スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

勝算(花井→三橋←阿部)

「好き、って言ってみれば?」

阿部がいつものように、本人には告げることの出来ない想いを花井に向けて延々と語ったあとのことだった。
「は…?」
花井の言葉が理解出来ず、阿部は口を開けた間抜けな顔のまま固まってしまう。

「だから三橋に。好きだ、って。言うんだよ」
今度は強調するように句切りながら言う。

花井は実はバカだったんだろうか、と阿部は一瞬本気で考えてしまう。
「ムリに決まってんだろ…。オレ、男だし…相手は三橋だぞ?鈍そうじゃん、アイツ」

仮にちゃんと伝わったとして、もし拒否られたらどうするんだ。
立ち直れないぞ、オレは。
告って友達でいられなくなるよりは、告らずに友達でいるほうがよっぽどマシだ。

「野球でならまだしも、こんなことで勝算のない賭をする気はねえよ」
ふてくされたようにそっぽを向いてしまった阿部にチラリと視線をやった花井は、フーンと小さく呟く。

意味ありげな視線を向ける花井のことはお構いなしに、今まで話題にのぼっていた人物を廊下に見つけると、阿部は即座に席を立った。

花井は、廊下で阿部に捕まってあーだこーだと言われている三橋を見ながら呟く。





「オレは勝算の低い賭にでもチャレンジしてみっかな」

ぬくもり(和ミハ未満)

クリスマスまでまだ二週間ほどあるけれど、早くも街はクリスマス用のイルミネーションで輝き始めていた。
三橋がよく立ち寄る店にも隅に小さめのツリーが置かれ、店内でかけられている曲はポピュラーソングからクリスマスソングに変わっていた。
いつもと同じ席に座り、注文をとってくれる店員にココアだけを頼む。
今日も店内には三橋を除いて数名の客しかいない。

元々は桐青の野球部に所属する河合に連れてきてもらい知った店だった。
初戦で勝ったあと、対戦相手校であった桐青のキャプテンの河合から挨拶をされ、そこからメールをやり取りする仲になった。
自分より二つ年上の河合と話していると気持ちが落ち着き、ほっとするような安心感がある。向こうも弟のように甘やかしてくれるので、たまに会うことが出来る日はすごく浮かれていた。
二人で会うときはいつもこの店を利用していた。それぞれの学校から少し距離があり、少なくとも野球部員は訪れないような雰囲気の店。
河合同様に落ち着いた雰囲気を醸し出す店を一度で気に入り、元々常連であった河合に続いて三橋も利用するようになった。
初めてここを利用したときから、河合はいつもコーヒーを注文していた。ミルクも砂糖も入れずに飲む河合を見ながら、三橋はずっと憧れていたのだ。自分とは違って大人のような河合に。
だが、一度だけ真似をしてコーヒーを頼んだときに一口しか飲めず、結局そのコーヒーは河合が二杯目として飲み、三橋はココアを注文し直したという経験がある。それ以来三橋は無理してコーヒーを注文せず、ココアを頼むようになった。

お待たせしました、と店員が持ってきてくれたココアのカップを両手で持って、ゆっくりと一口目を味わう。
いつもならば話し相手になってくれる河合がいるが、最近は三橋一人だ。
高校三年生である河合は12月に入った今、受験勉強の詰めに入らなければならなかった。三橋のためを思ってか前と変わらずメールを送ってくれるが、三橋からメールを送ることはなくなった。自分が送るメールで受験勉強の邪魔をしてしまうことだけは耐えられなかった。
そんなわけで、今日も三橋は一人でココアを飲む。

クリスマスも会えないんだろうなあ、とぼんやり考え、はっとした。
自分たちは付き合っているわけではないのだ。三橋も河合も男だから、付き合うとかそんな関係になることはありえない。
ただの先輩後輩…そういったレベルなのだ。
(だからクリスマスも、会ったりしない)
三橋が聞いたことはないが、河合には彼女だっているかもしれない。
(和さん、は 彼女と過ごすの、かな)
自分で考え始めたことなのにひどく気分が落ち込んだ。
三橋はそんな鬱々とした気持ちを晴らすように、ゴクゴクとココアを飲む。
だけど先ほど運ばれてきたココアなのだからまだ熱いのは当然である。
喉に焼けそうな痛みが走ったあと、じわじわと舌先も痛くなる。
生理的な涙が浮かび視界がボヤケると、先ほどまでの鬱々とした気持ちが再び沸き上がり、自分の目尻に滲む涙の理由が分からなくなる。
堪えきれない涙が頬の緩やかなカーブを下り、ぱたりと小さな音を立ててテーブルの上に落ちた。
三橋は慌てて手の甲で、頬に残る涙のあとを拭うが、一度崩壊してしまった涙腺はなかなか回復しない。
後から後から流れる涙を周りの客に悟られまいと俯く。
すると、俯いた三橋の視界の端に薄いブルーのハンカチが映った。
なにごとかと小さく顔を上げると、そこには自分の思考を今まで埋めていた人物がいた。
「和、さ…」
河合は、いつもの優しい微笑みじゃなく、少し眉を下げて心配そうな表情で三橋を見つめていた。
「どうした?」
三橋がハンカチを受け取らないので、河合自らが三橋の目元に手を伸ばしてハンカチで涙を拭く。
「う、え…なん、 で」
動揺からか、三橋は普段よりもつっかえながら言葉を口にする。
「塾帰りでな。ちょっと息抜きにと思って寄ったんだ」
「そ、だったんです か」
崩壊していた三橋の涙腺は河合の登場によってすでに回復していた。
ここ座わっても良いかな、と三橋の向かいのイスを指さして訪ねる河合に、同意を示すようにコクコクと頷く。
河合はイスを引きながら、注文をとりにきた店員にホットコーヒーを注文する。
変わらずコーヒーを注文する河合を見ると、なぜかほっとした気持ちになって頬が緩んだ。
そしていつもの、言葉数は少ないがゆったりとした時間が流れ始めた。

