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14/05/08 03:33:(0):
▼その他:
ノリの良さが命取り モチタツ


「お前のそーいう、ノリのいいとこ嫌いじゃないよ」

たまたま出会った持田とたまたま話が合って、持田が軽いジョークにウケたことで俺の口から漏れた一言。その一言で持田の表情ががらりと、試合中のそれに様変わりする。瞬間、背中をぞくりと駆け抜けたものが、それこそ試合中に感じる武者震いとか、そんなものであったならどれだけよかっただろう。
椿が『怖い』と表する笑顔で持田がじりじりと距離をつめてくる。

「へえ……じゃあ達海さん俺とつき合ってよ」

「……は?」

テーブルを挟み向き合って椅子に掛けているため、簡単には逃げられそうにない。身を乗り出す持田に反して顔を遠ざける俺。

「えっと……どこへ?」

「ぶっは!達海さんベタすぎ!」

ウケるわー、と腹を抱える持田。

「なに、本気なわけ?」

「俺のこーいうノリが好きなんでしょ?だったら達海さんもノリで」

うんって言いなよ。
有無を言わさないような笑みでそんなことを宣う持田に、感情の揺れは見られなかった。決して押し切られたというわけではないけれど。

「んーと……じゃあ、ヨロシク?」

俺達は『コイビト同士』、になった。



ノリだけで始まった俺達の『コイビト』生活だが、存外濃密な日々を過ごしている、と思う。
どちらもいい歳した大人だし、キスの相手は本当に好きな人じゃなきゃいけないとは言わない。それほど抵抗感もなくブチュッとかましてやった。持田の驚いたような顔は少し面白かったが、直後の笑みは椿が言うように、少し怖いなと思った。多分、試合中のそれとはまた違った表情なのだろうけど。
二度目のキスは持田からで、上から押さえつけるような形で唇が触れ、こじ開けられた隙間からぬるりと舌が入り込んできた。初めてキスをしたその日に、これまた強烈なディープキスをかまされた。何故か悔しいという気持ちを抱きながら、持田の舌に翻弄されるしかなかった。

それから数日後に初めてセックスをした。俺が女役だったのはちょっと不満があったが、持田は少しも躊躇わず俺をベッドにひっくり返した。その癖前戯はねちっこさすら感じられるし、愛撫の手はお前誰だよというほどに優しく繊細な動きをしていた。持田は足フェチなのかもしれない。負担や怪我を気にしているだけとは思えないほど、ひたすら足を撫でていた。

ただただ乱暴に扱われるような、そんな日々を想像していなかったとは言い切れない。だがそれも想像の域を出ない内に霧散して消えていく。それほどまでに『恋人』としての持田は、理想的とも言える男だった。

「達海さん何か欲しいもんある?」

「アイス」

「ぶふっ、今食ってんじゃん!」

身体を重ねたり、誰にも邪魔されずのんびり過ごしたい時なんかは持田の自宅へ赴くが、基本的には持田が俺の住まうクラブハウスにやってくることの方が多かった。今日もいつもと同じように、1日練を終え、日が暮れた頃合いに持田は現れた。
ソーダ味の棒アイスにかじり付きながらアイスを所望する。何て至福だ。別に本当に欲しいわけではないけれど。これ以上食ったら流石に腹こわす。
まじウケるー!と笑い転げる持田を横目に、俺は試合のDVDのおさらいを再開した。

その翌日だった。
持田がアイスを持参してやってきたのは。

有名なコンビニの袋に入った大量のアイスに、俺は瞬きをひとつ。
視線を持田に向けて、またもや瞬きひとつ。

「なにこれ」

「達海さんアイス欲しいって言ったじゃん」

好んで食べる棒アイスに、半分に割って分けっこ出来るチューブのアイス。このあたりは比較的安価で求めやすいのでよく食べているから、持田にもわかりやすいと思われたのだろう。
だが小さなカップに入っている、よく自分へのご褒美なんかで買うあのお高めアイスが、いち、にい、さん……

「……ハーゲンがいっぱい……」

「頑張ってる達海さんに、ごほーび」

値段に釣られたとかそんなんじゃないけれど、この小さなカップ数個分の持田の好意がじわりと胸に染みた。



ノリだけで始まったこの関係だが、それでも収まるところへ収まる時期は来るらしい。
要は、マンネリとか倦怠期とか、そういうやつだった。
あまり日を空けず来ていた持田も、最近では近くを通ったからと、何かのついでに寄るくらいしか無くなっていた。
携帯を所持しない俺に直接連絡をとることは出来ないので、寝る前に声が聞きたいと思っても、会いに行くかクラブハウスの固定電話を使うしかない。今までは毎日のように顔を合わせていたし、それ以前にもこんな環境を不便に思うことはなかったのに。

