私には好意を持っている女性がいた。私と同じ職場についていて念能力もそこそこ。余計な事は喋らない秘密主義。だが微笑むとまるで花が咲いたかのように綺麗で、そこがまた私の心を惹き付けてやまなかったのだと私は思う。
ー…だが、そんな女性が
「ねえ、クラピカはさあ…」
「ん?なんだ?」
彼女は私の瞳をじっとのぞきこむ。私は己の心拍数が上がるのを感じた。だが平静を装う。黒のコンタクトをしていてこれほど良かったと思った時はなかった。何故なら今の私の瞳は怒りや復讐心ではなく別の理由であかく色付いているだろうから。
ー…私が好意をよせるそんな女性から
「好きな人とかいるの?」
この質問はないだろう…!
急激に跳ね上がったであろう私の心拍数を見かねてか、私の左隣に居るセンリツが微笑ましい、と笑ったのがわかった。
私の右隣に居る彼女が口を開く。
「んーネオンちゃんとかと喋った時にそんな話になったんだけどさー」
彼女が私から視線をはなし監視する姿勢に戻った。正直助かったと私は思った。
「クラピカはどうなのかなって思って。あ、センリツは?」
センリツが微笑みながら言う。
「ざんねんだけれど、今は仕事一筋よ」
「そっかぁ」
私は必死に平常を装い口から言葉を出した。
「そっその…おっ…、お前の方はどうなのだ?」
彼女の視線が私に戻る。
「えっ私?」
「ああ…」
今が夕暮れで良かったと私は心底思った。おそらく私の頬は紅く色付いていることだろう。
「そんな人がいたらこの仕事とっくに辞めてるよあはは」
彼女は笑いながら監視へと戻った。私は正直へこんだ。涙が出てもおかしくないだろう。
「彼女の心音、ウソをついていなかったわよ」
帰り際にセンリツがぼそりと彼女に聞こえないように私に言った。
「クラピカファイト!」
「……あ、ああ…」
おいうちをかけないでくれお願いだから。
…自室に戻ったら少し泣こうと私は決意した。