弁当男子(アベミハ)

11月に入り、ぐっと気温が下がり始めた。
朝、目を覚ましても中々布団から出る決心が着かず、暖かな布団の中にもごもごと留まってしまう時間が増えた。
しかしいつまでも布団の中にいては大学の授業に遅刻してしまう。
ふぅ、と軽く息を吐いてから阿部はゆっくりと体を起こした。
寝間着だけでは冷えるので、すぐに隣の机の上に放り出してあったパーカーを羽織る。
ついでに時計を見れば、時間は6時を少し過ぎたところだった。

この春、同じ大学へ進学した阿部と三橋はルームシェアを始めた。最初の頃こそ上手くいくのかと不安ばかりだったが、今ではお互いに慣れて居心地の良い生活を送っている。
ルームシェアをするに当たって一番大事な約束事は家事の分担についてだった。
最初は個々で管理していたのだが、食事は一緒に摂るし、リビングなどの共有スペースもある。ということで、分担を決めれば良いという話になったのだ。
掃除は毎日じゃなくても良いだろう、と大学生男子にありがちなズボラさを発揮し、残るは食事と洗濯についてだった。が、こちらもすんなりと決まった。
家事の担当が決まる前に三橋の部屋を開けた阿部が目にしたのは、床に放り出された服やタンスからあふれ出る服だった。
そう、三橋には洗濯物を畳むということが出来なかったのだ。
結果、半強制的に三橋は食事、阿部は洗濯の担当となった。(阿部は後に高校からの友人である花井に、三橋が料理を少しでも作れて本当に良かったと漏らしている。)
そんなこんなで料理は三橋の担当になっていたのだが、如何せんレパートリーが少ない。朝はパンやご飯だけでも済んだが、昼食や夕食はそうはいかない。
仕方がないので昼食は大学の食堂で済ませていたのだが、ここで忘れてはいけないのが三橋の摂取量だ。いくら学食の値段が安いからといって、大量を毎日食べていたら相当な食費になる。
結局、食費を抑えるために阿部が弁当を作るようになったのだ。
三橋はレパートリーが少ないだけではなく、朝にも弱かったので弁当を作る余裕などなかったから仕方がない。

徒歩で10分の距離の大学に通う阿部が、毎朝6時前後に起きるようになったのは以上の理由からだ。
料理をすることに慣れている人ならばここまで早起きしなくても良いだろう。だが、阿部だって三橋と同様に、大学生になるまでは料理などろくにしていなかったのだ。
と言っても、阿部は何事もそつなくこなせるタイプなので、今では三橋以上に上手に包丁を扱えたりするのだが。

毎日の習慣になってきた弁当作りをしながら、そろそろ三橋を起こさなければと時計で時間を確認し、阿部はコンロの火をゆるめた。



















少し前に新聞で、最近「弁当男子」なるものが増えてると目にして。
えらいよなぁ…自分は朝起きれないタイプの人間なので尊敬する。

あと、ルームシェアとルームメイトの違いを知りません…え、違うんだよね?

トレモロ(ハルミハ)

久しぶりだったから自分を抑えきれずにがっついてがっついて…レンも可愛いこと言って煽るばっかだし…だから余計に止められなくて。




榛名は、最後には気を失うようにして眠りに落ちた三橋を眺めながらぼんやりと事後の余韻に浸っていた。
いつもはフワフワとしている髪が、今は汗ばんでしっとりとしている。
そんな三橋の髪に指を絡めながら視線を移動させる。
まん丸な目を覆うようにして伸びている睫。今は閉じられているので分からないが、これのせいか、三橋の瞳は光の加減によってたまにブルーっぽく見えたりして、榛名はそれを気に入っている。
そして、かぷりと噛みつきたくなるような鼻。(いたずらに噛みつくと三橋が拗ねるので、無闇に噛みつきはしないが)
ムニムニと動く唇。
自分よりも幾分か丸みを帯びた顎先。

(あ…やべ、なんかムラムラする)

先ほどまであんなに貪欲に貪っていたのに、まだ足りないというかのように榛名の自制心が揺らいだ。
気を紛らわせようと部屋のあちこちに視線を泳がせた榛名は、写真立てに入れて飾ってある一枚の写真を見つけた。
そこには三橋と、三橋の友人であろう人物が写っている。
写真の中の三橋の雰囲気からして最近撮られたものだという予測はついた。が、写っている人物に心当たりはない。背格好的に三橋と同い年くらいではあるが、着ているユニフォームは西浦のものではない。

(…誰だ?)

