4月、相翼院へ。
希の『千里の道も河童からでしょ!』の一言で、相翼院にて河童退治をする親子。
※正しくは、千里の道も一歩から。
『…死ねば!(河童が)』
初討伐でやる気満々の光太郎は、薙刀片手に、赤い瞳には似合わない暗い光を宿らせ一言。
出会う敵出会う敵、『死ねば!』の掛け声と共に捩じ伏せていく。
『光太郎大丈夫?無理してない?』
息子を気遣う希の言葉にも、
『……死ねば!』
言ってしまってからハッと希を伺えば、
『そう?お互い初陣なんだか無理しちゃダメよ?』
どうやら母には『大丈夫』と解釈された様で、傷付いた素振りもなく微笑んでいる。
先月よりコミュニケーションが取れる様になった賜物だろうか。
といっても光太郎自身は無口そのもので、しかし希にはそんな光太郎の本当に言いたい事が解るようだ。
『………。』
どうして、上手く言葉を紡げないんだろう。
何故第一声が、死ねば!になるんだろう。
もっと母と普通に会話したいのに!
そんな悶々とした気持ちを、怒りとともに河童にぶつける光太郎なのだった。
問題なく討伐終了!
4月
初めての子供の名前は光太郎。
光が導いてくれるように願いを込めて、希はそう名付けた。
そんな息子は初見で『死ねば!』と宣い、希はショックの余り、その自慢の三つ編みで鴨居に首を吊ろうしたとか。
『光太郎ってば主語が抜けてますよぉ!』とイツ花のフォローにより、どうやら光太郎は朱点なんて死んでしまえ!と言いたかったと判明し、事なきを得る。
『宜しくね、光太郎。』
柔らかく微笑み、まだ小さな手をそっと握る。
一瞬びくりと手を震わせるも、照れた様に眉毛を寄せ小さく頷く光太郎。
うん大丈夫、上手くやっていける。
ちょっと言葉足らずな息子を抱き寄せ、幸せ一杯に笑う希。
物語はここから始まる。