「ー…てゆーか、宵でしょ。」
りょうちな
中2設定。
夜が来るのが早い冬の、完全下校は5時。時間ギリギリの教室は、灯りさえない寂しい場所で、一人ぼっちを際立たせてる。あたしはくすくすと笑った。
今日はしおり、用事があるんだって。ひろとあいるはデート。あたしは正真正銘の一人きりだった。こういう時の学校っていうのは、割と雰囲気出ててすきなんだよね。校門で急かされる運動部を見て頑張ってるなと他人事のように呟いた。いや、他人事なんだよまちがいじゃない。それでも。
そういえば、あいつって何部に入ったんだっけ。小学6年の冬に別れを告げた幼馴染のことを思い出した。むかしから運動得意だったから、サッカーかな、陸上かな。田舎にもあるのかな。
「崚弥、今なに考えてんの。」
一番星、月の近くにあるそれを見つけ呟いて見た。ひろがなんか言ってたな、えーっと…厳密にはあれは金星で世間一般に認識されてる恒星でないから、一番星と称するに値しない…だっけ。まるで、あたし。厳密には好きでないのに、しおりが好きと称されてるあたしによく似てる。虚像の星は、明星、輝く星なんだ。
「立花!!」
呼ばれて振り返る。あー、見つかった。
「やだなぁ、なんですかせんせい。」
「こら、もう帰る時間だぞ。」
「そんな硬いこと言わないで、ちょっとだけだから。」
先生に渋い顔をされたので、しょうがなくドアに向かう。しんと静まる教室にいたら、もしかしたらあいつが帰ってくるかも、なんて思っちゃうんだ。だから、離れたくなくて。『千夏!』びくりと体を震わせ後ろを振り向いた。
「…りゅ、」
「立花!」
「はい、」
一瞬見えた、崚弥の影、声、私の心も震える。あぁ、一瞬でも彼に会えた。
「立花ニヤついてるぞ、」
「え、ふふ。せんせーが来てくれたからですよ。」
にっこり笑って先生の腕に抱きつくと、調子に乗るなと頭をぽんぽんされた。