「何で来ないんだよ……」

持田と顔を合わせなくなって、ひと月が経とうとしていた。



久しぶりに見た『恋人』の顔は少しやつれたように見える。だけどそれが愛おしいと思えるのだから、相当参っているとしか思えなかった。

「達海さん久しぶりー」

「持田……」

まるで何でいるんだと言わんばかりのポカンとした表情に、何日ぶりかぐらいに腹筋が震えるのを感じた。

「達海さん大丈夫?ここウチのクラブハウス近くだけど」

こちらからしてみれば達海さんの方こそ何でここにって感じだけど、恐らく無意識で足を運んでいたのだろう。自意識過剰とも言い切れないほどには、達海さんの、そして俺自身の心は出会った当初より近いものになっていた。

「俺に会いたくてたまらなかった?」

ノリだけで始まった俺達の間に、好きだとか愛してるといった言葉は皆無だった。確信に迫るギリギリのところの、それでもこれほどまでに直接的な言葉を掛けたことなんて、一度としてない。

直接言葉を交わしたのは付き合うことになったその日で、顔を合わせたのはプレシーズンマッチの時。けれど俺はそれよりも前から達海さんに興味を持っていた。達海さんは多分俺のことなんか知らなかっただろうけど。
初めはただ、面白いゲームをする人だくらいの認識だった。監督と選手という違いはあれど、一体どんなプレイを魅せてくれるのか、そんな純粋な気持ちしか抱いていなかったはずだ。
それが一気に手の届く距離の人になって、実際に会話してみて、ただの興味だけで終わるのが惜しくなった。
ノリに乗って交際を申し込めば、ヨロシクと返ってくる、それだけでも面白かった。

それが今ではどうだろう。いつか大量に買い漁ったはいいものの、冷凍庫に入り切らなくてドロドロに溶けてしまったあのアイスのように、俺はこの人にドロドロに溶かされてしまっている。

「……持田は会いたくなかったわけ?」

唇を尖らせ拗ねたような声を出す達海さんに、心底絆されている。

「何で質問で返すかなー」

会いたかったに、決まっている。
だけど俺達の関係はノリだけで始まったものだ。終わり方だって軽い調子で締めるべきなのに、今の俺にはそんな非情なことは出来そうにない。
かと言って達海さんに軽く終わらされるのも堪えられなくて、達海さんの住処に足を運ぶことが徐々に減っていった。

俺は臆病だった。

「俺は、会いたかったよ」

ポツリとこぼす声に、俺はハッとする。

「持田、会いたかったよ、俺、持田のこと好きだもん」

微かに震える声と、ぎこちない笑み。達海さんのらしくない様子に、気づけば俺はその痩身を抱きしめていた。

「ごめん、達海さん、ごめんね」

「持田が、だんだん遠ざかってくの、わかってた、のに」

「達海さん……」

「ノリだけだって、終わりもアッサリだって、思ったら」

震える肩をギュッと引き寄せて、いっそきついくらいに抱きしめる。これ以上言葉を繋げさせるのは酷だ。

俺は臆病だ。だけど達海さんも臆病で、俺達はお互い離れることで、この関係を終わらせないようにしていた。

「ねえ達海さん、ノリだけの関係は、終わりにしない?」

この関係は、始めた方がけじめをつけなくてはならない。びくりと揺れる肩を安心させるように撫でる。

「俺と、本気のお付き合いをしませんか?」

ノリだけじゃない、お互いを愛しむ関係を。

「……うん、よろしくお願いします」

俺達は晴れて、本当の『恋人同士』になった。










……っていうのを漫画でみたいんだよ私はーーーーー!!!!!
けど描く気力が湧くかわからないし、そもそも画力が追いつくかが不明で、でも放置するのがいやだから文章におこしたという、……要は貧乏性なんですハイ……。誰か描いて読ませてくんねーかな……←
こんなあまいモチタツも好きですが、今非常にアツいのは30巻のタッツミーの所業を知った持田様が淫猥な行為でもってタッツミーの弱いところを苛め抜くモチタツです!!!!!ちょっと炎ミラを彷彿とさせるようなそんな感じで!!!!!持田様素敵!!!!!抱いて!!!!!タッツミーを!!!!!

 

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