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作品について

いつも御覧いただきありがとうございますm(__)m
キリワンをお探しの方が立ち寄ってくださるようなので、近いうちピクシブに掲載しているキリワン小説をアップしようと思います。未完結ですが……(>_<)
続編はピクシブで展開予定です。

また、その他の連載も完結次第ピクシブからこちらに移行予定です。よろしくお願い致します。

【3月】種をまく犬

※同作品をぴくしぶにもあげています。





穏やかに揺れる木漏れ日の中を歩いていた。

郊外にある平日の森林公園は、
人気がなく、とても静かで、
木々が揺れる音と、鳥のさえずりだけが聞こえている。

殺人事件の捜査をしているという一点を除けば、
素晴らしく平和で、うららかな春の午後だ。


「コマさぁーん。ちょっと休憩しましょうよー。」


その均衡を破るように、
背中から情けない声が飛んできた。


「うるせぇさっさと歩け。」


振り返らずに投げやりに答えると、
「本当にちょっとだけでいいですからぁ・・・」と
涙声の主が足音を止めてしまった。

共に仕事をするようになって早数ヶ月。
何度こんな風に足手まといになったことか。

女という事を差し引いても、こいつの運動神経は残念すぎる。

 

「犯人追っかけて走り通しって訳でもねえだろが。
 どこに疲れる要素があるんだよ。」

仕方なく振り返ると、予想通り、ふてくされ顔のワンコがしゃがみこんでいた。


「花粉です!か・ふ・ん!
 鼻が詰まるのも頭がボーっとするのも疲れやすいのも
 ぜぇーんぶ花粉のせいですー!」

「お前なぁ…」

投げやりに言い返したワンコは、急にすっくと立ち上がると、
真剣な顔でビシっと彼方を指差した。


「コマさん、あそこで休んで行きましょう!」


指差す先に、カラフルなワゴン車が見えた。

 

 

――――

 

ワンコの剣幕に押し切られ、
気付いたら移動販売のクレープ屋の前まで引きずられて、
二人分のクレープを買わされていた。

 

「はぁー。しあわせです〜。」

「なんで俺が奢らなきゃなんねえんだよ。」

「コマさん先輩じゃないですか〜。それに、ご褒美くれるって言ったでしょう?」

「ご褒美〜?知らねえ、そんなもん。」

「あ!ひっどーい。忘れたんですか?洋品店店主殺人事件の時ですよ〜!」

事件の名を頼りに記憶を辿ると、確かにそんな会話をしたような気がする。

「…あぁ。でもお前、あれ誤認逮捕だったじゃん。」

「うっ…」

痛いところをつかれたワンコは、
もごもごと言葉にならない言い訳をこぼして
それきり黙ってしまった。


再びの静寂が訪れる。


ちらりと隣りを盗み見ると、
ワンコは、ぼうっと遠くを眺めながら無心でクレープを頬張っていた。

そういえば、朝から飲まず食わずで歩き通しだったか。
花粉症のワンコには酷なことをしてしまったかもしれない。

そんなことをぼんやり考えながら
もそもそとクレープを食べていると、
不意にワンコが口を開いた。


「コマさん…」

「あん?」

 

「これってデートですかね。」

 

――――

 

「ぶっっ」

コマさんがいきなりクレープを噴いた。


「す、すみません。」


私のせいかな…?
様子を伺いながら、ハンカチをそっと差し出した。


「本当にすみませんだよこのやろう!どこをどう解釈したらそうなるんだよ!」


「きゃー!汚い!やめてくださいよー!」

コマさん、せっかくハンカチ出してあげたのに私の服で拭いてるし!
まだ2回しか着てないのにー!


