話題:映画館に見に行った映画

タイトルからお洒落で惹きつけられるものがあるのが岩井俊二作品。今回は特に、ねこかんむりというミステリアスなものと融合し、どんな話なんだろう?と気になるひとも多いはず。黒木華を主演に迎えた今作は、180分ある大作。180分って、どのくらいの長さなんだろうと身構えていたけど、すんなりと観てしまった。180分の奇跡、愛が焼き付いて離れない。このいとおしさを離したくないと思わせてくれる世界観、今のあたしが観れてよかった。きれいな光の射し方、距離感、クラシックの壮大且つ優雅さ、ただただ美しくて、恍惚としてしまう。この世界に出会えてよかった、心からそう思った。

七海と同い年のあたしは他人事の気がしなくて本を読んでいる時からすんなりと受け止められる世界観の虜だった。微々たる変化が彼女の成長を物語り、あたしに訴えかけるのだ。この世界は幸せだらけだよと。不透明にしてしまうのは、あたしで世界はいつも同じようにあたしたちを愛で包んでくれているのに。
ネットで買い物するみたいに彼氏が手に入り、結婚までしてしまう。今の時代、なんでも叶えようとしてくれる仕事をしてる人がいたり、電波で世界中とつながったり、買い物できたり、欲望をほんの少しの力で手に入ったりもする。便利で不自由なくて生きやすい様に見えて生きにくかったり。便利な世界で生きる心は不便さを感じたり、窮屈だと溺れているのかもしれない。恋も愛も友達も生身で始まることは少なくなっている現代で、アナログを主張するのも、自分を確立させるのもむづかしい。それでも、世界はこんなにも幸せにあふれているから失くしたくないなと思った。

岩井俊二ワールドでの結婚式は、とても美しく、黒木華のウェディングドレス姿はたまらなかった。時折、クスりと笑ってしまうシーンもちらほらとあれば、ズトーンと胸に突き刺さるシーンもあって、現代を生き抜くことの複雑さを感じた。SNSの世界から抜け出して、リアルな世界で生きることを余儀なくされ、それが案外、精神を安定させるのかもしれない。

「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」この一言で足りちゃうんだ。