写真に写る三橋が自分の知らない誰かと楽しそうに笑っているのがなんとなく面白くなくて、三橋の髪をいじっていた指先についつい力がこもる。
それが痛かったのか、隣で眠る三橋が身じろぎした。
榛名は慌てて手を離し三橋の顔を覗き込んだが、幸い三橋は目を覚ましたわけではなかったらしい。
あれほど好き勝手に蹂躙してしまったのだから、榛名としては時間が許す限りゆっくりと寝かせてやりたいのだ。
ふう、と一息吐いて再び飾ってある写真に視線を戻す。そんな榛名の左手は所在なさげに宙を彷徨い、結局三橋の髪へ。
ゆっくりと撫でつけてみたり、人差し指にくるくると絡ませてみたり。
スルスルと指の間を流れ落ちる髪の感触が気持ちよくて、何度も何度も繰り返す。

(レンが人見知りしなくなったら、もっとたくさんのヤツらと笑うんだろうか)

榛名は自分の感情が独占欲と呼ばれるものだと気付いていた。そう思ったところで具体に行動を起こしたりはしないが。

(好きだから相手を殺して自分も死ぬだとか監禁だとかって、間違ってるだろ)

それは恐ろしいほど強力なエゴだ。

(オレは其処まで堕ちたくねぇな)

それでも、こうして事後やふとした瞬間に湧き上がる感情は止められなくて。
榛名はそんな感情を振り切るように、写真から視線を外して深く息を吐く。
自分の気持ちばかりを押し付けていたらいずれその関係は崩れてしまうだろう。
ちょうど天秤のように。どちらかに傾いていたらダメなのだ。片方だけに負担を掛けてはいけない。

だけど榛名は気付いていないのだ。
自分たちの天秤が地面と平行であることに。
ただ、今はまだ少しぐらつく天秤をしっかりと保つには、榛名がそれに気付かなければならないだろう。

(レンが起きたら聞いてみるか)





(あの写真、誰?)










なんかこう…途中から書く方向性みたいなのを間違えました…描写があっちこっち…物理っぽかったり、心理っぽかったり…毎度のことながらぐちゃぐちゃですみません…orz
そもそもなぜ自分は文章(っぽいもの)を書いているのか…元々は絵描き…なのに…。どっちも中途半端だから上達しないんだろうなあ…。

メール(泉→三橋→榛名)

「なんだ?その紙」
いつも授業の合間の休み時間は早弁をするか昼寝をするか、の三橋がふわふわとした笑顔で一枚の紙切れを眺めていた。

「うぉ、泉くん!これ、は榛名さんにもらった よ!」
ふひ、っといつもの独特な微笑みを洩らしながら嬉しそうに教えてくれる。
「この間、トイレで会った、んだ!それでコレ、メアド 教えてくれ た!」
トイレって言うと…
「この前の抽選会か?」
「そ、う!」
頬を赤く蒸気させて必死に頷く様は非常に可愛い。可愛い、が。面白くはない。
「榛名サン、なー…。んで、もうメール送ったのか?」と聞けば、緊張してまだ送れていないのだと言う。
「じゃあオレも一緒に考えてやるよ」
「い、良いの?」
良い人!オーラを発しながらこちらを見つめてくる三橋に、良いんだ気にすんな、と返して頭の中では早速文章を考える。要はアレだ、相手が返事を返しにくい文章にすれば良いんだろ?そしたらメールだって続かねえハズ。
泉の思惑など知る由もなし。三橋は、横からさり気なく文章を作る手伝いをしてくれる泉の言う通りに携帯のボタンを押していく。
三行程の短い文章だったが、トイレでぶつかったことへの謝罪を書き、震える指先で送信ボタンを押した。
「で、きた!」
まるで一仕事終えたような達成感を含む声色で満足そうに携帯を見つめる三橋に、泉が「おつかれさん」と声を掛けたときにちょうど休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
返事が来ると良いなー、と思っていることとは正反対の言葉を掛けて泉は席に戻る。
九組のお目付役は、自分の席に戻る前に未だに机に伏して寝ている田島の頭をはたいて起こすことも忘れない。



【返事なんか来なくて良い】







榛名も三橋のことを気にしてたら良いよ!
だからどんなメールでも無理矢理会話を繋げていく、と^^^^
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2024年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリー
プロフィール
nikeさんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 4月16日
地 域 大阪府
職 業 大学生
血液型 A型