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ジュニアのドタバタな1日(中編)

 「うっ……」

 ジュニアはようやく目を覚まし、床から起き上がったのだった。

 「ジュニアくん!」

 傍らにいたシアンは慌てて駆け寄り、ジュニアを助け起こす。ジュニアは打ち付けた頭を擦りながら痛そうに顔をしかめ、シアンの方を向いた。

 「ジュニアくん、大丈夫? 頭打ったんだよ。痛むなら薬とか…。ジュニアくん?」

 自分を見たまま呆けた顔をしているのに気が付いて、シアンはジュニアの顔を覗き込む。途端にジュニアの頬が赤くなった。

 「…何て美しいんだ…」
 「え? あ、あの、ジュニアくん…頭…薬…」
「あ、あの、こんな俺で良かったらその…お近づきに…」
 「くぉーーらクソジュニア!」

 赤くなってシアンを見つめているのが気に入らなかったらしく、2時間ほど前に帰ってきた本編ライが二人の間に割って入る。

 「なーにが『お近づきに』だ! 俺の兄ちゃんに近付くなっての!」

 ジュニアはライの登場に余程驚いたようで、驚愕の表情でライの、特に顔を凝視している。ライにはそれが無言で睨んでいるように見えたらしく、紫の瞳を鋭く光らせてジュニアを睨み返した。

 「なんだ、俺にガン付けてんのかこの野郎!」
 「……お前……いや、世界には似てる人間が3人はいるというし、不思議なことでは……しかし……」
 「あ!? ブツブツ言ってても聞こえねえよ!」

 ジュニアは凄むライそっちのけで、何か考え込んでいた。やがて何かに思い至ったのか、ライを見る。

 「お前、もしかして俺の…きょうだ……いぃっ!!?」

 ライを正面から見てようやく気付いたのか、その背後で此方の様子を伺っているライ達と目が合うジュニア。
 完全に固まってしまったジュニアを見て、流石にライは態度を変え、パシパシと腰やら腕やらを叩いて「おーい、もしもーし」と声を掛けている。
 やがてジュニアは硬化を解き、ぎこちない動きでライ達を指差した。

 「あ、あれ…あの連中…は、お前の…兄弟か、何かか…?」
 「あぁ? お前なに言ってんだよ、あいつらが兄弟じゃ堪らねえよ」
 「じゃ……あいつら、なに……」
 「なにって…お前、ほんと大丈夫? 記憶喪失にでもなったのか? まあ、テーブルに頭打ち付けただけでなる訳ないだろうけど。あいつらが何かって、そりゃ、俺たち自身っつーか…同一人物……っておい!!?」

 ライの言葉を最後まで待たず、ジュニアは強ばった表情のまま駆け出して行った。
 後に残されたシアンとライ達はただ、互いに顔を見合わせるしかなかったのだったー…。

BEアリス・5章プロット2

●5章前編2

時は遡り、黒兎に導かれレイルイがバッドエンドの世界にやって来たシーン。
とにかく片っ端から探すしかないと思い覚悟していた二人だったが、歩いている最中も黒兎が道の先に現れ、ふとした時に消えてはまた現れて此方を待っている。
白兎の記憶の断片なのか、願望が形になったものなのかは分からないが、まるで幽霊のようなその現れ方に、レイは背筋を震わせる。ルイはそんな弟の手を取り、安心させて二人で先を急ぐ。
歩いて行くと、白兎の家が見えてきた。そこまでたどり着くと、黒兎は急に姿を消した。
すると消えた場所から今度はアリスにが現れ、家の中へ入っていく。
その途中、一枚の紙を落としていったので、レイは拾って届けに行こうとするが急に家は廃屋のような外観に代わり、朽ちてしまった。
唖然としているとまた黒兎が現れ、道を走っていく。着いていく先々に思い出の場所があり、アリスは紙を落としていく。
最後にモノクロの樹の下でアリスは二人を見て「ありがとう」と呟き、今度こそ消えてしまった。
モノクロの樹から、ひらひらと最後の紙が舞い落ちてくる。レイはそれをー……

