話題:二次創作小説
クリスマスネタでロイアイです!
久しぶりに書いたら楽しかったー!やっぱり大好きです∩^ω^∩
ちょっと、パラレルではないですがオリジナルの入った未来設定です。
あとがきはあとで他の記事を繋ぎます。予想以上に長くなった上に二次創作なので、追記からどうぞー。
「…………はぁ……」
がらんと空いた室内。自分の溜め息だけが、やけに大きく聞こえる。
向かいの掛け時計は定時をとっくに過ぎた時刻を冷酷にも示して動き続けていた。
不意に弾むような硬い音が軽快に鳴る。
「……ありゃ、少将。まだやってたんスか」
「丁度良かった。ハボック、お前も手伝え!」
「嫌ですよ。オレ仕事とっくに上がってんスから」
ハボックは、いつもの様に飄々と前を横切って、部屋のサイドに置かれた棚を漁る。薄く纏められた書類の束だ。
「お前には上司の手助けをしてやろうとかいう気はないのか…」
「今日は自分の予定の方が大事なもんで。これから駅まで行ってデー……あーそうか」
そこまで言って、はたと言葉を止める。若干声のトーンが落ちた。
「そうか。少将は、家でホークアイ大尉が待ってんでしたね。」
「そうだ。だから手伝え」
「お互い様っスよー」
ハボックはひらひらと右手を振りながら。そして、バタンと扉の向こうへと消えていった。
「……この……」
文句はひとりごととなって、寂しく響いた。
お互い様、とは、フラれようが幸せに過ごそうが自分には関係ない、ということか?
そうだ、家では愛する妻―――リザが、私の帰りを待っているのだ。
定時には帰って2人で出かけよう、と言っていた。息子のリィフはハヤテ号に任せて。
今日は―――クリスマス・イヴだから。
「……電話しておくか」
言って、電話の受話器をとってやめた。……いや、それも声を聞くだけ空しくなるだけか……。
最近ただでさえ遅くてゆっくり会えないというのに、非情なものだ。再び溜め息をつきながら、ペンを走らせる手を再開した。
銀時計を見ると、いつの間にか深夜11時前になっていた。
外はもう、風も空も知らん顔をするかのように暗く冷たい。
急いではいるのだが、もう眠っているのだろうと思うと自然と次第に足が緩んでしまう。結局マンションに着いたのは11時半を回る頃だった。
コートのポケットにある鍵を探りながら、どうしたものかと思いを巡らせる。
「……ロイさん?」
「……え」
まさかと思って横を振り向くと、愛する彼女の姿があった。
「リザ?」
リザは軍服にコートを羽織った姿で、仕事場にいるときと変わりない。違うと言えば、少し息を切らせてバッグを持っているだけだ。
彼女も、不思議そうに私を見ていた。
「今日は定時で上がると言っていなかった?」
「いや、……言ったが。実はその、なかなか終わらなくてな……君こそリィフはどうしたんだ?」
「リィフは、レベッカに保育園に迎えに行ってもらったから大丈夫。もう寝てるわ」
言って、ばつが悪そうにどこか恥ずかしそうに続ける。
「……私も、今日は早く上がれなくて」
「…は、はははははっ」
「な、何がおかしいんですか!」
「いや悪い。……じゃあ、これで心おきなく楽しめる訳だ」
「……はい?」
怪訝そうな彼女をよそに、私は彼女の華奢な手をとる。そしてひいて、Uターン。
「え?……ロイさん?」
「ロイ、だろう?」
「……そうだった。ロイ」
もう2年は経つのに、気を抜くと以前の口調になってしまうのは彼女の悪い癖だ。もっとも今日はそれでも構わないのだが、きちんと直してくる彼女がかわいくて。
「約束だろう?忘れたのか?」
「……今から?」
「何を言う。これからの時間が本番じゃないか」
ついさっきまで諦めかけていた私が言うべき台詞でもないが、彼女の表情がふっと緩んだ。
それを見計らって歩き出す。
「こうやって手を繋いでいると付き合っていた頃みたいだと思わないか、リザ」
「……何を。繋いでなんていなかったでしょう」
「つれないな、気分の問題だよ。……久しぶりに、楽しいデートにしてみせるよ」
彼女の右手の甲に軽く口づけると、リザは、表情はいつも通り崩さなかったが、少しだけ嬉しそうな色を浮かべた。
end.
→あとがき