話題:突発的文章・物語・詩


市場価値に商品価値
欲望の眼差しは少女を人形へと変えた
「こいつは高く売れる」
人形は頬を赤らめた

店主は値段を釣り上げて
決して人形を売らなかった
「この時代に新品の綺麗な人形なんて、そうそう買えねえぜ?」
人形は手垢が付いていない自分を誇りに思った

ある日、ひとりの青年が人形に魅入った
店主の隙を付いて人形を盗んだ
人形は泣いて震えた
自分の価値がなくなってしまうから

青年は人形を大切に扱った
世界でひとつだけの宝物
人形を愛でたけれど
愛を知らない人形は泣きじゃくるばかり
(わたしに触れないで…)

「世界にただひとつ」

それだけで価値はあるのに

愛されるために生まれてきたことを忘れてしまった人形
そして、少女を拗らせすぎてしまった哀れな人形


(私から価値を奪わないで…)




少女を拗らせすぎた哀れな女の子