まるで世界が反転したような衝撃だった。
あぁ、階段から落ちるってこういう痛みが走るもんなんだな。
痛ぇ。ホント、半端無かった。
でもなぁ…まさか、自分の人生が階段からの転落で終わるなんて
カッコ悪いやら何やら
「あの…」
せめて最後はとびきりいい女と遊んだり、一日中スロットしてフィーバーさせてみたかったんだがな(貧乏な俺にとっちゃあ最高の贅沢だ)
「…起きて下さい。こんなとこで寝ていたら風邪を引きますよ。」
(ん…?)
なんだ、これは。
この耳に飛びこんでくる、女とも取れる心地良いボーイソプラノは。
柔らかく伸びやか、それにどこか甘さを含んだ声なんてそうそう出せるもんじゃあ…。
「ねぇ。」
(何だ、これは。誰が俺に話し掛けてんだ?)
「僕が起きろっつってんの…聞こえないんですか?この愚図男。」
(え)
甘い甘い丁寧な言葉遣いが消えた瞬間、俺の鳩尾には華麗な蹴りが決まっていた。
「ぐはっ?!…ゲホッ…ッ…」
「あぁ。やぁーっと目を覚ましたんですね、東京グリムゲルテ五番街の新たな来訪者さん。」
開眼一番に飛びこんで来たのは
それはそれは美人な(見かけは)おっとり青年でした。