-竜胆-
秋も深まり吹く風は冷たい
舞い散る枯葉は踊っているようだ
温かさを求めるように体が震えたが、気にしていないとでも言うように少女は歩みを進めた
建物の中に一歩踏み込めば、季節など感じさせない程度に空調が効いていて、着ていたコートをふわりと脱ぐと腕に掛けた
彼女は腰まである黒髪をサラサラと左右に揺らしながら歩く
重さを感じさせないふわふわとした歩調は、彼女の周りだけ違う空気が流れているように見せた
真っ白な床、真っ白な壁、真っ白な天井
異様な程に白い空間に、黒い少女
肌の色は透き通るように白い
対比するような黒いワンピース、黒いパンプスと黒いチョーカーが、彼女の印象を黒に見せるのだ
美しい少女だった、だが生きてる人間の温かさが感じられない
いや、生きてはいる。確かに彼女は人間だ
だが、その美しさと出で立ちは死神のようだ、と周りに思わせるには充分だった
この場所で見るには余りにも、縁起が悪い
薄っすらと口元に笑みをたたえた彼女は
何を思うのか
或る部屋の中、冷たくなった女の手を握り、許しを乞うような……いや、罰されたいと願っているかのような男の姿があった
「…っ!何で…何でお前がこんな目に…俺がっ…俺が…あの時離れなければっ…」
愛する者を失った悲しみに、自らを責めて泣いていた男はふわりと室内に入り込んできた黒に気がつかない
「お兄ちゃん……」
少女は先程の笑みを隠し、沈痛な面持ちで男に近付いた
声をかけられて、はじめてその存在に気が付いた男はビクリと肩を跳ねさせた
「お前……」
「お兄ちゃん……」
再び同じように呟いた少女は、手に持った紫色の花束を男に渡した
「……見舞いの花は……」
「違う……これは、お兄ちゃんに」
苦々しげに呟き首を振る男から目を逸らすことなく少女は言った
俺に……とは、どう言うことかと動転した頭で考え、やはりわからないと首を振る
「竜胆はね、あなたの悲しみに寄り添うって意味とか……正義って意味があるの」
だから、お兄ちゃんに
と呟き、押し付けるように花束を渡した少女は踵を返した
「邪魔して……ごめんね」
来た時のようにふわりと出て行く少女に、男は花束を握り締め……泣いた
ふわふわと来た道を戻る少女の口元にはやはり笑みが浮かんでいた
「大好きだよ、お兄ちゃん」
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竜胆の花言葉
悲しんでいる時のあなたが好き
あなたの悲しみに寄りそう
誠実
正義
貞節
淋しい愛情
(^ω^)自身の語録の少なさにびっくりしたお
すごい入り込んで読んじゃったよ〜!
やさしい性格があらわれてる感じで素敵だよ〜
あ、ありがとう*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
漢字だとものすごく可愛くないよね笑
ものすごく苦いんだって、熊の胆より苦いから竜胆らしい。たしか←調べた