話題:初詣・おみくじ
そういえば、長らくベビーカステラを屋台で買うことが無かった。買おうとも思わなかった。
なのに、何でか今年の初詣の際には買っても良いかなって思ったんだ。
ちょっと引っかかってはいたんだ。
何でだろう?って。
書いていて気付いた。
そっか、君が大好きだったからだ。
お祭りに体調不良で君が行けなかった時に、
もともと自分が好きで買ってたそれを、君のお土産にって別に買ってプレゼントしたんだ。
君は「ありがとう」ってはにかんで受け取ってくれた後に、「移ったら悪いから」って、すぐに部屋に戻ってしまったから、本当に嬉しかったのかはよく分からなかったんだ。正直そこまで好きそうには思えなかったから。コーヒーが好きな人だったしね。甘いものが苦手だったらどうしようって、渡してから後悔してたんだ。
そしたら後日、お姉さんから喜んで少しずつ大切に食べてたって聞いて、ちょっとの安心と、心がもぞもして嬉しかった。
温かいのが好きだから、急いで持ってきたんだ。すぐに君に食べて欲しくて、少しでも元気になって欲しくて。
目の前で食べてくれなかったことに、少し不満になって、その後に不安になってた。
本当は嫌だったんじゃないかとか、病気の時に食べたくないよね、私って何て考えが浅くて迷惑なやつなんだろうって、自分を責めていた。
だから、それを聞いて少し救われたんだ。
部屋に帰ってすぐに少しだけ食べてくれたみたい。
ご飯は喉が通らなかったのに、ベビーカステラは食べていたんだって。
君の優しさが嬉しかった。
そっけない態度は照れていたんだって。移さないかって心配も本当にあったみたいだけれど。
嬉しくてすぐに無くなったら寂しいから、少しずつ食べていって、無くなる頃には元気になったみたい。
あとね、実はベビーカステラが大好きなんだって。それもドラえもんのやつ。
意外と子どもっぽいところがある君に驚いた。
でも、自分も認めてもらえたみたいで嬉しかった。
好きだったベビーカステラが大好きになった。もともとは形にこだわりが無くて、アノ人が「普通じゃつまらない」って言ってキャラクターものにしていただけなのよね。
その日から、必ずお祭りではドラえもんのベビーカステラを買うようになった。
何で忘れていたんだろう。
ある時から、パタリと買わなくなった。
そうだ、君がいなくなってから。
大好きだったお祭りにも数年間行かなくなった。
苦しくてたまらなかったから。
行ったのだって、友達からの誘いを断りきれなくてだしね。自分から行こうとは思わない。
君と一緒によく行ったよね。
君からいつも誘ってくれたんだ。
日付けを覚えられない私に、お祭りが近くなると毎年声を掛けてくれた。
あそこの綿菓子屋さん、まだやってるよ。
あそこの屋台は去年からクレープ屋さんになったよ。
あそこの風船屋さんもいまだにあるよ。
…そこそこに君の欠片がチラチラとみえて、今でも泣きたくなるんだ。
あの頃の私は君と手を繋いで、幸せな中歩いていたな。
今は。君との思い出が溢れて零れてしまわないように、目を逸らして歩く。
隣を歩く友達だけを見て、友達との話に集中する。
じゃないと、泣いてしまうから。
もはや無意識にしてしまう行動。
それが今年は鳥居をくぐった瞬間、ふとベビーカステラを買おうかなって思ったんだ。
ドラえもんのベビーカステラ。ハチミツ入り。
そっか、とうとう今年で13回忌。
今年こそはお墓参りにいけるかな。
「久しぶり」って言ったら、君はどういう顔をするのかな。
全然逢いに行けなくて怒るかな悲しむかな。
ううん。きっと、優しく笑うんだ。
私のいろんな気持ちを包み込むんだ。
ねぇ、君に触れたいよ。