この学校、シリーズ化されとって、全5作品さまざまな学校の教師と生徒の姿が描かれとるんやけど、2作目になる本作は高等養護学校が舞台となっとります。

本来は知力に障害のある生徒を預かって社会適応力を学ばせるための学校なんやろけど、作品ではかなり自由な校風のなかで、のびのびと育っていく生徒たちが描かれとります。

離婚して普通の高校をやめ、現実に絶望を感じながらも教育に希望を求めて赴任してくる熱い教師(永瀬正敏)、その若手教師を優しく支えるベテラン教師(西田敏行)、そして、純粋で、純粋で、ほんまに穢れのないまっさらな生徒たち(吉岡秀隆、神戸浩)。

そんな演技派キャストに山田監督の素晴らしい情熱と感性が相俟って、とても心暖まる感動作品に仕上がっとります。

………( ̄ー ゚̄)


こう書くと、単に教育理想を映像化したような……いわゆるキレイな話やと思われるでしょうが、山田作品の深さはそんなレベルちゃいますわ。

なかなか社会に受け入れて貰えん生徒たちのために、連日卒業後の就労先を探して頭を下げて回る先生。

せやけど世間はそんな甘ないわ。

この辺もシビアに描かれとる。

して、やっと見つけてきたクリーニング工場の仕事やのに、働き始めた吉岡秀隆は仕事に付いていけず逃げだしてまうねん。


してな、なんとか連れ戻した吉岡秀隆と一緒に西田敏行が工場長に頭下げるシーン、そのシーンでな、吉岡秀隆がピカイチの演技で泣きながらこんなん言うんよ。

ユウヤはいい。

ユウヤは、自分のことがバカだって分からないくらいバカだから。

オレは自分がバカだって分かってる。

だからユウヤより不幸だ。



もお…このシーンあかんわあ。

ユウヤゆうんは、吉岡秀隆演じるタカシのクラスメートで、重度の知的障害抱えとんねや。

で、トイレとか食事とか、いつもタカシが面倒みとるの。

オレな、その吉岡秀隆の台詞はものすご響くもんあって、劣等感に押し潰される痛みがビンビンきてさ、すごい切ななったわ。




で、こんな書くと、今度はなんの救いもないふうに感じるやろけど、後半のユウヤとタカシの脱走劇、そこからは様々な人に助けられ、安室奈美恵のコンサートに行く夢を果たし、最後には気球に乗って北海道の白銀の絶景を空から眺める2人の少年を通して、ほんまに幸福な瞬間の人間の輝きが眩い光を放っとります。



エンディングの卒業式では、これから生徒たちが直面せなならん厳しい現実を思い涙を流す先生たち。

そんななか、学校を通してやや成長した永瀬正敏が、自分はあの生徒たちに何を教えてやれたんだろう?
そう問いかけるんやけど、これは山田監督が観とるオレらに問いかけとんねやと思います。

その答えは、映画の中にすべて描かれとります。

人を育てるとは、教えることではなく、ただ受け入れ、ただ全力で支えること。

山田監督が言うてはるのは、そおゆうことやと思います。


誰も、ただ人に与えられるほど完璧な人間はおらんのです。

お互いが支え合って、お互いが育っていくもんなんやろね。