「うるせえバカヤロー!仕事だろうが仕事!これは業務だよ!」
「…公園でクレープを食べるのが業務ですかぁ?」
「おぉ、口ごたえすんのか。」

「ち、違います…。ただ、デートだったらいいなぁって。」

コマさんは思いっきり変なものを見るような顔でこっちを見てる。
うーん、上手く説明できていないのかなぁ。


「…私、まだ一度も男性とお付き合いしたことがないんです。」

「ふーん興味ない。」

「デートらしいデートも、したことがなくて。」

「興味ないって言ってんじゃん…」

「まあ、いなくてもいいかなって思ってたんですけど…
 ほら、最近琴美とヤナさんが付き合い始めたじゃないですか。」

そう、この春からヤナさんと琴美は付き合い始めたのだ。
最初はしぶしぶ付き合ってる風だった琴美も、今ではすっかりヤナさんラブだ。


「二人共、色々お話してくれるんですけど、本当に幸せそうなんですよねぇ。
 身近でそういうの見てたらちょっと羨ましくなりました。」


だけど。
刑事は激務だから、仕事と家庭を両立できない人が少なくないと聞いて、
私はどうだろうって考えてしまった。

考えたら、そもそも付き合ったことすらないうえに不器用な私じゃ
何もかもハードルが高すぎる気がして…


「自転車二人乗りしたり、一緒にクレープ食べたり、
 波打ち際で追いかけっこしたり、ナットを指輪代わりにプロポーズされたり、
 そういうのやってみたかったんだけどなぁ…」

「お前の付き合うってどんなイメージだよ…ていうかお前いくつだよ…」


水を差すような言葉にむっとしてコマさんを睨んだら、
ふいと視線をそらされてしまった。



「…はなから諦めることないんじゃないか。」

「え?」


こっちを見てくれないままのコマさんは、どこか決まり悪そうに言葉を続ける。


「まだ好きな奴が出来ないだけだろ。お前は…
 真っすぐで、バカみたいに素直だし、
 まあ、…可愛げもあるし。服さえなんとかすりゃそのうち…」


「コマさん、それって…」
「なんだよ。」

「素質十分、未来は明るいってことですか?!」

「えー…」

どんだけポジティブなんだよ…なんて言うコマさんの呟きは全然気にならない。


どうしよう、なんだかすっごく嬉しくなってきちゃった!


「コマさん!なんだか私、大丈夫な気がしてきました!元気も出てきました!」

「あ、そ。もう行くぞ。」

「はい!」


先に立ち上がって歩き出したコマさんを追いかけて隣に並ぶと、
コマさんがちらりとこっちを見てきた。


「そんで、デートの感想は?」


「とっても楽しかったです!あ、でも私の理想としては
 手を繋いでラブラブしたいんですよね。繋いでもいいですか?」
「駄目だ。」
「ええー、ケチ〜。」

すげなく返されても、笑顔になってしまう。

こんな冗談の応酬にも浮き足立っちゃうのはなんでだろう?


褒めてもらえたから?


励ましてもらえたから?


分からないけど、今は考えるよりこの瞬間を大切にしたい。

 

 

「コマさん。」

「んー?」

「またご褒美くださいね!」

「…手柄あげたらな。」


難しい顔で電子煙草を銜えたのは、もしかして照れ隠し?

そう考えたら、何だかくすぐったい気持ちになって。
細くて、でも広く見える背中に飛び付きたい衝動を抑えて、揺れる木漏れ日を見上げた。

次のご褒美は何にしよう、って考えながら。

 

はじめに

はじめまして。

当ブログは、テレビドラマ「デカワンコ」の二次小説を取り扱っております。

管理人の個人的趣味によるものですので、関係者様とは一切関わりございません。

また、原作とは異なるカップリング小説を書く際、設定やストーリーを捏造する場合がございます。
そのような行為が苦手な方はご注意ください。

なお、ブログ主は漫画版デカワンコは未読の為、
(読んだらキリワンに傾いてしまいそうだから・・・w)
おかしい設定・展開があるかもしれませんが
パラレルワールドだと思って、
ご容赦いただければと思います。。。( .x.)

ひっそりこっそりと書き綴っていきたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
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