※シリアスなようでシリアスでない。でも最後シリアス風
『スザクっ!!』
通信越しに呼びかける男にスザクはきゅ、と眉を寄せた。答えずにいると勝手に回線を開いてきて、戦闘の邪魔にならない程度──画面の片隅だ──にジノの顔が映り込んだ。
勿論、ジノの技術ではなくアチラ側の誰か(ラクシャータという人間だろうか、とスザクは思った)に協力させて開いたのだろう。
「なんだい、そんなボロボロの機体でまだ──」
『スザク、アヴァロンは墜ちたぞ』
「……そう、」
『お前の、いや、お前たちの目的はなんだ? 本当に世界が欲しいのか、違うだろう!』
ハナから嘘だと決めつけられ図星でもスザクはムッとした。
何がわかる、きみに何が。
苛立ちは口をついて出た。
「だから? きみは俺の何を知ってるっていうんだ! 俺はきみたちの敵だよ、最後まで手を──」
『ああ私はスザクのことなんかほとんど知らないさ! だってスザクは何も言わないから』
「なら放っておけばいい」
『──でもスザクが死にたがりだってことは知ってるし、スザクが今からしようとしてることは止めたい!』
話が通じない。
苛立ちに任せてコンソールを叩いた。
「きみはっ」
『私はお前を死なせない。理由が必要なら、言ってやるさ!
私は枢木スザクのことが好きだ、大好きだ! だから死なせたくない』
戦場にはあまりに不似合いな愛の告白に、スザクは不覚にもキョトンと気を抜いてしまった。
勿論、スザクだけではない。筒抜けのオープンチャンネルの所為で、カレンもぽかんと口を開けたまま呆けた。あら、とラクシャータもパイプをふかして目を瞬かせる。
「な……」
呆けていたのも一瞬、スザクはみるみる顔に血を昇らせてジノを睨みつけた。
「何をふざけ──」
『ふざけてなんかない! だからスザク、お前も私を好きになれ!!』
──私を好きになりなさい!
かつての主の声に重なったジノの言葉に、スザクは目を見開いて呼吸を止めた。
『私を好きになって、どうしようもないくらい好きになって、死にたいなんて思わないくらい私を愛せ!! 私もお前を愛する!』
「ば、馬鹿言うなっ!俺は──っ」
『お前の好きな私が、お前を好きになる! だから、お前はお前の好きな私が好きなお前を、好きになれ! 自分を好きになれ!』
響く声にガンガンと頭痛が止まらない。
(──ダメ、だ)
ぐらぐらと頭が揺れて、目眩を感じた。厭ではない。喜んでいる自分に自嘲した。
なきたいくらいに、あなたがいとしい
(伸ばされた手をつかんでも、いいの?)