話題:創作小説

○鷹雪と亜子のはじめて迎えるバレンタインSSです。無駄に(1/2)なので2に続きます。まだまだバレンタイン気分の私です。

それではスタート( 'ω')9

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 愛猫と戯れながら、今日ははて何日だったかと思い出す。
 最近はバタバタとしていて日付感覚が曖昧だ。

 日曜日、ということは辛うじてわかる程度。壁にかけられたカレンダーに目を移せばハートマークが飛んでいる。ハート。

 2月の14日。バレンタインデー。


「おいおいおい」


「にゃん?」と彼女にどことなく似ている愛猫は首を傾げ、首輪についた鈴をリリンと鳴らした。「小夏、俺は用事ができた、悪いが李咲と遊んでな!」猫と話をする癖は直した方がいいかもな、そんなことを思い、彼女の家へと向かった。


 彼女には天性の引きこもり癖があり、休日は専ら自室に篭って読書をしたり愛猫と戯れたりしているとのこと。

 最近家族が"増えて"、義理の兄となるおにいさまと出かけたり、その兄の所属するバスケットボール部の試合があればその試合を観戦しに行くらしいが、今週はどこへも行かないと言っていた。
 十中八九家に引きこもっている。
 家族でのお出かけの予定や買い物、俺がデートに誘わない限りはほとんど家から出ることのない、座敷わらし的存在なのだ。

 だから今日もチャイムを押せば彼女が顔を見せてくれる、そう思っていたが、現れたのは彼女のおにいさまだった。


「こんにちは!松本ですけど」
「亜子なら出かけたぞ」
「は!?あの引きこもりの亜子ちゃんが!?」
「おまえなあ……。おまえの家に行くって言ってたけど」
「え、あ、すれ違わなかったんですけど……?」


 ふたりで首を傾げていると、携帯電話が鳴った。俺のではなく、壱さんの。亜子だ、と短くつぶやいてから壱さんは携帯電話を耳に当てた。


『おにいちゃんんん……!どうしよう、迷った……!迎えにきて……!』


と、俺にも聞こえる音量で亜子ちゃんの声がした。震えた声で、いまにも泣き出してしまいそうな、そんな声。
 しかし、迷った? ここから俺の家までほぼ一本道のはずだけれど。一体どこで。


「は? どこにいんだよ」
『わかんない……あ、近くにね、川があるの』
「川?」


 と、ちらりと俺を見る壱さん。川。ふむ。
「道一本間違えたのかな」とぼそりとつぶやけば、彼は小さく頷き、「わかった、いまから行くからじっとしてろよ」と話し電話を切った。


「おまえ、場所わかるんだよな。迎えにいってやれよ」
「――あ!ハイッ!行って参ります!」


 そうして俺は再び走り出した。亜子ちゃんを救出しに――!なんていったら大袈裟か。
 迷子の迷子の亜子ちゃんを見つけだすために!俺が必ず助け出してやる!

(後半へつづく?)