毎回の如く頭の悪い人が頭の悪い会話をしてるHOMO的な
毎回頭悪いです
電波テロリスト部下と割と常識人上司の会話
これで良かったのかな、とか。
落とされた言葉は軽くはない。
「…生きて、変わった事が、沢山あって」
普段は意味の解らない言い訳を並べるのだけは上手い部下が、ぽつりぽつりと言葉を落とした。
「これで良かったのかな、とか、解んないけど、あのね、…生きて、良かった、って」
細い指に煙草を挟んで、目を細める姿は、あぁ確かに彼も歳を重ねたんだなと、思うには充分だった。
「間違いだらけだと思ってたけど、間違ってても、それはそれで良かったなぁって、思った」
遠回りだらけ、何をするにも遠回りだった、と何時だったか、言っていた。
「今が、…望んでた未来だったかって言ったら解らないけどさぁ。でも、今は今で好きだな、って、思った」
嫌に饒舌だな、とも思ったが今は口を挟まない。
どうでもいい事は全力でべらべら喋るわ理屈捏ねて周りを振り回すくせに、自分に関しては言葉にしない彼だから、珍しいを通り越して明日の天気が心配になる。それすらも通り越してもうこいつ実はなんかデカいミスでもして誤魔化そうとしてるんじゃないかとか疑いそうになる。
(最も、そんな時は上司をなめてるとしか思えない誤魔化し方をしてくるので違うのだろうが)
「少しだけ、前を、見ようって思えた、皆を見てたら俺も変わらなきゃなって思って、だから、もう、大丈夫」
「…何が」
「…沢山、助けてくれて、ありがとう」
「……」
正直面食らって言葉が出ない。
思考回路が完全に人外だと思っていた(割と本気で)部下が、なんかまともな事を言ってる。
本当はとても繊細な生物で、世界観が独特すぎて意味が解らない域に達してるのは知っているが、つい昨日職場にネズミ花火15連鎖を仕掛けてもう1人の部下と取っ組み合いをした挙げ句班長に鉄拳制裁を食らってぐずっていた奴の言葉にしては、自分を黙らせる破壊力は充分だ。
「……ほんとはね、こんなに生きるつもり、なかった。けど、結果、生きてて良かったな、って」
「……おぉ」
「しみじみ思った訳ですね、さっきスルメを焼きながら」
「ちょっと待て」
ふふ、と笑いながら投げ付けられた言葉に流石に引っ掛かるものを覚えた。スルメを?さっき?ここ職場ですけど?
「お前どこでスルメ焼いたんだよ」
「え?資料室に七輪持ち込んで。はんちょが鬼の形相で飛び込んできて俺は今まさに逃亡中ね。あー生きてて良かった!あれはまじで殺されると予想する」
「おいぃぃぃ!!!」
ちょっといい話だったのに!
ガシッと細い肩を掴むと、部下はへらへら笑った。
笑っても誤魔化されない、お前それやるの何度目だ、何度俺と鬼班長を振り回せば気が済むのか。
「今すぐ謝ってこい、俺に被害が出る前に謝ってこい!!!なんでお前は怒られてもやっちゃいかん事を繰り返す?なぁおい!」
「バカだねー目の前にスルメがあったらこっそり焼きたくなるでしょ誰しも。今日は逃げ切った俺の勝利ですね!」
「逃げ切ってねぇと思うけどな?お前が毎回何かしらやらかすと俺までアイツに怒られてんのお前知ってんだろ、実は知ってるだろ!!」
「まさかー、あんたがはんちょに毎回殴り倒され色々搾り取られてるとか知るわけないよね、あ、一昨日まじ結構な出費だったみたいだけど大丈夫だった?」
「 て め え 」
知ってんじゃねーか!!!
部下であり恋人でもある、見た目だけはいい青年を思い切り殴り倒した。
「お前は!少しは!反省しろよ!学べよ!社会のルールを学べよこのテロリスト!!」
「はん、俺は型に収まる気はないよーだ!!大体まじ常識って何さ、俺の常識と世間の常識が一致すると思うなよ!」
「そういう問題じゃねーよお前ホントにまじで!お前の認識が社会と不一致なのは解ってる!!」
「押し付けがましい!そのくらい愛情も押し付けたらどうだ!」
「はぁ?はぁ!?なんだって!?」
「べー!あんたなんか、はんちょが投げた灰皿直撃して死ね!俺なんか遊びの癖に!」
「絶対ぇ嫌だ!!つか誰が遊びだと…」
「ついでに吸殻まみれになってうっかり灰皿の水飲んで死ね!バーカ!」
「待ちやがれクソガキどこ行く気だおい!!」
本気でおいかけっこ(殺意Max)を始めたら上司と電波同僚を眺めながら、オフィスに居合わせた部下二人はぼやく。
「…アイツ性格悪くなったなー」
「あざといって言うのかね。解っててからかうもんね。いちいち律儀に相手するから余計悪化するのに…」
「あー、班長戻ってくる前に俺らも帰ろうぜぇ、巻き添えは勘弁してくれ」
「あの人は面倒なのが好きなのかね…帰ろうか」
「知らねーよ、あんな性格歪んだ電波扱える訳ねぇだろ」
「電波ってかただの社会不適合者で迷惑な人だよね」
「…見た目良くなかったら最悪だな。幼稚園児以下だぜ頭の中身」
幼稚園児というか単に迷惑なダメな人に引っ掛かっただけじゃね、とか。