13/08/11 01:08:(0):
▼稲妻・GO・戦機:
言霊 ハルキ視点

呼び止める、訳ではなく、ただ確認したというような、その声に聞き覚えがあった。
最近小隊に入った少年の、最早ライバルと言ってもいいだろう、この学園でよく名前の知られた、自分からして見ればいい思い出のない相手だった。

「……出雲ハルキ」

ただ名前を言ってみた、というそれだけの響き。
しかし反射的に肩を震わせてしまう、そんな声。
この男に、名前を呼ばれる。……いい気持ちは、しない。

「……一体、ロシウスのお前が、俺に何の用だと言うんだ」

みっともないとは思うものの、この場から逃げたいという身体は留めることが出来ない。
特に用があった訳でもないのだろう、しかし視線が逸らされることはなく、感情の読めない落ち着いた色の瞳はジッとこちらを見つめていた。

「ジェノックの、第一小隊、か」

「っ、それが、何だ」

第一小隊は、転入生が来る以前にも、この男と出くわしている。……実際には、彼の操るLBXとだが。
……ああいやだ、これ以上、

「……いや、お前が俺に憎しみの声をあげてもおかしくはないと思ってな」

「……っ!!きさまっ……は!」

一体何だと言うのだ!ただ下校する途中だったところ、たまたま見かけただけだろうに、何故あの時のことを……!
怒りに任せて怒鳴り散らしてやろうかとも思った。だが

「出雲ハルキ」

「っ、」

また、その声で。
今度は何かしらの感情の含まれたような音に、ただ口を閉ざすしかない。

「瀬名アラタは、俺がロストさせる」

「なっ……!?」


また……また失うというのか、俺は、こいつによって。

「それまで」

それまで……どうしろというのだ。

「……いや、せいぜいお前のミスで仲間を失わない ようにしろ」

っひ、と喉が引きつるような思いに苛まれる。

「……出雲ハルキ」

「……っ、ぐ」

「……せいぜい、隊員を守ってやれ」

何が言いたいのだ、この男は。そんな、そんな哀れむような、慈しむような瞳で。求めるような声で。
やめてくれ。そんな声で呼ばれるなんて……ただ恐怖や憎しみの対象でしかないはずの男から、俺はそれ以外の何かを見出しそうになって、それが嫌でただ溢れそうなものを堪える為に唇を強く噛み締めた。





名前には強い力があって、本当の名を知られると言霊として扱われ使役される、と。そんな感じで名前を呼ばれる度立ち尽くすような、そんなハルキきゅんが書きたかっただけのSSでした……。
勿論ムラハルにこれからなっていくとして、ただ立ち尽くすだけではない、締め付けられるような、引き寄せられるような、ハルキ視点ではそんなところを出したいな、と思ってはいました←
しょっぱつにムラハルを書いたわけですが、ハルキ関係ではリクハルが本命な渓莱っしたぁ!リクハルよもっと増えろ!!

 

  
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