*2024年4月3日 17:29σ(・∀・)ノ
「……お前はきっと、これからも逃げるんだ。それがわかったから、もういらんと思った。それだけだ」
鯉登は喉に貼りついたような小さな声でそう言った。
「同じことを繰り返すぞ。嫌なことがある時、少しでも現実逃避したい時。解決するための策を選ぶよりも前に、まず逃げるという選択肢が存在するんだ。そして、お前はそれを簡単に選ぶ。残った私が、一人でどうにかしなければならなくて奮闘していても、お前は逃げているんだから目の当たりにしなくて済む。そういうのを、お前はこれからも選択していく。まず、逃げる、を」
「篠原。お客様が来ている。お前を紹介したい。会議室にお通ししているから、すぐ来い」
鯉登課長がそう言った。部署の他の人にも聞こえるような声だった。彼の声は絶妙な高さで、人の声を縫うように耳に届くのだ。私は「はい」と言った。仕事だからだ。断る理由はない。
鯉登課長は、同期だ。同期ではあるけれど出世コースの人だったので、ガンガン出世している。
サヤは本当に変わった女だった。
俺のことを好きだと言う。そもそもその時点で変わっているのだが、そもそもの愛が重い。会社ではち会えばうっとりした顔をして見つめてくるし、しかも一秒や二秒とか、そんな短時間じゃない。周りの時間が止まっていて、俺だけが動けているんじゃないかと錯覚するくらいに見てくる。
情熱なんてものはいらん。かたっぱしから。全部捨てて捨ててしまった方が楽だ。
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-エムブロ-