遠い所も雨の中も、すべては思い通り



話題:昨日のデート



待ち合わせの時間は18:30。
仕事中も考えるのは、会えた時にどんな話をしようかな、とか。
今日のワンピース、気に入ってくれるかな、とか。
美味しいご飯をたくさん食べられるように、お昼はいつもより食べる量を控えなきゃ、とか。

定時に帰れるように、やんなきゃいけない仕事の優先順位を決めて、スケジュール通りに仕事を進める。

定時の時間まで残り一時間を切ったところで、頼まれた仕事。上司からの仕事は断れない選択肢のみ。
片づけなきゃいけない仕事がもう少しってところだったのに、ああ、ツイてない。
でも、追い込まれると俄然やる気になる性分のお蔭で、定時を10分過ぎたところで仕事が終わった。

後は、急いで着替えて、メイクを直して、ダッシュして向かえばギリギリ間に合う!
待ち合わせ場所を会社の近くにしておいて正解だった!
頑張った自分を自分で褒めて、会社を後にした。

待ち合わせ時間の1分前。
肩で息をしながら、なんとか間に合った!と思ったら、頭に感じた雫のポツリ感。

見上げて、手のひらを空へ向けると、ポツ、ポツと落ちてきた雨粒。
鼻の頭にも雨粒が落ちてきて、苦笑しながら手のひらを見つめると、不意に足元が暗くなる。

見慣れたツートンカラーのデッキシューズが視界に入る。
相変わらず、ジーンズのロールアップが鉄板なんだな、と思いながら再び目線を上げるとやっぱり彼で。
口元に手を当ててクスクスと笑いながら差し出された傘。

もしかして一部始終を見られていたのかと、恥ずかしくなる気持ちを隠す為に、わざとふくれっ面をしてみせる。

不意に口元にあった手が伸び、私の頭をやさしく撫でる。
撫でる手の心地よさに、緩む口元を抑えることが出来なくて。
相変わらず、単純な自分に笑えて、彼を見ると私の気持ちがわかったのか、ケラケラと子供っぽい笑みを浮かべる彼を見て、私も一緒に笑ってしまった。

目的地に向けて歩き出すと、行き交う人々は、思いの他少ない気がして。
信号待ちの間、ビルのガラスに移りこんだ自分の姿を見て、走ってきたわりには髪型が崩れていないことに気づき、思い出した彼の手。
頭を撫でながら、私の髪型を直してくれたのかな、と不意に口角が上がる。
チラッと横目で彼を見ると、正面を見つめる彼の横顔に、聞こえるか聞こえないかくらいの声で、ありがとう、とつぶやいた。
視線に気づいたのか、ん?と私のことを見つめた彼に、なんでもなーいと首を振り、傘を持つ手を軽く握り、横断歩道を先導した。

目的地に到着したのは、予約時間の少し前だったが、お店の方は、快く案内してくれた。

小さな洋食レストランだが、料理がおいしいと評判と聞いて予約をした。
頼んだメニューが運ばれてくるまで、会話を楽しむ。
食事に行く時はお互いに行きたいお店があれば、各自で予約をすることが殆どだけれど。
なんだかんだで、デートの主導権を握るのが、私だったりする。
彼のデートプランが楽しくなってきちゃって、今度はあそこに行きたいとか、あれが食べたいとか。
予定からずれて、目的地を変更したりすることも少なくない。
勿論、彼は文句をいいながら私のわがままに付き合ってくれるのだ。

食事を済ませた後は、基本的にコースは決まっている。
自宅近くのレンタルショップに立ち寄り、大抵お笑い芸人のDVDをレンタルして、コンビニでお酒とつまみを買って帰る。

お互いにお風呂を済ませて、お酒を飲みながら、エイヒレに噛り付く私を見て、彼は笑う。
ナイフとフォークよりも、素手でエイヒレ食べる方が似合ってる、って。
悔しいけれど、そんなの、私が一番わかってる。
膨らませた頬っぺたを、やさしく抓られて、大袈裟に痛がって彼の手を掴む。
目があった瞬間に近づく距離と、伏せた瞼。

離れた唇から、エイヒレの味がした、と彼がつぶやいた後、狙っていたかのように「もうええわ」と突っ込む声がテレビから聞こえて。
なんでもないような日常が末永く続くことを願って再び目を閉じた。

==========

そこで、目が覚めた。
なんて素敵な夢を見たんだ。
感触とかさ、感情がリアルだったから、一瞬、現実かと思ったけど。
私役は、伽奈さん似の女性。(拍手)
彼氏役は、まさかの竹財さん似の男性。(拍手)
JUJUさんのプロモに出ているお二方の出演ですか。
エイヒレが似合うだなんてめっそうもございません。本当にすみません。(土下座)
でもでも、演じてくれたお二方がきれいなおねいさんとおにいさんだったから、一瞬勘違いしたけど、夢だってことが、すぐにわかったよね。あはは。


昨日のデート。
夢の中のデート。
きゅんきゅんしたいけど、恋に臆病なわたし。
ひどいね。三十路手前の女子が見る夢じゃないよね。
いや、干物女なのはわかってるよ。自覚している。
本当にすみませんでした。

でも、楽しかった〜。