私は、女神だ
女神と言っても新米の女神だし、女神としての力も限定的なものでしかないけれど
そう。私は所謂縁結びの女神なのだ
とは言っても私が管理する町このミネラルタウンには、カップルになりそうな若い人なんてほんの一握り
私が色々しなくたって勝手にくっついていくわけで。
私がさぼってたって別に……
「いい訳ないだろ!仕事しろ!」
と思ってたら突然親父のピートが殴り込んで来た
全く……読心術なんか使うなっての。プライバシーなんてあったもんじゃない
「女神のお前がそんなんだから地上の若いカップルが結ばれないんだ!地上に降りて仕事しろ!そしてその腐った根性叩きなおしてこい!」
そうして私は居心地の良い我が家を追い出され、今に至る
ここはミネラルタウンの荒れ果た牧場
父のピートは昔牧場主で大層なやり手で、何をトチ狂ったのか私の母である女神様と結婚してしまったのだ
結果、私が生まれた
ていうか私、泉に住んでるっていう女神様の顔なんてロクに覚えてないんだけどw
父は死後ミネラルタウンの神様としてミネラルタウンを守っている
私だって女神として頑張っているのに!ピートの馬鹿野郎!
てか牧場をやれと言われたって、農具なんて無いじゃんあの親父。とりあえず倉庫の道具箱を漁っていたら、父が昔使っていたと思われる古ぼけた道具が出てきた
ちっ……これしかないか
どうせ使うなら親父が使ってた賢者の道具が良かったのに
お前にはまだ早いからダメだって言われた
子供かってーのww
ムカついたので古いクワを装備して畑を耕していたら、赤い服がトレードマークの……この人は確か、トーマスだったか
「やぁやぁ。初めて見る顔だね……観光ですか?」
「いいえ。違います……その……チラシで見たもので、都会のマンションも会社も引き払って来たんですけど……なんですかこの荒れ放題」
因みにチラシを見たというのは嘘。都会からきたと言うのも嘘
ただ説明が面倒だったから適当な嘘をついておいた
この牧場のチラシが出ていたのは以前から知っていたから
だから、都会から出てきた物好きな社会人を装っておいたのだ
まぁ、本当は根っからの田舎女神なんですけどね。都会なんて知らないし
「あぁ……ここは昔、立派な牧場主の牧場だったんだけどねぇ……」
……知ってます。それ親父の事ですから
「その牧場主が亡くなってからは買い手もつかなくてこの通り荒れ放題でね。チラシに騙された人が何人か毎年来るんだけど、ご覧の有様を見てやる気をなくして帰ってしまうんだ。今じゃ来る人もいないから放っておいたんだけど、そうかそうか。騙されちゃったか」
そう言ったトーマスは盛大に笑っていた
村長の癖になんて奴w
クワで攻撃したい気持ちを抑えつつ村長を見送った私は畑仕事を終え、町の散策をする事にした
今回縁を結ぶカップルは5組
彼らの今現在を、見ておかないといけないしね
畑仕事を一通り終えた私は早速街へと向かったのだ