<分岐選択>
●掴んだ。

その最後の紙を束に重ねると、紙の束が一冊の日記になっていた。それは主治医のシラヌイに言われて書き始めた、現実のライの日記だった。
誰かに対する文句こそ多いが、様々な出来事が楽しそうに書かれていた。
あの楽しかった日々を思い返せば、白兎もアリスの代わりを作ろう、その為に邪魔な存在は殺してしまおうなんて思えなくなる筈だ。
二人はこれを持って、現れた扉を潜る。そこには組み合っているシアン達がいた。
駆け込んだ二人は、日記を白兎に見せる。読み始めた白兎は段々と泣きそうな顔になっていく。しかし、最後のページを読んだ瞬間、白兎は勢い良く日記を閉じた。
「これを見せて…僕が改心すると思ったの?」
白兎は怒りの表情で睨んでくる。「この…最後のページを見て…僕が涙を流して、ごめんなさいなんて…言うとでも思ったの!?」
その最後のページには、短い謝罪の文章と現実のアリスが飛び降りをして命を経った日付が生々しく残されていた。
しまったと思うレイだったが、もう時遅く、白兎はナイフを間近にいたシアンに突き立てる。お腹に刺さり、シアンは崩れ落ちるように倒れ込む。
ライの悲鳴が響く。「兄ちゃん、兄ちゃん! 兄ちゃん!!」その姿が、自分の弟の姿と被る。白兎は次にレイへと標的を変え、ナイフを降りかざす。
咄嗟に庇おうとしたルイは、背中を刺されてしまう。崩れるルイを、レイは泣きながら抱き締める。
再起不能になった四人を見下ろし、白兎はライの腕を引く。
「僕と一緒に行こう、アリス」血に濡れた兄の姿から視線を離せないライは、半狂乱になって白兎の手をふりほどこうとする。

BEアリス・5章プロット

●5章 前編

目が覚めたライ、目の前に白兎がいることに驚く。アリスの服を着せられ拘束されている事態に、自分がかなりピンチな状態だと悟る。
何とか拘束を解いて貰おうとするが、全く話が噛み合わない。どうやら、自分の世界の黒アリスだと思い込んでいるようだった。
黒アリスのふりをして何とか白兎を正気に戻せないかと頑張るが、それも意味を成さない。白兎はニコニコしながら傍にあった人形に掛けられていた布を取る。それは人形などでは無く、黒兎だった。
「アリスもすぐに、こうしてあげるからね。そうすれば、何も辛いことなんて無いよ」
恐怖のあまり硬直するライ。その時、扉が開いてシアンが駆け込む。
壁に飾られていたレイピアを携えたシアンと白兎が斬り合いを始める。
どさくさに紛れてライの拘束を解こうとしていたシアンだったが、それを見越している白兎は手を緩めない。
不意にシアンのレイピアが手から弾かれ、飛んで行ってしまう。シアンを押し倒した白兎は、ナイフを突き刺す構えを見せる。
「兄ちゃあああああん!!」
ライの悲鳴が部屋に響き渡る。その悲鳴を聞き付けて部屋に駆け込んだレイルイは、ある物を白兎に見せる。


