話題:創作小説
『なぁ要、お前これ着てみないか?』
飯も食い終わり、自分の時間を有意義に過ごしていた俺に一通のメールがきた。
それは俺が一番苦手なやつからで、しかも内容は一番嫌な内容だった。
メールの内容にプッツンときた俺はやつに電話をかけた。
『はい。どしたの?』
「どしたの?じゃねぇ。お前がどうした!頭でも打ったか?あ?」
『ぁ、見たんだね、あれ。どう?着てみない「いやだ」
『えーなんでさ。きっと要には似合うと思うんだけど?』
「いやだったら嫌っ…!!!!」
ぁ、なんかすっげームカついてきた。息吸うのつれぇ…。
「なんで俺がこんなの着なきゃなんねーんだよっ。お前女には困ってねぇんだろ?そいつらに着てもらえばいいだろうがよ!」
『…俺は、お前に着てほしいんだけど?』
あいつのトーンが落ちた。
「着ないからな。」
あいつはおこると怖い。
俺は小さな声で呟くように反論した。
『はぁ…。じゃ、いいよ。これ、お前のために買ってきたけどお前が言うその女の子達にあげるから』
―は?今、俺のためにっていった?
「ちょ、ちょっとまて。今、…俺のためにっていった?」
『あぁ。だから言ってただろ?お前に、着てほしいって。だけど着ないなら「着る」
俺はとんでもないことを言っていた。
今の頭の中はパニック状態。
女の子、あげる、お前のために、着てほしい、要…。
あぁ、息が苦しい。
「…あいつらにあげるなよ。お、俺の、なんだろ?…その服。」
『そうだよ。要』
「お前が、買って…っきた、ふくっ…俺、のっ…」
息が苦しくて、視界が歪んだ。
『そう、だよ』
あいつの声はとろけるような声。
『なに…要、泣いてんの?』
「ちがっ…っ」
言葉が出てこない。
なんでこんな状態になったのかもわからない。
ただ…、あいつが俺のために買った物を他の誰かに着せるのが凄く嫌だっただけ。
『かなめ、かなめ?…はぁ、ごめん。お前を泣かすつもりなんてなかったのに…』
「ち、がっ…」
『違わない、お前完全に泣いてるし。…サイテーだな、俺。…好きな奴泣かせるなんて』
「…へ?」
あ、あいつなんていった?
『…ぁ…、えっと、俺…。今、俺が言ったの聞こえた?』
「うん」
『全部?』
「うん」
受話器の奥で焦っているあいつがわかる。なんで焦っているのか…。
俺にはわからなかった。
『…なぁ、要。お前今好きな奴、いる?』
好きな…やつ?
「いない…けど…」
けど、他の人に渡したくない奴ならいる。
…あれ?
『…けど?不思議なこと言うな。』
「…」
『要?』
俺、なんかスッキリしてる。
今までモヤモヤしてた胸も、詰まっていた喉も、ない。
そうか。
俺は…。
『おーい、要?』
「好きなやつ、いるよ」
『ぇっ…。あ…そっか。そうだよな、お前クラスのじょ
「お前」
し…に…え?』
「俺は、お前が好きなの」
一世一代の告白も、意外と俺は冷静だった。
『…ほんとか?本当なのか?』
「うん。っていっても、今気づいたん…『俺もお前が好きだっ!!』
『好きすぎておかしくなるくらい、お前の事が好きだ。』
甘い声が、俺の耳をくすぐる。
『お前にいつもちょっかいかけるのも、今回の女装も、全部お前が好きだから、止まらなくて…』
「俺、だって…。お前が好きだから…女の子に服あげるっていって、凄く嫌だったんだ。それにお前格好いいし、女子からモテモテだし…だいっきらいだっ!!!!」
『ちょ、お前それどっちだよっ!!!!』
「両方だっ!!大好きだけど大嫌いなのっ!!」
『はいはい。』
幸せだ。
受話器の向こうの奴は、愛おしさをフルパワーで出していた。
『…要』
「なに」
『愛してる』
「…おれも」
『ん?』
「ぁ、…愛して…る」
『名前よんで、要』
「か、奏太…、愛してる…よ」
俺らは青春真っ盛りのこの時、付き合い始めた。
『で、要。両思いになれたことだし、着て?』
「やっぱりそれだけは嫌。」
え…?
振り出しに戻る…
えーんど(゜∇゜)