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in-side

心にざあざあと雨が降り続く。
耳障りなその雨音を、聞こえぬよう耳をいくら塞いだとしても無駄なことだった。

悲しんでいる―――自身の感情が、今日も晴れ間ない空を造り出す。




《in-side》
ミラの消失と共に、ジュードたちはバラバラになってしまった。
筆頭に上がるのはアルヴィンだが、彼は心の内に秘めていただけなのかもしれない。
誰にも気を許さず、大切な母の願いを叶えるためだけに、彼の人生は築かれてきたのだ。
でも、彼の母はもう亡くなってしまった。
ジュードはミラも他の仲間も集まり、元通りだという今の状況に違和感を拭えなかった。
(アルヴィンは…)
不信ではなく、不安。
ふと姿を消す彼を、つい探してしまう。
今もまた、食後の談笑の中を抜け出して、宿の入口あたりで彼を見つけた。
柱にもたれかかり、ぼうっと星を眺めている。
「よっ、優等生」
かと思えば、こちらの気配に気づいていたらしく、にこやかに笑いかけてきた。
「まだ俺が裏切るか心配?」
「…その心配はしてないよ」
裏切りという言葉に自虐の意味を感じとりながら、気づかないふりをする。
アルヴィンの向かいの柱にもたれ掛かり、ふぅと息を吐く。
「何だよ、えらくお疲れじゃない」
「そりゃあね。レイアのめちゃくちゃなご飯リクエストを受けてみてよ。すぐサイダーを入れようとするんだから」
じゃんけんで勝った人がジュードの料理をリクエストできるというバトルがあったのはさておき、死闘があったのは遠目で見ていた。
「ははっ。災難だったな」
「だからアルヴィンが助けてくれるの、待ってたんだよ」
「あ…」
軽い口調を止めさせるために、ジュードは真剣にアルヴィンを見詰めた。
「…わかってる」
何がと尋ねる必要がないから口をつぐむ。
眉をしかめる彼を追いつめたいわけではない。
だが、お節介だろうと、人の領域に踏み込もうと、そこで終わるのが嫌だった。
(どうして気になるのか…自棄になるんじゃって心配だけじゃない)
「アルヴィン。僕は嫌だよ。このまま距離をとったままなんて」
「…ジュード」
(元通りになんてならない。過去なんてどうにもできないんだから)
頭を撫でようと伸ばした手をジュードは払いのける。
「…ッ!…遠いよ…!」
ジュードの知らぬ内に頬を伝う雫が地面で弾けた。
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