っていた存在に気付かず、驚いて振り返る。
地味に近い距離に、声の主はいた。

「なんだお前。立ち聞きとか趣味悪ぃな…」
「すみません。でも、僕の方が先に居ました」

じっ…と大きめの瞳が見上げてくる。
俺はふいっと顔を逸らす。

「ぁー、それは悪かったな」
「いえ」

会話は終了したものの、黒子はまだコッチを見ている。
何か凄い居心地悪い。

「…何か用か?」
「いえ」
「そうか…」
「はい」

また会話が終了して、やけに気まずい沈黙が流れる。
やっぱり居心地悪い。
告白シーンを黒子に見られたからなんだろうか?

「火神君は女性に興味がありますか?」

いきなり何を言い出すんだコイツは。

「まぁ…それなりに?」
「そうですか」
「あぁ」
「………」

いや、だから、何なの?コレ。
会話終了が早すぎんだろ…。
そして再び気まずい沈黙が流れる。
あ。
俺が教室に戻れば良いのか…。

「んじゃ俺、教室戻るわ」

一応黒子に一言いって、教室に戻るため体を反転させる。

「待ってください!」
「ぅおっ!?」

足を一歩踏み出そうとした瞬間に、黒子に腕を引っ張られる。
力が強かった訳じゃないけど、突然だったから少し体勢を崩してしまう。

「あぶねぇな…何だよ?」
「ちょっと、火神君に聞きたいことが…」

黒子は俯いてて表情が見えない。
俺は黒子の方に向き直る。

「まだ何かあんのか?」

そう話し掛けると、黒子は俺から手を離す。
いまだに顔は挙がらない。

「3つほど…」
「ぇ、そんなに?」
「はい」

ちょっとって言えばちょっとだけど、黒子で考えると3つは多いと思う。
俺にそこまで興味も無いだろうし…。
………何か自分で思って若干傷付いた。

「火神君、男に興味ありますか?」
「は?」

本当にコイツはどうしたんだろうか?

「急に何だよお前…」
「何も聞かずに答えてください」

黒子が顔を挙げ、真剣な顔で俺を見上げる。
死んでいるようで、どこか気の強い黒子の瞳が、真っ直ぐに俺を見据える。
この瞳には何かたじろいでしまう。

「何も聞かずにって…」
「どうなんですか?」
「どうもこうも、変な意味での興味はないぜ?」

今まで、男が好きとか可愛いとか思ったことなんて無い。
男とはどうなんだろう…?
なんて思ったことも無い。

「そうですか…」
「アレ、傷付いた…?」
「いいえ」

黒子のオーラが少し重くなった気がする。
表情にも影が出来た気が……。
気のせいにしておこう。

「じゃあ、僕は男に見えますか?」
「はい?」

また予期せぬ質問がきた。
何て今更な質問だよ。

「そりゃ…お前は男だろ」
「火神君から見ても完璧に男ですか?」

完璧と言われるとそんな気はしてこない。

「100%かって聞かれたら、そうじゃないんじゃないか?」
「どういう事ですか?」
「誰しもやっぱり異性っぽい所があるんじゃねーの?」

俺だって料理出来るし…。
ホラー系にはビビるし…ι

「なるほど」
「何?女にでも間違われたんか?」
「いえ。別に」
「あぁ…そうι」

一体何が目的でこんな質問をするんだろうか…。
まったく解らない。
普段から黒子の考えてることは解らないのに、今は倍解らない。

「最後です」
「質問?」
「はい」

本トに3つだったのか…。

「火神君は、僕のコト好きですか?」
「は?!」

今日一番の驚き。
さっき告白された事なんて頭の中から吹っ飛んでいた。
何よりも、黒子の頬が少し赤らんでいる事に驚いた。
コイツもこんな表情するんだな…。
ある意味失礼極まりない。

「ど、どうゆう意味で?」
「あっち系です」
「どっち系!?」

黒子はシリアス顔で言うが、まったくもって理解不能だ。
正直、黒子のコトはあんま深く考えた事はない。
大切なチームメイトであり、何気に仲の良い友達だとは思っている。
それ以上は想像した事がない。

「火神君が思うように答えてください」
「えー…。俺が思うように?」
「はい」

一瞬だけ、黒子の瞳が不安に揺れた気がした。
一体どう答えてほしいんだ…。

「んー……。じゃあ、好き…?」
「す、き…………」
「…???」

黒子は瞳を見開いて固まってしまった。
俺、何かまずいこと言ったかな…。
黒子の反応が全然解らない。

「ぼ……、ス………す」

黒子が何かを呟いた…気がする…。
影が薄いから、声も聞こえずらいんだろうか?

「何か言った?」
「いえ。特には」
「あぁ…そう」

即答されて、俺は押し黙る。
意外とハッキリ聞こえるから、やっぱりさっきのは空耳か…。

「教室。戻りましょうか」
「あ?ぁー、だな」

黒子が少しだけ笑う。
俺は、さっきの空耳を意識してしまう。
やばいな。
黒子の顔がまともに見れない。

「火神君」
「あ?」
「今日の部活も頑張りましょうね」
「…ふっ。当たり前だろ!」

黒子の頭をポンと叩く。

『僕も、スキ…です』

そう聞こえた空耳に俺は照れくさくなって、黒子の少し前を歩いた…。










end.
more..!
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