チューの日を時間差でもう一回。
残念なのは兄貴じゃなくてcookieの頭の中です。
兄貴ごめん、超ごめん。
↓以下、現パロで学パロなチカナリです。
「元就!チューしようぜチュー」
パタン、と。
毛利は自分の家のリビングを静かに閉めた。
そしてそのまま踵を返して階段に向かう。
眼帯で覆われていない方の瞳を大げさに輝かせ、ソファに座ったままこちらに向かって両手を差出す幼馴染長曾我部元親を見なかったことにしてタンタンっと1〜2段階段を上がる。
毛利と長曾我部は隣の家に生まれ育った生粋の幼馴染であり、すったもんだの末にお付き合いをしている仲でもある。
しかし長曾我部の見た目を裏切る乙女思考を現実主義者である毛利が解することはなく、また毛利自身も素直とは到底言い難い性格をしている為、長曾我部の多様なアプローチにつれなく返すのが常だった。
今のは幻覚ぞ、と2秒前の現実を都合よく忘れようとした毛利の耳にけたたましい程の音を立ててリビングのドアが開かれた音が聞こえてきた。
「おい、元就!無視すんな!!」
「黙れ下衆が。空気が汚れる」
「なんだよ元就ぃ、先に帰ったこと怒ってんのか?」
「黙れと言っておろう。大体貴様が用事があるとメールを寄越したではないか」
我はそのように心の狭い男ではないわ、と。
吐き捨てるように目を逸らした毛利に一抹のデレを感じとった長曾我部は、今しかないとばかりに毛利の左腕をとった。
「悪かったって。政宗に呼び出されてな」
「だからよいと言って、」
「でもな、政宗に良いこと聞いたんだ。今日ってキスの日なんだって、お前知ってたか?」
「そのような俗説、我が知る訳がなかろう」
「な〜、チューしようぜ元就ぃ」
「去ね」
「お前だってしたいだろ?」
「焼け焦げよ」
「ちゃんと現パロだし」
「現パロ毛利はデレぬ設定だ」
「聞いたことねぇよ」
引く気はない、と長曾我部の表情が言っていた。
毛利は諦めたように瞼を下ろす。
元来強引な性質の長曾我部は言いだしたら聞かないところがあり、そもそも力に大きく差がある以上腕を取られた段階で毛利の負けだった。
緩く唇を吸われる感触に眉根を寄せると、あのなぁ、と長曾我部が声を上げた。
「せっかくのギュッとしてチューなんだからもっとこう幸せそうにしとけよ」
「煩いわ馬鹿チカ。なんだそのギュッとしてチューとは」
「や、なんとなく」
「……ギュッと、は不発なのではないか?」
あ、っと声出して固まった長曾我部の手の力が抜けたところで毛利はするりと腕を抜いた。
そのまま階段を駆け上がり鍵をかけて部屋に閉じこもる。
ギャーギャーと階段の下から聞こえてくる声をとりあえず無視して鞄の中に入れていた携帯を取り出した。
『首を洗って待っておけ』
クラスメイトの隻眼にメールを送り、毛利はそのまま携帯の電源を落とした。
「チカの野郎!しくじりやがって!!」
という筆頭の叫びがこだました筈。