ポケットの中身

2015/03/05 17:33 :BSR
押し掛け竜神(三政/BSR)

※匿名様リクエストの「竜神政宗と三成」です
※政宗が竜神で角と尻尾有り
※何か大阪に住み着いてる
※長編とは別物です




豊臣に竜が憑いたのは大変めでたいと、国を挙げて盛大に祝われた。
天下統一を目前にしてのこの出来事は縁起の良いことである。
しかし竜が憑いたのは、正確には豊臣ではなかった。
「三成!今朝はいい天気だぜ!」
「…。」
石田三成は豊臣秀吉の左腕と呼ばれるほどの家臣だ。
竜神は彼を見初めて大阪城に住み着いた。
言ってしまえば三成に惚れてやって来た押し掛け女房のようなものである。
とにかく懐かれてしまい、三成はほとほと困っていた。
「ほら、着替えも用意したぞ!食事ももう作り終わってるぞ。どうする?持ってくるか?」
「…貴様は動くな、小姓にやらせる。」
朝からため息をついて、三成はキラキラと左目を輝かせる竜神を宥めた。
懐かれるのは嫌ではない。
むしろ秀吉に貢献する為の力になるなら大歓迎だ。
この竜神は男のナリをしているが、美しいので目の保養にもなる。
ただ朝から晩まで一日中べったりされるのは、人付き合いが苦手な三成とってストレスが溜まる一方なのだ。
何度も言うが嫌いではないから無下にすることもできない。
相手は竜神なので余計適当には扱えない。
それで困っていた。
以前半兵衛に相談をしたが、
「人に好かれて損なことはないよ。あれは人ではないけど、飽きられないように好きにさせておけばいいと思うかな。」
と、それで終わってしまった。
三成はそれを思い出して、軽くうなだれながら隣にいた竜神を見る。
すると竜神はにっこりと笑って三成を見返した。




竜神は名を伊達藤次郎政宗といった。
穏やかな性格だが、六本の爪を刀にして三成と共に戦場を駆けるのが好きだった。
元々北に住んでいた竜が、何故三成に懐いたかと言えば、まぁ簡単に説明すると餌付けだ。
北の民の信仰心が薄れ、弱っていた政宗が息も絶え絶えに南下して来た際、三成が竜神と知らずに政宗を拾ったのだ。
普段なら野垂れ死にそうな輩など捨て置く三成だが、政宗の美しさに少なからず惹かれたのだから仕方がない。
つまり三成も政宗も、原因は違えど互いを慕っているのには違いなかった。
だから普段は鬱陶しいと思っていても、仕事中の自分の膝に頭を乗せて昼寝をする政宗を可愛いとか思ってしまう三成なのだ。
ちらりと文机の下を見れば、人の耳とは違う獣のような耳がピクピクと動き、信仰心の象徴である、今は小さい角の根元をムズ痒そうに掻く仕草が愛らしいと、三成は頬を弛ませた。
「…三成、鼻の下が伸びよるぞ。」
「!!」
一緒に仕事をしていた吉継に指摘をされて、三成は鼻から下を手で覆う。
それを見て吉継は笑うのだ。
「余程、竜にほだされたの。」
違うと言えない三成にまた笑うと、吉継は筆を置いた。
「我は少し休む故、お主もゆっくりしやれ。」
そう言って吉継は部屋を出て行った。
ぺしぺしと竜の尾が畳を叩き、もぞもぞと政宗が動いた。
丸くなったので寒いのかと、三成は着ていた羽織を脱いで掛けてやる。
すると政宗は三成の膝と羽織をぎゅっと掴んだ。
その顔は柔らかい。
(寒いなら日当たりの良い場所に行けば良いものを。)
そうは思いながらも、三成は政宗を起こさずに、そのまま仕事を続けたのだった。




――――
匿名様、リクエストありがとうございました!
やっぱり人外を書くのは楽しいです(´∀`)
また機会があれば書きたいなぁ


書き直しや、もっとこうして欲しい!などありましたら、またご連絡下さい!

改めてありがとうございました!


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