BEアリス・4章プロット

●4章

また別の部屋に逃げ込んだシアンは、そこで再び白兎に遭遇する。その腕の中にライが抱えられているのを見たシアンは、白兎を睨み付ける。
白兎はライの胸に手を触れる。
「可哀想に。この子にも君にも、辛い記憶が根付いてる。ねえ、苦しみなんて必要ないんだからさ、記憶なんて捨てちゃいなよ」
言われて、かつて父に酷いことをされた記憶や自分の存在を惨めに思った気持ち、弟と戦った時のことを思い出す。確かに思い出せば思い出すほど、胸が辛く締め付けられる。
「でもそれは、必要な痛み。その痛みがあるからこそ、僕たちは己の弱さを知ることが出来る。その痛みの先へ立ち向かうことが出来る」
シアンは真っ直ぐに白兎を見つめる。白兎は溜め息を溢す。
「…分かって貰えないみたいだね」
抱えたライごと、白兎の姿が消えていく。シアンは腕を伸ばすが、その手は空しく空を掴んだ。
場所変わって、レイルイ組。途中で合流した二人は、一緒に行動していた。そんな中、廊下の先に黒アリスの姿を見付ける。走っていったアリスは、少し先で立ち止まると此方を見つめてくる。付いて来いという意思表示だと判断した2人は、アリスに付いていく。
空間の歪みの手前で立ち止まった黒アリスは、今度は黒兎の姿になって穴の中へ入っていく。
穴に入ると、そこは寂れた不思議の国の中だった。そこで黒白ジョーカーの姿を見付けた2人。彼らの会話から此処がバッドエンドのアリス世界だと判明。
頭の中に声が響く。
「心が消える時、俺の想いがこの世界に散らばったんだ。それを集めれば、きっと白兎を止められる筈だ」
本編に気付いた白と黒は、2人から事情を聞いて同行することに。


●間章

兄が命を削っている間、何も知らずにのうのうと暮らしていた自分が憎かった。兄に守られてばかりいる自分が許せなかった。
兄がいない未来を想像すると、怖くて叫び出しそうになった。
自分がいなくなれば、兄の命は救われる。そう思って、衝動のまま自分の命を絶ってしまった。
その時は、それが最善の選択だと信じて疑わなかった。
でも、今なら分かる。それは最悪の選択だった。後悔を乗り越える強さを持っていたなら、そんな選択はしなかった。
もう、間違えない。
今度こそ守られる自分から脱却する。
今の俺には体すら無いけれど、誰にも負けない想いが、あそこに残されているから。
頼む。
俺の想いを、どうか。

あの人に届けて。


BEアリス・3章プロット

●3章

夢を見た翌朝、シアレイルイはほとんど確信に至る。そんな中、1人だけ悪夢を見ていないライはいまいち理解出来ていない。
白アリスは黒兎のことが心配で一晩中寝ていなかったらしく、疲れた顔をしていた。必ず探し出すと約束し、本編一同は家を出る。
しかし5日かけて国中を探し回っても見付からない事に、それぞれ焦りを覚えていた。何日かけても見付からないんじゃないかー…そんな思いすらよぎってくる中、森を捜索してる最中に場違いな屋敷を見付ける。
今まで見付けられなかったその建物に違和感を覚えた4人は、中に入っていく。
屋敷の中にはー…なんと、白兎が居た。鼻歌を歌いながら、林檎を剥いている。
本編たちはおそるおそる彼に呼び掛ける。すると白兎は林檎を剥く手を止め、本編たちを見る。
「君たちは酷いよね。見せ付けるようにしてさ」
「僕がどれだけ欲しがっても、もう永遠に手に入らないものを…そうやって見せ付ける。酷い、酷いよ」
「酷いことしたお詫びに…そこのアリス、僕に頂戴?」
ナイフを手に襲いかかってくる白兎。
本編たちは慌てて部屋を出て走っていく。
屋敷の中も空間が歪んでおり、4人は途中ではぐれてしまう。シアンはある一室に逃げ込み、身を潜める。
その部屋の中で、黒兎を見付ける。仮想の肉体・精神・記憶をバラバラに抜かれた状態で大切そうに保管されているその光景におぞましさを覚えたシアンは、それらを持って行こうとするが、白兎に見付かり辛くも部屋を抜け出す。


●間章

本編シアンが逃げ出した後、白兎はベッドに横たわる黒兎の体を起こして座らせ、優しく頭を撫でる。
「もう大丈夫、怖いことなんて何も無いよ。怖いものは、僕が追い払ってあげる。僕が守ってあげる。忌まわしい記憶も哀しみも、苦しみも、死すら君には必要無い。だって、僕が居ればそれで良いでしょう?」
問い掛けが空しく部屋に響く。


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