*2024年4月16日 10:51σ(・∀・)ノ


 杉元は竹浦のことが気になっていた。突然杉元の陣営に参加した竹浦は、鶴見と袂を分かったという。尾形のこともあるし、いまいち信用できない。切り捨ててしまった方が良いのだとすら思う。
 それでも竹浦という人間は、妙に杉元の心を掴んだ。苦しくなる一歩手前で握られている感覚。その絶妙な感覚は気持ちよさすら感じさせる。
 ――……そう思ってしまうのも、あの出来事のせいである。杉元は既に、竹浦を抱いている。
 恥ずかしい限りである。惚れた腫れたの原因を探れば肉欲なのだ。嫌になる。単純だ。たぶん、めちゃくちゃ気持ちよかった。そのせいかもしれない。この気持ちよさの原因が竹浦への好意にあるのだと、杉元自身が勘違いしているのかもしれない。
 風呂場で会った竹浦の身体を見て、杉元は勃起してしまったのだ。自分では気付かなかったのを竹浦に指摘されて、その場に竹浦と二人っきりしかいなかったものだから、竹浦が「俺で勃ったの」と尋ねた。杉元は上手く答えることができなかった。それを肯定と捉えたか、竹浦は蕎麦屋の二階に杉元を誘った。そうして、杉元はそこで竹浦をめちゃくちゃに抱いたのだった。竹浦の身体は具合が良かった。それこそ、身体の相性が魂の相性と同じであると錯覚してしまうくらいには。
 そうして「好き」と零した杉元に――竹浦は何と言ったと思う 。竹浦はふっと笑いながら「俺と会った人はみんなそう言うんだ」と言った。間違いなく言った。耳の底にこびりついている。
 杉元は腹が立った。見透かされている。すべて。そして疑われている。みんなが勘違いをするんだ。と竹浦は言っているのだ。そして釘を刺した。そういうことだ。それがむちゃくちゃに腹が立つ。お前は受け取るのが大変かもしれない。受け取ったものを捌くのに神経を使うのかもしれない。けれどこっちだって、軽い気持ちで言っている訳じゃない。どうにかして叶えたくて、思いを遂げたくて言っているのだ。それを何が。何を。馬鹿にするな!
 一過性なら良い。一過性の通り雨なら良い。けれど杉元の胸に去来しているこの雨は暴風雨と何も違わない。荒らしてぐちゃぐちゃにして、そして元通りにせよと天から笑うのだ。そんなことってあるか。
 あの男、俺のものにしてやる。俺のものにして、一生囲ってやる。お前なしじゃいられないと言わせてやる。言わせてやる。絶対に。竹浦の心臓の、その血の流れを変えてやる。これが杉元の身体を流れる愛だった。偏執的。またこれも愛。




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