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刻み込んだ涙。


バトン『暗いお題』より



刻みこんだ涙
キザミコンダカナシミ




私だけだと思っていたの。

なのにある日、あの子がいた。

またあの子。

いつもいつもあの子ばかり。

いつもいつも私はあの子に嫉妬ばかり。

私の心が荒んでいく。




「おはよう。」

君がそう言った。

振り向けば笑顔。

それが嬉しくて切ない。

私だけじゃないんでしょ?

あの子にもその笑顔を向けるんでしょ?

ううん。

あの子に向ける笑顔はとびきりなんだよね。

その笑顔が憎い。

「今日も来る?」

隣に並んで言う君。

残酷な一言。

知らずに言う君。

「うん、行く。」

だけど私は知らん顔。

馬鹿な私。

傷つくと知りながらも頷いた。

君は笑った。

嬉しそうに笑ってありがとうと言った。

そうやってまた傷を抉っていくんだね。

違うでしょ?

嬉しいなんて、ありがとうなんて嘘っぱち。

だってあそこにはあの子がいたじゃない。

私なんてほったらかしだったじゃない。

私を過ぎて、あの子のもとへと翔ていったじゃない。

ほら、今だってそう。

とびきりの笑顔で翔ていくんだ、あの子のもとへ。

口ばかりの君が嫌い。

なのに嫌いになれないのはなんで?

手を振られて嬉しいだなんて、馬鹿げている。
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