外国のお話、なんだけど。
本にあったから、おおまかに紹介するね?
ある街の夫妻は、安いアパートに住んでいました。
その生活は、昔は裕福だったけれど、国の景気が傾いてからは貧乏に。
1日1日をやっと過ごせるほどでした。
しかし女はここ数ヶ月、少しの無駄も惜しんで貯めました。
今日、クリスマスのために。
愛する夫に、すばらしい贈り物をするために。
しかし、貯まったのは本当にわずか。
それぐらい、日々の生活はギリギリだったのです。
それはそうと、夫妻には何より自慢にしている品物がありました。
1つは、男が持っている銀の時計で、祖父の代から伝わってきたものです。
もう1つは、女のその長く美しい髪でした。
女は意を決しました。
長くて栗色の滝のように波立ちきらめく、この髪を売ろうと。
一瞬ひるんだように立ち尽くせば、痛んだ赤絨毯の上にぽたりと涙がこぼれました。
けれど手で拭い、階段を下り、街へと出ていったのです。
短く男の子みたいな髪型になった女ですが、晴れ晴れした顔で店をのぞいていました。
そして見つけました。夫の自慢の時計に似合う、銀の鎖を。
これで立派な時計を古びた紐に吊らさせなくてすむ。
女は売った髪で作ったお金をわたし、家へと帰りました。
けれど不安にかられました。
こんな髪になっても、好きでいてくれるのか…。
男はいつも通りの時間に階段を上がっていました。
しかし部屋に入るなり、男はぴたりと動きませんでした。
目は女に釘付けで、謎めいた表情です。ただ女の顔を見つめるばかりでした。
女は泣きそうになりました。
けれど夫がなぜそんな顔をするのか、差し出されたモノをみて分かりました。
男の手には、消え失せた長く美しい髪にさぞ似合うだろう、宝石の散りばめられた、くしがあったのです。
女は涙を流したものの、胸に抱きしめ、ほほえんでみせました。
「ありがとう…。髪は切って売ったのよ。でもすぐのびるわ、それよりこれを見て!」
そして女は、髪を代償に買った、銀の鎖を差し出しました。
男はこれを見、なぜ妻が髪を無くしたのか合点がいったような顔すれば、鎖を受け取らずにソファに座りこみ、ほほえんだのです。
「そうか…キミもだったんだね」
男のズボンには、下げらてるはずの銀時計はありませんでした。
お互いに大切な物を売ってしまい、もらった物を使うのは当分先でしょうが、これ以上ない贈り物は、きっとないことでしょう。